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怪異6『シュタールベルグの隠れ里』
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ドラコニス大陸、北西部に領土を持つドラーテム王国。
その王都ハルスベルグの酒場・アウルネスト(ふくろう亭)でホラ吹きダミアンの異名を持つ冒険者と同じテーブルになった。
どんな軽口をたたく男かと思いきや、意外にも話してみると物静かで実直な男だったため「何故、ホラ吹きなんて呼ばれているんですか?」と素朴が疑問をぶつけてみた。
「それは、ホラだと決めつけないと到底受け入れられない体験を俺がしたせいなんだ……」とダミアンを答えた。
興味を持った僕は、ハチミツ酒をおごる事を条件に、その体験を聞かせてもらうことにした。
ちなみに、ハチミツ酒とは、ハチミツを水に薄めて発酵させた酒だ。
ワインのような口当たりの酒だが、このドラコニスではエール、ワインと並んで人気の酒である。
そんなハチミツ酒をグラスに注ぎ、香りを楽しんでから一杯飲み干すと、上機嫌になったのかダミアンは、ゆっくりと語りだした。
----------
冒険者になる前、俺はシュタールベルグの街の民兵だった。
鉄鉱石の採掘で栄えた中規模の街・シュタールベルグは、民兵を組織して周辺の警備を厳重にしていたんだよ。
大規模な城塞都市みたいな豪華な城壁なんか無いしな、一応、木材で組んだ壁で周囲を囲っちゃいるが、ちょっとした火炎魔法の一つも使えりゃ、簡単に突破出来る代物だったからな。
なんといっても、周囲は未開の森や荒野が広がり、ドラコニアの蛮族がいたるところで出没するからな、街がいつ襲われても不思議じゃなかった。
ドラコニアの蛮族ってのは、セプトン人が、このドラコニス大陸に入植する前から住んでいた原住民のことさ。
ドコラニス大陸に点在するドラコニア古代遺跡の文明を築いた民の末裔だなんて言われているが、あいつらは、破壊しか知らないただの蛮族さ。
荒野で出会ったら最後、俺たち全員が死ぬまで戦うことをやめない。
そりゃ恐ろしいやつらさ。
40年前にも、俺が生まれる前だが、そんなドラコニア蛮族の隠れ里が近くに発見されてね。
村の男たちが招集されて村を焼き討ちしたらしいんだ。
隠れ里の焼き討ちには成功したが、多くの者たちが殺されらしい。
ま、ここまでは前置きだ。
それで、3年前のこと、俺がまだ民兵だった時に、この隠れ里の跡で妙な体験をしたんだ。
俺たち民兵は訓練を兼ねて月一度、3人ひと組でシュタールベルグの街の周囲を野営しながら探索するんだ。
同行したのは、フランツとヤコブだった。
二人は俺の幼馴染で、ガキの頃からバカをやっていた仲だった。
竜の左翼の森を探索している中、俺たちは、変な違和感を覚えた。
「なぁ、なんか変な音しないか?」
耳の良いフランツがつぶやいた
「変な音?」「なんも聞こえねーけど?」俺とヤコブが答えると、フランツは目をつむって周囲の音を聞き。
「うん、やっぱりなんか足跡みたいな音がする……」
「え?」
「マジか?」
俺たちはサッと立ち止った。
俺たちの足音が消えた後、ザッザッザッと森の木々を分け入って歩く足音が確かに聞こえた。
しかし、その音は数歩聞こえただけで止まった。
「獣でもいるのかな?」
「だったら、なんで止まるんだ?」
俺たちは、慎重に歩きだし、そして急に止まったりしてみた。
足音は俺たちから一定の距離をとりながら、ついてきているように感じた。
「誰かに着けられているんじゃないか?」
そんな時、あの隠れ里の跡を見つけたんだ。
「おい、あれって……」
突然、森が開けた先。
ちょっとした広場があり、そこに40年前の焼き討ちのまま、焼け落ち、朽ちた木で崩れかかったあばら家と、焦げた洞窟の入り口があった。
まるで時間が止まったように、その時のまま放置されているように思われたよ。
「焼き討ちって40年だったよな……」
「ああ……」
「なんで木も草も生えてねぇんだ? ここ……」
なんか違和感だらけだった。
俺たちはすぐにでもここから離れて街に帰りたくなった。
今思えば、そうしていればと思う。
だが、入り口の焦げた洞窟の中で何かが光ったんだ。
何か松明の光りのように揺らりと燃える炎のような光が……。
「洞窟の中で何か光ったぞ」
俺が言うと
「な、何かってなんだよダミアン!」
ヤコブが慌てた様子で聞いてきた。
「俺に聞くなよ。わからねぇって……松明みたいなもんが見えたんだ」
「誰かいるのか?」
「わからねぇって言ってるだろ……」
一応、民兵と言えども兵士だからな……何か見つけたのに調査しないで帰るわけにはいかなかったんだ。
俺たちは、洞窟へ向かった。
洞窟に入ると、辺りはまだ焦げくさかった。
40年前に焼き討ちを受けたとは思えないほどの濃密な焦げたような臭いと、カビの臭いが充満してた。
地面は雨水が溜まり黒く濁っている。
足跡も見えず、人がいるかどうかはわからなかった。
「奥へ行くぞ……」
「お、おう」
「気を抜くなよ」
俺たちは、松明と抜刀した剣を手に洞窟の奥へと進んだ。
中は真っ暗だった。
松明を手にしていなければ、何も見えないくらいにね。
足元は黒く濁った水が靴の上まで溜まっていて、何かあっても見えない。
歩くたびにヌメヌメと動く黒い水が何かの生き物のようにうごめいてとにかく気持ち悪かった。
「こんなところに誰もいねぇだろ……」
「だけど、一応確認は必要だ!」フランツは何かに取りつかれたかのように奥へ奥へと進んでいく。
「ちょっと待ってくれよ」俺とヤコブはついていくに必死だった。
その時。
バシャンっと背後で音がした。
ヤコブが何かに躓いて転んだんだ。
水の深さは靴の上くらい。
転んだところで背中が見えるはずだったが、ふり向いて松明を向けてもヤコブの姿が見えない。
「ヤコブっ!?」
名前を呼んだがヤコブの返事はなく、姿も見えない。
俺は先行するフランツを呼んだ。
「フランツ、ヤコブの奴がいなくなった」
だが、洞窟の奥から聞こえてきたのはフランツの冷静な声だった。
「こっちに来てくれ」
「いや、それどころじゃないんだって、ヤコブがいないんだ」
だが、フランツは、まったく変わらない声色で「こっちに来てくれ」と繰り返した。
俺は頭にきて「お前が来いよフランツ!」と叫んだ。
だが、返ってきたのは、フランツの「こっちに来てくれ」という声の繰り返し。
俺は違和感を得ながらもフランツの声の元に向かった。
フランツは洞窟の行き止まりに立っていた。
「こっちに来てくれ」と繰り返しているフランツの眼は虚空を見つめている。
「どうかしたのか?」俺が声をかけても「こっちに来てくれ」とずっと繰り返している。
「フランツ?」と、近づいてハッとした。
フランツの奥に消えたはずのヤコブが背を向けて経っていた。
それは間違いなくヤコブのリングアーマーだった。
「ヤコブ? 大丈夫なのか?」
もう一歩近づき松明を向けた時。
ヤコブの太ももに何かがへばりついているのが見えた。
それは、血まみれの赤ん坊だった。
「!」
フランツは「こっちに来てくれ」とまた繰り返す。
が、その口の中から赤ん坊の手がニュっと飛び出した。
「こっぢに……ぎでくれ……」繰り返す言葉が詰まった発音になった。
「……」
俺は、声が出なかった。
すると、ずっと背を向けていたヤコブがこちらを向いたんだ。
「あああああああ……」
うめき声を上げるヤコブの口に、血まみれの赤ん坊が入って行った。
俺は、動けなかった。
「こっぢに……ぎでくれ……」
二人が、ゆっくりとこちらに歩き出した。
動け、逃げろ。
俺の直感が叫んだ。
次の瞬間、俺は剣を捨て、松明だけを手に踵を返して洞窟を走った。
何度も転んだ。
なんとか松明を水につけないようにして、明かりを頼りに這うように俺は洞窟を出た。
外はもう夜になっていた。
闇の中、何か、無数の黒い影のようなものが、俺を見つめていた。
俺は、立ち止まる事無く森の中に入った。
とにかく走ったよ。
すると周囲から俺の足音とは違う足音がザッザッザとついてくるのが聞こえた。
それは一人二人じゃなく、何十人もいるように感じた。
松明が消えても、俺は走った。
俺は、とにかく寝ずに、木々の隙間から見える星の位置と星明かりを頼りに北へ向かった。
シュタールベルグの街に着いたのは、次の日の午後になっていた。
俺は、隊長にことの顛末を話した。
最初はいぶかしげに聞いていた隊長だったが、俺のただならぬ様子に、ヤコブとフランツの捜索隊を編成してくれた。
翌朝、向かうことになり、街に残っている民兵たちが、その準備を始めていた時だった。
フランツとヤコブが帰ってきたのだ。
二人は「物音にビビったダミアンが転んで、そのまま叫びながら逃げちまった」と隊長に説明した。
俺は、何か悪い夢を見ていたのか?
そんな気分だった。
民兵のみんなは俺のことを人騒がせな「ホラ吹き野郎」と罵り嘲笑った。
フランツとヤコブも、みんなと一緒に笑っていたよ。
だけど、フランツは「ごのぼらぶぎやろろ……」と詰まったような発音で笑った時。
俺は奴の口の中から俺のことを見つめる赤ん坊の目を見たんだ。
俺は、宿舎を飛び出し荷物をまとめて村を出た。
----------
「もう、シュタールベルグに戻るつもりはないよ」
こうしてダミアンはハルスベルグで冒険者となったという。
「『ホラ吹き』はその時からの俺の二つ名だ……」
そう言って笑った。
「訂正する気もないし、俺がホラ吹きだったらいいと思っているのさ」
ダミアンはハチミツ酒を飲み干すと、寂しげにうつむいた。
その王都ハルスベルグの酒場・アウルネスト(ふくろう亭)でホラ吹きダミアンの異名を持つ冒険者と同じテーブルになった。
どんな軽口をたたく男かと思いきや、意外にも話してみると物静かで実直な男だったため「何故、ホラ吹きなんて呼ばれているんですか?」と素朴が疑問をぶつけてみた。
「それは、ホラだと決めつけないと到底受け入れられない体験を俺がしたせいなんだ……」とダミアンを答えた。
興味を持った僕は、ハチミツ酒をおごる事を条件に、その体験を聞かせてもらうことにした。
ちなみに、ハチミツ酒とは、ハチミツを水に薄めて発酵させた酒だ。
ワインのような口当たりの酒だが、このドラコニスではエール、ワインと並んで人気の酒である。
そんなハチミツ酒をグラスに注ぎ、香りを楽しんでから一杯飲み干すと、上機嫌になったのかダミアンは、ゆっくりと語りだした。
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冒険者になる前、俺はシュタールベルグの街の民兵だった。
鉄鉱石の採掘で栄えた中規模の街・シュタールベルグは、民兵を組織して周辺の警備を厳重にしていたんだよ。
大規模な城塞都市みたいな豪華な城壁なんか無いしな、一応、木材で組んだ壁で周囲を囲っちゃいるが、ちょっとした火炎魔法の一つも使えりゃ、簡単に突破出来る代物だったからな。
なんといっても、周囲は未開の森や荒野が広がり、ドラコニアの蛮族がいたるところで出没するからな、街がいつ襲われても不思議じゃなかった。
ドラコニアの蛮族ってのは、セプトン人が、このドラコニス大陸に入植する前から住んでいた原住民のことさ。
ドコラニス大陸に点在するドラコニア古代遺跡の文明を築いた民の末裔だなんて言われているが、あいつらは、破壊しか知らないただの蛮族さ。
荒野で出会ったら最後、俺たち全員が死ぬまで戦うことをやめない。
そりゃ恐ろしいやつらさ。
40年前にも、俺が生まれる前だが、そんなドラコニア蛮族の隠れ里が近くに発見されてね。
村の男たちが招集されて村を焼き討ちしたらしいんだ。
隠れ里の焼き討ちには成功したが、多くの者たちが殺されらしい。
ま、ここまでは前置きだ。
それで、3年前のこと、俺がまだ民兵だった時に、この隠れ里の跡で妙な体験をしたんだ。
俺たち民兵は訓練を兼ねて月一度、3人ひと組でシュタールベルグの街の周囲を野営しながら探索するんだ。
同行したのは、フランツとヤコブだった。
二人は俺の幼馴染で、ガキの頃からバカをやっていた仲だった。
竜の左翼の森を探索している中、俺たちは、変な違和感を覚えた。
「なぁ、なんか変な音しないか?」
耳の良いフランツがつぶやいた
「変な音?」「なんも聞こえねーけど?」俺とヤコブが答えると、フランツは目をつむって周囲の音を聞き。
「うん、やっぱりなんか足跡みたいな音がする……」
「え?」
「マジか?」
俺たちはサッと立ち止った。
俺たちの足音が消えた後、ザッザッザッと森の木々を分け入って歩く足音が確かに聞こえた。
しかし、その音は数歩聞こえただけで止まった。
「獣でもいるのかな?」
「だったら、なんで止まるんだ?」
俺たちは、慎重に歩きだし、そして急に止まったりしてみた。
足音は俺たちから一定の距離をとりながら、ついてきているように感じた。
「誰かに着けられているんじゃないか?」
そんな時、あの隠れ里の跡を見つけたんだ。
「おい、あれって……」
突然、森が開けた先。
ちょっとした広場があり、そこに40年前の焼き討ちのまま、焼け落ち、朽ちた木で崩れかかったあばら家と、焦げた洞窟の入り口があった。
まるで時間が止まったように、その時のまま放置されているように思われたよ。
「焼き討ちって40年だったよな……」
「ああ……」
「なんで木も草も生えてねぇんだ? ここ……」
なんか違和感だらけだった。
俺たちはすぐにでもここから離れて街に帰りたくなった。
今思えば、そうしていればと思う。
だが、入り口の焦げた洞窟の中で何かが光ったんだ。
何か松明の光りのように揺らりと燃える炎のような光が……。
「洞窟の中で何か光ったぞ」
俺が言うと
「な、何かってなんだよダミアン!」
ヤコブが慌てた様子で聞いてきた。
「俺に聞くなよ。わからねぇって……松明みたいなもんが見えたんだ」
「誰かいるのか?」
「わからねぇって言ってるだろ……」
一応、民兵と言えども兵士だからな……何か見つけたのに調査しないで帰るわけにはいかなかったんだ。
俺たちは、洞窟へ向かった。
洞窟に入ると、辺りはまだ焦げくさかった。
40年前に焼き討ちを受けたとは思えないほどの濃密な焦げたような臭いと、カビの臭いが充満してた。
地面は雨水が溜まり黒く濁っている。
足跡も見えず、人がいるかどうかはわからなかった。
「奥へ行くぞ……」
「お、おう」
「気を抜くなよ」
俺たちは、松明と抜刀した剣を手に洞窟の奥へと進んだ。
中は真っ暗だった。
松明を手にしていなければ、何も見えないくらいにね。
足元は黒く濁った水が靴の上まで溜まっていて、何かあっても見えない。
歩くたびにヌメヌメと動く黒い水が何かの生き物のようにうごめいてとにかく気持ち悪かった。
「こんなところに誰もいねぇだろ……」
「だけど、一応確認は必要だ!」フランツは何かに取りつかれたかのように奥へ奥へと進んでいく。
「ちょっと待ってくれよ」俺とヤコブはついていくに必死だった。
その時。
バシャンっと背後で音がした。
ヤコブが何かに躓いて転んだんだ。
水の深さは靴の上くらい。
転んだところで背中が見えるはずだったが、ふり向いて松明を向けてもヤコブの姿が見えない。
「ヤコブっ!?」
名前を呼んだがヤコブの返事はなく、姿も見えない。
俺は先行するフランツを呼んだ。
「フランツ、ヤコブの奴がいなくなった」
だが、洞窟の奥から聞こえてきたのはフランツの冷静な声だった。
「こっちに来てくれ」
「いや、それどころじゃないんだって、ヤコブがいないんだ」
だが、フランツは、まったく変わらない声色で「こっちに来てくれ」と繰り返した。
俺は頭にきて「お前が来いよフランツ!」と叫んだ。
だが、返ってきたのは、フランツの「こっちに来てくれ」という声の繰り返し。
俺は違和感を得ながらもフランツの声の元に向かった。
フランツは洞窟の行き止まりに立っていた。
「こっちに来てくれ」と繰り返しているフランツの眼は虚空を見つめている。
「どうかしたのか?」俺が声をかけても「こっちに来てくれ」とずっと繰り返している。
「フランツ?」と、近づいてハッとした。
フランツの奥に消えたはずのヤコブが背を向けて経っていた。
それは間違いなくヤコブのリングアーマーだった。
「ヤコブ? 大丈夫なのか?」
もう一歩近づき松明を向けた時。
ヤコブの太ももに何かがへばりついているのが見えた。
それは、血まみれの赤ん坊だった。
「!」
フランツは「こっちに来てくれ」とまた繰り返す。
が、その口の中から赤ん坊の手がニュっと飛び出した。
「こっぢに……ぎでくれ……」繰り返す言葉が詰まった発音になった。
「……」
俺は、声が出なかった。
すると、ずっと背を向けていたヤコブがこちらを向いたんだ。
「あああああああ……」
うめき声を上げるヤコブの口に、血まみれの赤ん坊が入って行った。
俺は、動けなかった。
「こっぢに……ぎでくれ……」
二人が、ゆっくりとこちらに歩き出した。
動け、逃げろ。
俺の直感が叫んだ。
次の瞬間、俺は剣を捨て、松明だけを手に踵を返して洞窟を走った。
何度も転んだ。
なんとか松明を水につけないようにして、明かりを頼りに這うように俺は洞窟を出た。
外はもう夜になっていた。
闇の中、何か、無数の黒い影のようなものが、俺を見つめていた。
俺は、立ち止まる事無く森の中に入った。
とにかく走ったよ。
すると周囲から俺の足音とは違う足音がザッザッザとついてくるのが聞こえた。
それは一人二人じゃなく、何十人もいるように感じた。
松明が消えても、俺は走った。
俺は、とにかく寝ずに、木々の隙間から見える星の位置と星明かりを頼りに北へ向かった。
シュタールベルグの街に着いたのは、次の日の午後になっていた。
俺は、隊長にことの顛末を話した。
最初はいぶかしげに聞いていた隊長だったが、俺のただならぬ様子に、ヤコブとフランツの捜索隊を編成してくれた。
翌朝、向かうことになり、街に残っている民兵たちが、その準備を始めていた時だった。
フランツとヤコブが帰ってきたのだ。
二人は「物音にビビったダミアンが転んで、そのまま叫びながら逃げちまった」と隊長に説明した。
俺は、何か悪い夢を見ていたのか?
そんな気分だった。
民兵のみんなは俺のことを人騒がせな「ホラ吹き野郎」と罵り嘲笑った。
フランツとヤコブも、みんなと一緒に笑っていたよ。
だけど、フランツは「ごのぼらぶぎやろろ……」と詰まったような発音で笑った時。
俺は奴の口の中から俺のことを見つめる赤ん坊の目を見たんだ。
俺は、宿舎を飛び出し荷物をまとめて村を出た。
----------
「もう、シュタールベルグに戻るつもりはないよ」
こうしてダミアンはハルスベルグで冒険者となったという。
「『ホラ吹き』はその時からの俺の二つ名だ……」
そう言って笑った。
「訂正する気もないし、俺がホラ吹きだったらいいと思っているのさ」
ダミアンはハチミツ酒を飲み干すと、寂しげにうつむいた。
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