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第89話 女神の島で大乱闘
しおりを挟む天界と呼ばれる場所に侵入したタケミ達。
「こっちだ!」
タケミは背後に拳を振るうとその先にはリベリオが、彼女はギリギリでこれを回避する。
「はずしたか」
「でも良い線いってる、そう言えば最初に会った時から私を他の人よりも捉えてたもんね」
(私の能力に対応できてる。お姉様が種明かししてた事を考慮しても凄いな。全神経を一つの対象に向けるなんて言われて簡単に出来る事じゃない)
リベリオの能力は”相手の意識を読み取り、その意識の隙間に潜り込む事”。この能力を発動すると相手は彼女を認識する事が出来なくなる、対処方は彼女に対して全意識を向ける事、彼女が入り込める意識の隙を作らない事だ。
「タケミくん、前あった時よりかなり強くなったね」
「それほどでもねぇよ」
「リベリオ様の動きについていくなんて!」
イサムもタケミの戦いぶりをみて驚いている。
「GRRRッ!」
「ぐっ!」
背後から襲い掛かるクロの爪、稲光を纏ったその爪はリベリオの脇腹をかすめた。
「すごいわね、その虎ちゃん……完全に私の能力を見切ってる」
(間違いない、あの子がタケミくんと一緒にいるなんて。本当に持ってるな~)
「みろ!リベリオ様が戦われている!加勢しろ!」
他の女神達も続々と集まって来た。
タケミに攻撃を仕掛ける他の女神達。しかしタケミはそれをものともせずにリベリオ目掛け突き進む。
「なに!?あいつ止まらないぞ!」
「オラァ!」
放たれた拳がリベリオを捉える。
「これでも私から意識を逸らさないなんて……!」
「お前を最初に倒すって決めたからな!」
殴り飛ばされたリベリオはすぐに空中で身をひるがえし反撃を仕掛ける。
剣を突き出すがタケミはそれを回避する。
(最小限の動きで躱された!)
「一気にいくぜ!」
タケミはすかさず攻撃を繰り出した。
「ッ!」
殴り飛ばされたリベリオは街にある時計塔に衝突する。
追い打ちを仕掛けるタケミ。
しかしその拳はリベリオに届かなかった。
「イサムくん!?」
「リベリオ様、遅れてごめんなさい!」
「へえ、それがお前の能力か」
リベリオとタケミの間に盾を構えたイサムが立っていた。
盾から球体状のバリアが展開されていた。
「この人は僕の恩人なんだ!何が何でも守る!」
「イサムくん何してるの!」
「おー良いねぇ。そんじゃあしっかり守ってろよ!」
タケミが腕を回し、身体に力を入れる。
「クロちょっと下がっててくれ、赤鬼ッ!」
身体が赤熱化し、蒸気を巻き上げ攻撃を仕掛けるタケミ。
(なんて攻撃だ!盾越しでもこんなに衝撃が来るなんて!一撃受ける度に全身がバラバラになりそうだ!)
イサムは両手で盾を必死で抑えている。
タケミのラッシュを盾で受けるイサム、一撃一撃受けるだけで全身が悲鳴を上げる。
「イサムくん何してるの!あなたの身体が持たない!早く逃げて!」
「いやです!僕はあなたを守りたいんだ!」
盾でも構わず攻撃を続けるタケミ、しかし突然攻撃を止める。
「おっと、戦い始めて3分だ。少し休憩するか」
「え?」
「お前らも少し休んどけよ」
タケミは近くにあった時計塔を破壊した。
崩れた瓦礫がイサムたちに降り注ぐ。
「う、うわああ!」
イサムの盾により生き埋めは免れた、しかしそこから動く事もできない。
「やられたわね。イサムくん、私の傷を治したら周りの瓦礫どかすから、もう少しだけ待っててね」
リベリオは立ち上がり、自らの傷を治し始める。
「あとそれと守ってくれてありがとね」
「り、リベリオ様!?距離が近いような」
盾を構えるイサムに体を密着させるリベリオ。
「うーんさっきのダメージのせいで立つのがつらいの。だからお体貸して、ね?」
そう言ってほほ笑むリベリオ、イサムは顔を赤くしてただ正面に顔を向けていた。
一方その頃、島の反対側でも同様に女神達が武器を手に取り侵入者の対応に奔走していた。
「敵襲!敵襲!侵入者は下級エリアの東西に各一人!近隣の者は対応に向え!」
「あの魔法使いを止めろ!」
眼前に迫りくる女神達を空から見下ろすユイ。
「ここにいるのは敵だけ!それなら魔法を出し惜しみする必要はない!」
ユイが空に手を掲げると空に稲光が走り始める。
「まずは挨拶に雷!」
「さっきの火柱はなんだ!え?空が明るい?」
無数の雷が周囲一帯に振り注ぐ。
「よし、いまのでここ一帯の敵の位置は分かった。その周囲に小さい火の玉を発生させてっと」
ユイは探知した敵の側に小さい火を発生させた。
「なんだ?今度は小さい光が、ホタル?」
「螢火、どかーんと行くよ!」
その小さい種火一つ一つが大規模な爆発を引き起こす。
「よし、この調子でガンガン行くよ!」
「始まったか、一気に突撃しちまうか」
ネラは戦いが始まった事を知り、主神がいる塔目掛け駆け出す。
高く飛び上がり、塔の最上階にある窓を突き破り中に侵入した。
「うわあああ!」
しかしそこにいたのは目当ての主神ではなく湯浴み中のグリーディだった。
「グリーディ?ここは主神の塔じゃねぇのか?なんでお前なんかがこんな所にいるんだよ」
「人の風呂場に乗り込んできて失礼な奴だな」
風呂場から上がるグリーディは身体にタオルを巻く。
「ちょっと待ってろ、いやお待ち下さい。身体を拭いて着替えますので」
今更ながらも取り繕うグリーディ。
「こっちは暇じゃねえんだ」
「こっちだって暇じゃありませんの。そこで少しお待ちを」
「さっさとしろよ、あとその喋り方全然似合ってねぇぞ」
鎌で肩を叩きながら相手が服を着替えるのを待つ事にしたネラ。
すると少しして、扉が閉じる音が。
「バタン?」
グリーディの様子を見てみると、そこにはもうグリーディの姿はなかった。
「あ!」
「くそ!いきなり本丸に突っ込んでくるかよ普通!段階刻めよ、バカ!」
グリーディは通路を走って逃亡を図っていた。
「待てこら!」
ネラはグリーディの後を追いかける。
「なんだろうなこの道?地下か、面白そうだ、行ってみよ!」
リベリオとの戦闘を終えたタケミは途中見つけた地下道を歩いていた。
「おっとあぶねぇ」
タケミは突然一度跳び下がる。
「へぇーここで会うとは思ってなかったな」
拳を構えるタケミ。
「カシン」
「僕もそう思いましたよ」
タケミが立っていた場所に刺さったナイフを拾い上げるカシン。
「女神に雇われてんのか?」
「ええ、僕の生れは忍の里というところで、女神たちは古くからの上客なんですよ」
「女神が殺し屋の太客かよ。随分な女神様だこと」
話を聞いて笑うタケミ。
「それで、おれ達を殺すってか?」
「そうなりますね」
「ならどうしたよ、さっさと来いよ」
構えて手招きするタケミ。
「……」
しかしカシンは襲い掛かってこない。
「なんだまだ悩んでるのか」
「分からない、女神達は何かを企んでいるのは確実です。しかし貴方達も完全な善には見えない」
ため息をつくタケミ。
「当たり前だろ、おれ達は目的の為にここにいる連中全員叩き潰すで乗り込んできたんだ。おれらはヒーローじゃねぇからな」
「悩んだ時のおれなりの方法教えてやるよ」
「楽しそうな方に進んでみたら良い、ですか?」
「あれ、なんで分かったんだ」
カシンは額に手を当てる。
「本当にあなたはそればかり……それが出来ない人もこの世にはいるんですよ」
「どうだろうな、案外自分で決めつけてるだけかもしれねぇぞ?まあ確かに自分の魂が言うことを信じるのは覚悟がいるからな。それに他のやつに責任を押し付けた方が自分は傷つかねぇからな、腐っちまうかもしれねぇけどな」
「……言いますね」
武器を握るカシン。
「おれがそうだったからな。つー訳でじゃあな!」
「な!どういうことですか!」
タケミはカシンの横を走って通り過ぎていく。
「今お前と戦っても面白くなさそうだからパス!」
「がう!」
「勝手なことを!」
走り去るタケミとクロを追いかけるカシン。
タケミに襲い掛かるカシン、しかしそんな彼の攻撃を何者かが弾いた。
「タケミさん!」
「あれ?お前らもう来たのか!」
イサムが盾でカシンの攻撃を防いでいた。
「忍ね、タケミくんを殺しに来たの?」
「そういうあなた達はどういうつもりですか?彼は侵入者ですよ」
カシンはリベリオたちに刀を向けて警告する。
「タケミさん!先に行って下さい!」
「良いのかよ?立場は?」
「一度は挑んだからもう十分でしょ?それに私はダーリンの気持ちを尊重したいの」
タケミの問いに答えるリベリオ。
「どうして」
「わ、分からないですよ!タケミさんを助けたいと思ったんです!」
カシンに向かってそう声を張るイサム。
「さんきゅーイサム!リベリオ!」
「がうがう!」
タケミとクロは地下通路を進んで行く。
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