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第23話 奴隷の施設にお邪魔します
しおりを挟む建物の前まで行っても誰も出てこない、それどころか建物内に気配を感じない。
「お邪魔しまーす」
扉を開けて入ってみるも誰もいない。
「あー、そういう感じか。こっちだ」
ネラが建物の中を進んで行く。
すると床に金属の扉が。
「これだな」
ネラは扉の鍵を鎌で斬り開ける。
「おー!地下だ!闘技場思い出すなー」
「まだ思い出すって程の期間経ってないでしょ」
その後ろをタケミとユイがついていく。
3人は地下へと進んでいく。
すると案の定、武装した兵士達が現れた。
「おー、来た来たー」
タケミが嬉しそうに拳を鳴らす。
地下はかなり広い範囲に通路や部屋が入り組んでいる。
そこに奴隷たちが集められた地下牢がいくつもあった。
その内の一つの牢で、奴隷たちがざわついていた。
「なんか、上が騒がしくないか?」
「どうしたんだろうな」
牢の外を除くように通路側の格子に顔を近づける。
すると通路から兵士の者が吹っ飛んで来た。
「うわぁ!」
突然吹き飛んできた相手に驚く奴隷達。
「お!ユイの言った通りいたぞー!」
兵士の後にタケミがその場に現れる。
「ひっ!」
奴隷たちが彼を見て怯える。
無理もない、2メートル程の大男が返り血を浴びて片手に人間を掴んだ状態で現れたのだから。恐ろしい猛獣が侵入し人間を襲っているとしか見えない。
「よっ!今外に出してやるからな、そうそうそんな感じで下がっててくれ」
タケミは奴隷たちの怯えたその反応を気に留めず、檻の前に行く。
まるでカーテンを軽く開けるように、彼は鉄格子を左右に広げた。
「さぁ、次はユイの出番だ」
「はーい、それじゃあみんな順番に並んでね。首輪外すよー」
ユイが倒れている兵士たちを跨ぎながら現れる。
「首輪が!俺たちはもう……自由なのか?」
未だ実感がわかない様子の元奴隷たち。
「お前らはもう自由つってもまだ気を抜くな、私達がこの施設ぶっ潰すまで」
ネラも後から現れて元奴隷たちにそう言った。
「ありがとうございます!ですがこの地下にはまだ他に奴隷たちが……」
「大丈夫!その人たちの場所ももう分かってるから。
不安そうな彼らに笑顔を見せるユイ。
ある部屋に男が慌てて入室する。
「ジェイル様!侵入者です!もうすでに奴隷たちも一部牢から出ていて……」
「それなら魔獣を放てばいいだろ。牢屋に入ってねぇ奴隷は食われちまうだろうが、まあしょうがない」
ジェイルはタバコの煙を吐きながらそう言った。
彼の側にはハイエナのような魔獣が座っており、その頭を撫でていた。
その魔獣はぎょろりとした目で彼の部下を見ている。
「ん?どうした?アイツが食べたいのか?ダメだぞーまだアイツには仕事があるんだから。まあそうだな~アイツが仕事をミスれば少しぐらい食っても良いんじゃないか?どこが良い?腕か?足か?お腹か?それとも頭が良いか?」
ジェイルは魔獣を撫でながらそう言った。
部下の兵士は固まっていた。
「いや、冗談だよ、冗談!なーベイビーちゃん。ほら、行ってこい」
「……か、畏まりました!それでは失礼いたしました!」
部下は足早に部屋を出る。
(あれ絶対冗談じゃねぇだろ)
冷や汗をかきながら兵士は号令をかける。
「許可が出たぞ!魔獣を解き放て!!」
突然警報が鳴り響く地下施設内。
「なんだうるせぇな」
「こ、これは!!」
元奴隷たちが怯え始める。
「どうしたの?」
ユイが元奴隷たちに聞く。
「魔獣が放たれたんだ!ここの施設を仕切ってるジェイルって奴は魔獣を使役しているんだ!その魔獣が俺たちを食い殺そうとやって来るんだよ!」
「へぇ~魔獣か」
彼らの話を聞いて頷くタケミ。
すると通路の奥の方から大勢の魔獣たちの咆哮が。
「う、うわああああ!」
元奴隷たちが取り乱す。
「みんな私達の後ろに!レプディアシオ!」
ユイは元奴隷たちを囲うように防壁を張った。
涎を垂らし、牙を剥き出しにした魔獣たち押し寄せてきた。
「グルルルルッ!!」
威嚇してくる魔獣たち。
「来たな!悪いが全員始末させてもらうぜ」
「そんな事しなくても、魔獣にはもっと良い手があるんだ」
タケミがネラの前に出る。
「さぁ、俺と遊びたい奴はいるかッ!!」
魔獣たちに向かってそう言い放つタケミ。
歯を剥き出しにして笑う彼を見て、魔獣たちは震え始めた。
一歩、一歩と魔獣たちに歩み寄るタケミ。
魔獣たちの震えはドンドン強まる。
「どうした?腹減ってねぇのか?俺を喰いたいんじゃねぇのか?」
もう触れられるところまでタケミが近づいていた。
「キャンキャン!」
魔獣たちはその場から逃げ出し、近くの牢屋に自ら入って行く。
「ハウスって事なのかな?」
牢屋の隅で団子のように集まって怯えている魔獣たち。
これを見てユイはそう言った
「なーんだ、ちげぇのか。よし、それじゃあ次だー!」
タケミは先へと行ってしまう。
「この首輪アイツに使えねぇかな」
「無理でしょ」
二人は走って行くタケミの背中を見ながらそう言った。
「ここの親玉はどこだ!!!」
タケミは兵士たちをなぎ倒しながら先に進んで行く。
「お、なんか開けたとこに出たな。なんだここ」
彼は円形状に広い場所に出た。
足元は砂が敷き詰められており、幾つもの足跡がある。
巨大な獣の足跡だ、その周りにいくつもの小さな足跡が。
「よく来たな!」
「ん、誰?」
声の方をみるとタケミがいる場所を見下ろすような部屋があり、そこからジェイルが見下ろしていた。
「おお、お前良い身体してるなー!うちの子がよろこぶぜ」
ジェイルがそう言うとタケミの前にある通路から低く唸る獣の声がする。
「さぁ!うちのベイビーちゃん!ご飯の時間だよー!」
するとその唸り声の主が現れた。
巨大な魔獣、タケミがいた世界でいう虎に似た外見。
しかし体毛は黒く、牙も短刀のようだ。
その短刀のような鋭い牙を剝きだしにして、涎を垂らしている。
「おー、でっけぇな。初めて見たな」
「どうだ!そのベイビーちゃんは俺が見つけた希少な魔獣でな!そんじょそこらの魔獣とは訳が違うんだ!そいつに食い散らされちまいな!」
上からジェイルが騒ぐ。
「希少な魔獣ね。可哀そうに。お前はあんな奴の下にいるような奴じゃねぇのにな」
タケミは魔獣の目を見た。
「ああ、そうなのか。お前殆ど飯食えてないんだな、それで俺は絶好の餌って訳か」
じりじりと歩いて来る魔獣。
「これじゃあ俺の威嚇も意味ねぇな。引けねぇよな、ここで俺を逃したら飢え死んじまうからな」
すると魔獣が襲い掛かる。
「ッ!」
一瞬で嚙みつかれるタケミ。
すぐさま魔獣を押しのけたが、噛まれた肩からは血が。
「いいねぇ」
魔獣の牙が光っている、まるで稲光のようなものが牙の周りを走っている。
「雷の魔法でも使えんのか?スゲェな」
すると魔獣の腹の音が轟く。
「ははは!俺の血で腹の虫が起きちまったか」
魔獣は口の周りについてタケミの血を舐める。
タケミは魔獣に近寄る、すると同時に彼の腹も鳴った。
この音を聞いて彼は笑みを浮かべ、腹をさする。
そして何度か歯をガチッガチッと鳴らす。
黒い虎の魔獣も血が滴る牙をむき出しにして咆哮する。
「じゃあ【喰いあいっこ】しようぜ」
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