4 / 29
第三話『アングスティア』
しおりを挟む
ダークエルフについていった僕は、森の中に建つ小屋にたどり着いた。
部屋の中はハーブなどが吊るしてあるが、それ以外は綺麗に片付いていた。
部屋の主、ダークエルフの女性はエルルーンと名乗った。
灰色の肌ととがった耳、青みがかった美しい瞳が印象的だった。
そして、暖炉に掛かっていた鍋からスープを一杯、僕に振舞った。木の皿に盛られたスープは、ただただ熱くて、正直、味はわからなかったが、それでも、一息つくには十分だった。
「あの……それで、ここは?」
「それが一番知りたいことでしょうね……ただ異界人には、難しい答えになるわよ……ここは、アングスティアと呼ばれる世界。あなた達のいるマーテリアル界からすると、異世界ってことになるわね」
「異世界!? アングスティア? マーテリアル界?」
「そう異世界。アングスティアと呼ばれている世界」
「はぁ……」
「それで、ここはドラコニス大陸。北東部ドルムス地方……フローレン王国領、ゼーヴァルト村のはずれ……ってところね」
「えっと……ドラコニス大陸? 北東部の……えっとなんでしたっけ?」
「慌てることはないわ……スープ、おかわりいるでしょ?」
「あ、はい! ご馳走になります」
この後、スープを4杯、おかわりする間に、この世界についてだいぶ理解することができた。
ここはアングスティアと呼ばれる世界の中のドラコニス大陸であること。
ドラコニス大陸には、いくつかの地域といくつかの国があるが、ここは北東部ドルムス地方と呼ばれるフローレン王国の領内で、ゼーヴァルト村という小さな村の近くだと言う。
いわゆる異世界である。
自分が、そんなアニメに出てくるような状況にあることは、にわかに信じがたかったが、とりあえずは、この世界で生きて元の世界、こちらではマーテリアル界と呼ばれる元の世界へ戻る方法を探そうと思うと、エルルーンには伝えた。
「見つかるといいわね……長い事生きてるけど……アングスティアに来た異界人には、何人かあったことあるけど……あっちに戻った人の話は聞いたことがないわ」
「えぇ……って、ことは、このアングスティアには、僕のいた世界の人がいるってことですよね?」
「そうだけど……気を付けてね……異界人は、この世界では、危険な存在として忌み嫌われてるから」
「え? そうなんですか?」
「もしも異界人だとバレれば、掴まって、ひどい拷問を受けることになるか……その場で殺されるでしょうね……」
「な、なんでですか!?」
「あなたたちの世界は、このアングスティアよりも、進んだ文明なんでしょ? 以前に会った異界人は、数百年前の中世みたいだって言ってたから……」
「あぁ……そうですか……だったら多分、そうです」
「何ていったかしら……民主主義とかいうんでしょ? この世界は、まだ王様が治めるのが普通だから……そういう考え方って権力者たちからしてみると、自分たちの権力を脅かす存在にしか見えないのよ」
「確かに……」
「だから、誰かに異界人かと聞かれても、バカ正直に答えないことね……いろんな罠があるから……その場で殺された人も少なくないわよ」
「ってことは、同じ異界人と会っても、わからないってことですよね?」
「そうね、でも、あなたは運がよかったのよ。最初に会ったのが私で……」
「はぁ……でも、なんで助けてもらえたんですか?」
「それはね……私たちダークエルフも、長い歴史の中で存在自体が忌み嫌われてきたから……少しは異界人の気持ちがわかるのよ……」
「……」
「それに、あなたの能力は、いずれ使えるから……」
「え?」
「その時になれば、わかるわ……」
その時がいつなのかは、はぐらかされた。
しかし、問題は山積みである。まずはヒカリという名前は、使えないらしい。
ドラコニス大陸には、そんな響きの名前はないばかりか、いかにも異界人っぽい響きに聞こえるのだという。
「じゃぁ……エルルーンさんが、僕に名前を付けてくれませんか?」
「ヒカリって、どういう意味?」
「あの……灯りとか、光と同じ意味です」
「そう……じゃぁ、同じ意味の名前をあなたにあげる……あなたの名前はルークス。旅人のルークスよ」
それから結局、数日、僕はエルルーンの小屋で世話になりながら、この世界の常識を学んだ。
そして、僕は旅立った。
人々に恐怖の記憶を思い出させ、黒マナを集めるために……。
あれから一年余りの月日が流れた。
一年の月日といっても、それはこの世界……アングスティアでの一年だ。
今、僕はドラコニス大陸を旅している。
この世界で僕はヒカリではなく、ルークスだ。
今の僕は、ただこの異世界で怪異を収集する旅人。
怪異収集家ルークスである。
部屋の中はハーブなどが吊るしてあるが、それ以外は綺麗に片付いていた。
部屋の主、ダークエルフの女性はエルルーンと名乗った。
灰色の肌ととがった耳、青みがかった美しい瞳が印象的だった。
そして、暖炉に掛かっていた鍋からスープを一杯、僕に振舞った。木の皿に盛られたスープは、ただただ熱くて、正直、味はわからなかったが、それでも、一息つくには十分だった。
「あの……それで、ここは?」
「それが一番知りたいことでしょうね……ただ異界人には、難しい答えになるわよ……ここは、アングスティアと呼ばれる世界。あなた達のいるマーテリアル界からすると、異世界ってことになるわね」
「異世界!? アングスティア? マーテリアル界?」
「そう異世界。アングスティアと呼ばれている世界」
「はぁ……」
「それで、ここはドラコニス大陸。北東部ドルムス地方……フローレン王国領、ゼーヴァルト村のはずれ……ってところね」
「えっと……ドラコニス大陸? 北東部の……えっとなんでしたっけ?」
「慌てることはないわ……スープ、おかわりいるでしょ?」
「あ、はい! ご馳走になります」
この後、スープを4杯、おかわりする間に、この世界についてだいぶ理解することができた。
ここはアングスティアと呼ばれる世界の中のドラコニス大陸であること。
ドラコニス大陸には、いくつかの地域といくつかの国があるが、ここは北東部ドルムス地方と呼ばれるフローレン王国の領内で、ゼーヴァルト村という小さな村の近くだと言う。
いわゆる異世界である。
自分が、そんなアニメに出てくるような状況にあることは、にわかに信じがたかったが、とりあえずは、この世界で生きて元の世界、こちらではマーテリアル界と呼ばれる元の世界へ戻る方法を探そうと思うと、エルルーンには伝えた。
「見つかるといいわね……長い事生きてるけど……アングスティアに来た異界人には、何人かあったことあるけど……あっちに戻った人の話は聞いたことがないわ」
「えぇ……って、ことは、このアングスティアには、僕のいた世界の人がいるってことですよね?」
「そうだけど……気を付けてね……異界人は、この世界では、危険な存在として忌み嫌われてるから」
「え? そうなんですか?」
「もしも異界人だとバレれば、掴まって、ひどい拷問を受けることになるか……その場で殺されるでしょうね……」
「な、なんでですか!?」
「あなたたちの世界は、このアングスティアよりも、進んだ文明なんでしょ? 以前に会った異界人は、数百年前の中世みたいだって言ってたから……」
「あぁ……そうですか……だったら多分、そうです」
「何ていったかしら……民主主義とかいうんでしょ? この世界は、まだ王様が治めるのが普通だから……そういう考え方って権力者たちからしてみると、自分たちの権力を脅かす存在にしか見えないのよ」
「確かに……」
「だから、誰かに異界人かと聞かれても、バカ正直に答えないことね……いろんな罠があるから……その場で殺された人も少なくないわよ」
「ってことは、同じ異界人と会っても、わからないってことですよね?」
「そうね、でも、あなたは運がよかったのよ。最初に会ったのが私で……」
「はぁ……でも、なんで助けてもらえたんですか?」
「それはね……私たちダークエルフも、長い歴史の中で存在自体が忌み嫌われてきたから……少しは異界人の気持ちがわかるのよ……」
「……」
「それに、あなたの能力は、いずれ使えるから……」
「え?」
「その時になれば、わかるわ……」
その時がいつなのかは、はぐらかされた。
しかし、問題は山積みである。まずはヒカリという名前は、使えないらしい。
ドラコニス大陸には、そんな響きの名前はないばかりか、いかにも異界人っぽい響きに聞こえるのだという。
「じゃぁ……エルルーンさんが、僕に名前を付けてくれませんか?」
「ヒカリって、どういう意味?」
「あの……灯りとか、光と同じ意味です」
「そう……じゃぁ、同じ意味の名前をあなたにあげる……あなたの名前はルークス。旅人のルークスよ」
それから結局、数日、僕はエルルーンの小屋で世話になりながら、この世界の常識を学んだ。
そして、僕は旅立った。
人々に恐怖の記憶を思い出させ、黒マナを集めるために……。
あれから一年余りの月日が流れた。
一年の月日といっても、それはこの世界……アングスティアでの一年だ。
今、僕はドラコニス大陸を旅している。
この世界で僕はヒカリではなく、ルークスだ。
今の僕は、ただこの異世界で怪異を収集する旅人。
怪異収集家ルークスである。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる