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8 烏天狗の諫め
③
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しかしその時、私たちの間をすり抜けるようにして、とんでもなく速い風が通った。
シロの背にしっかり掴まっていたはずなのに、私の体は風に煽られて宙に浮いてしまい、このまま地面に叩きつけられると絶望を感じた瞬間、下から掬い上げるようにして何者かに抱きかかえられる。
「え?」
シロと高速移動していた高さより、かなり上空へ、そのままぐんぐん上っていく感覚があった。
恐怖と諦めからぎゅっと瞑っていた目を恐る恐る開けてみると、すぐ目の前にあったのは漆黒の翼――。
「ええっ……!?」
首をめぐらして見ると、その翼で空を飛びながら、私を抱きかかえているらしい者と目があう。
頭の上に小さな箱のような帽子を乗せ、鼻から口もとにかけてを黒い布ですっかり覆ってしまっているが、三白眼ぎみの切れ長の目には、確かに見覚えがあった。
「クロ……さん?」
困惑ぎみに訊ねた私への返事代わりのように、背中から生えている黒い羽を大きく羽ばたかせると、彼は更に空へ上昇する。
間一髪、ほんの今まで私たちがいた位置まで、綾音さんの手が伸びた。
「きゃあああああ」
ぎりぎりそれをかわすことができた緊張感と、ここで落ちては本当に死んでしまう恐怖から、全力で首にしがみつく私を、半分人間、半分鳥のような格好をした彼は、本当に嫌そうな目で見る。
「怖いのはわかったから、わめくな。耳をやられる」
その冷たい声は、まちがいなくクロのものだ。
彼は私を抱きかかえながら、脚を大きくふり上げ、履いていた下駄を下にいる綾音さんに向かって飛ばす。
スコーンと下駄が彼女の額の中央に命中した瞬間、クロが凄みのある声で言い放った。
「落ち着け、鬼女。また蔵の中に閉じこめられたいか?」
「――――!」
怒りで逆立っていた綾音さんの長い髪が、力を失ったかのようにふぁさりと彼女の肩に落ちた。
耳まで裂けるようだった口が閉じられ、ふりかぶっていた腕を下ろしてしまうと、可哀そうなほど落ちこんだ可愛い女の子の姿に戻る。
そこまでを見守って、クロはもう片方の脚もふり上げた。
「お前もだ、シロ。わざわざ問題を起こすようなことをするな」
シロに向かって飛んでいったもう一つの下駄は、いつの間にか人型に戻ったシロの額に命中する直前で、ぱしっと手でキャッチされた。
「だって、せっかくなら有効活用するべきだって思うじゃーん」
人懐っこい笑顔で、彼が真っ直ぐに見上げているのは私――。
「有効活用!?」
それはどういう意味だと、私は怒りに任せて彼に詰め寄りかけたが、実際はクロの腕の中だった。
しかも、まだ遥か上空だ。
「おいっ!」
私のせいでバランスを崩したらしいクロに、至近距離でギロリと睨まれる。
「ごめんなさい……」
首を竦めて謝った私を抱え直し、クロは地上へ向けて降下を始めた。
シロの背にしっかり掴まっていたはずなのに、私の体は風に煽られて宙に浮いてしまい、このまま地面に叩きつけられると絶望を感じた瞬間、下から掬い上げるようにして何者かに抱きかかえられる。
「え?」
シロと高速移動していた高さより、かなり上空へ、そのままぐんぐん上っていく感覚があった。
恐怖と諦めからぎゅっと瞑っていた目を恐る恐る開けてみると、すぐ目の前にあったのは漆黒の翼――。
「ええっ……!?」
首をめぐらして見ると、その翼で空を飛びながら、私を抱きかかえているらしい者と目があう。
頭の上に小さな箱のような帽子を乗せ、鼻から口もとにかけてを黒い布ですっかり覆ってしまっているが、三白眼ぎみの切れ長の目には、確かに見覚えがあった。
「クロ……さん?」
困惑ぎみに訊ねた私への返事代わりのように、背中から生えている黒い羽を大きく羽ばたかせると、彼は更に空へ上昇する。
間一髪、ほんの今まで私たちがいた位置まで、綾音さんの手が伸びた。
「きゃあああああ」
ぎりぎりそれをかわすことができた緊張感と、ここで落ちては本当に死んでしまう恐怖から、全力で首にしがみつく私を、半分人間、半分鳥のような格好をした彼は、本当に嫌そうな目で見る。
「怖いのはわかったから、わめくな。耳をやられる」
その冷たい声は、まちがいなくクロのものだ。
彼は私を抱きかかえながら、脚を大きくふり上げ、履いていた下駄を下にいる綾音さんに向かって飛ばす。
スコーンと下駄が彼女の額の中央に命中した瞬間、クロが凄みのある声で言い放った。
「落ち着け、鬼女。また蔵の中に閉じこめられたいか?」
「――――!」
怒りで逆立っていた綾音さんの長い髪が、力を失ったかのようにふぁさりと彼女の肩に落ちた。
耳まで裂けるようだった口が閉じられ、ふりかぶっていた腕を下ろしてしまうと、可哀そうなほど落ちこんだ可愛い女の子の姿に戻る。
そこまでを見守って、クロはもう片方の脚もふり上げた。
「お前もだ、シロ。わざわざ問題を起こすようなことをするな」
シロに向かって飛んでいったもう一つの下駄は、いつの間にか人型に戻ったシロの額に命中する直前で、ぱしっと手でキャッチされた。
「だって、せっかくなら有効活用するべきだって思うじゃーん」
人懐っこい笑顔で、彼が真っ直ぐに見上げているのは私――。
「有効活用!?」
それはどういう意味だと、私は怒りに任せて彼に詰め寄りかけたが、実際はクロの腕の中だった。
しかも、まだ遥か上空だ。
「おいっ!」
私のせいでバランスを崩したらしいクロに、至近距離でギロリと睨まれる。
「ごめんなさい……」
首を竦めて謝った私を抱え直し、クロは地上へ向けて降下を始めた。
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