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8 烏天狗の諫め
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私たちの目の前に立つ綾音さんは、シロに抱きしめられた私を見ると、驚いたように瞳を見開き、白い首が折れそうなほどにがっくり俯いてしまった。
(ほらー、可哀そうでしょ!)
華奢な肩が、何かをこらえるようにぶるぶる震えている。
このままでは泣かしてしまうと、私はシロに抗議の目を向けたが、彼はそ知らぬふりだ。
「…………そのかたは?」
「瑞穂ちゃんだよ。今日から一緒に働くことになったんだ。よろしくねー。家も一緒に住むんだよ」
綾音さんの問いかけに明るく答えているシロを、いくら睨んでもまったく効き目はない。
(わざと誤解を招くような言いかたをしないで! それじゃ誰だってかん違いするでしょ!)
思ったとおり、はっと顔を上げた綾音さんは、すっかり顔色を失ってしまっている。
(ほらね……)
しかし、大きな瞳に見る見る涙が膨らみ、それが白い頬にこぼれ落ちそうになった次の瞬間、その形相ががらりと変わった。
きりっと眦を吊り上げて、私へ向けられた双眸。
それは怒りに燃えている。
「あ、ヤバイかも……」
シロが呟いたのと、吹き飛ばされそうなほどの突風がいきなり彼女のほうから吹いたのは同時だった。
「きゃああっ」
衝撃で私の口を縛めていた何かは解かれたらしく、悲鳴を上げながら飛ばされようとする私を、獣型になったシロが背中で庇ってくれる。
「瑞穂ちゃん!」
すっかり触り慣れた毛並み越し、少しだけ顔を出してみると、長い髪を逆立てて、爛々と目を光らせている綾音さんがいた。
可愛らしかった口は耳のあたりまで裂け、その間から蛇のような長い舌がチロチロと出ている。
「嘘でしょう……!?」
あまりの変貌ぶりに、絶望ぎみに呟く私を、シロがひょいっと背中に乗せた。
「瑞穂ちゃんはしっかり掴まってて、綾音ちゃんはちょっと落ち着こうか、ね?」
言いながら、彼女から逃げる。
しかし綾音さんも負けてはいない。
私たちの横をぴったりついてくる。
「シロさまの背中……私だってまだ乗ったことないのにぃ……!」
「――――!」
私としては、出来ることなら今すぐこの場所を彼女に譲りたいくらいだが、振り落とされそうな速さで移動している最中のことなので、簡単にそうもいかない。
「ごめんなさい! ごめんなさーい!」
私の精一杯の叫びは、謝罪にはならないようだ。
かえって彼女の形相が鬼のように恐ろしくなる。
「悔しい……悔しい……っ」
ぎりぎりと唇を噛みながら、こちらへ手を伸ばした彼女の長い爪が、私の頬を掠めた。
「痛っ」
「大丈夫? 瑞穂ちゃん!」
私の悲鳴を聞いたシロが、心配そうに声をかけたことで、綾音さんの中の何かがブチッと切れたように見えた。
大きく手を振りかぶり、長い爪を私に向かって躊躇なく打ちこむ。
その速度は、目にも留まらないほど速い。
かわそうとしたシロの動きより、彼女の腕のスピードのほうが完全に勝っており、私は覚悟を決めた。
(殺されるっ!)
(ほらー、可哀そうでしょ!)
華奢な肩が、何かをこらえるようにぶるぶる震えている。
このままでは泣かしてしまうと、私はシロに抗議の目を向けたが、彼はそ知らぬふりだ。
「…………そのかたは?」
「瑞穂ちゃんだよ。今日から一緒に働くことになったんだ。よろしくねー。家も一緒に住むんだよ」
綾音さんの問いかけに明るく答えているシロを、いくら睨んでもまったく効き目はない。
(わざと誤解を招くような言いかたをしないで! それじゃ誰だってかん違いするでしょ!)
思ったとおり、はっと顔を上げた綾音さんは、すっかり顔色を失ってしまっている。
(ほらね……)
しかし、大きな瞳に見る見る涙が膨らみ、それが白い頬にこぼれ落ちそうになった次の瞬間、その形相ががらりと変わった。
きりっと眦を吊り上げて、私へ向けられた双眸。
それは怒りに燃えている。
「あ、ヤバイかも……」
シロが呟いたのと、吹き飛ばされそうなほどの突風がいきなり彼女のほうから吹いたのは同時だった。
「きゃああっ」
衝撃で私の口を縛めていた何かは解かれたらしく、悲鳴を上げながら飛ばされようとする私を、獣型になったシロが背中で庇ってくれる。
「瑞穂ちゃん!」
すっかり触り慣れた毛並み越し、少しだけ顔を出してみると、長い髪を逆立てて、爛々と目を光らせている綾音さんがいた。
可愛らしかった口は耳のあたりまで裂け、その間から蛇のような長い舌がチロチロと出ている。
「嘘でしょう……!?」
あまりの変貌ぶりに、絶望ぎみに呟く私を、シロがひょいっと背中に乗せた。
「瑞穂ちゃんはしっかり掴まってて、綾音ちゃんはちょっと落ち着こうか、ね?」
言いながら、彼女から逃げる。
しかし綾音さんも負けてはいない。
私たちの横をぴったりついてくる。
「シロさまの背中……私だってまだ乗ったことないのにぃ……!」
「――――!」
私としては、出来ることなら今すぐこの場所を彼女に譲りたいくらいだが、振り落とされそうな速さで移動している最中のことなので、簡単にそうもいかない。
「ごめんなさい! ごめんなさーい!」
私の精一杯の叫びは、謝罪にはならないようだ。
かえって彼女の形相が鬼のように恐ろしくなる。
「悔しい……悔しい……っ」
ぎりぎりと唇を噛みながら、こちらへ手を伸ばした彼女の長い爪が、私の頬を掠めた。
「痛っ」
「大丈夫? 瑞穂ちゃん!」
私の悲鳴を聞いたシロが、心配そうに声をかけたことで、綾音さんの中の何かがブチッと切れたように見えた。
大きく手を振りかぶり、長い爪を私に向かって躊躇なく打ちこむ。
その速度は、目にも留まらないほど速い。
かわそうとしたシロの動きより、彼女の腕のスピードのほうが完全に勝っており、私は覚悟を決めた。
(殺されるっ!)
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