大鳥居横あやかし宅配便~ワケアリ荷物お届けします~

シェリンカ

文字の大きさ
58 / 77
15 河童の恋

しおりを挟む
 長い時間車の運転をする時、密室に長時間同席にすることになるのだから、同乗者との関係性はかなり重大だ。
 田中さんの家を初めて訪れた際、山を登ったり下ったりと、往復四時間も走ったが、道を捜しながらだったのと、助手席に座っていたのがシロだったため、沈黙を辛く感じることはなかった。

(だってシロくん、放っておいたって次から次へといろんな話題を出してくるんだもん……)

 豆太くんと街まで往復した時も、気にもしなかった。

(途中で豆太くんが寝ちゃったのもあるけど、起きてる時も田中さんの話や、山のどこに綺麗な葉っぱがあって、いいどんぐりが落ちているのかなんて話……楽しかったな……)

 しかし隣に座っているのが、クロとなるとそうはいかない。
 一つの会話もない中、お気に入りの曲を流すというわけにもいかず、眠けと疲労と戦いながら、私は必死に車のハンドルを握っている。

(何か……何か話してよ……)

 クロには期待できないので、私はなんとか、今日の荷物の依頼主についての質問をひっぱり出した。

「河太郎さんのこと……クロさんはよく知ってるんですか?」

 返事がないので、無視されたのかと虚しくなりかけたが、大きなため息を吐いてから、クロは話し始めてくれた。

「直接関わりを持ったことはないが、聞こえてくる悪評を耳にしているという点ではそうだな」
「悪評……」
「その贈り物の相手との関係だ」
「あ……」

 そういえばクロは、あやかしと人間が深く関わることをよく思っていないのだったと、私は今更ながらに思い出した。

「どうしてクロさんは反対なんですか? その……」

 なんと訊ねたらいいのか言葉に迷い、語尾を濁す私を、クロが助手席からじっと見つめる。
 彼は背が高く、肩幅も広いので、自然と隣に座る私との距離も近くなり、そういう距離感で男の人を隣に乗せたことのない私は、妙に緊張してしまう。

(あまりこっちを見ないでほしい……)

 私の心の声が聞こえたわけでもないのだろうが、クロが腕組みをして窓の外へ顔を向けた。
 射るほどに鋭い視線から解放されて、私はほっとする。

「もともとの生きる世界が違うんだ……虚しいだけだ……」

 クロは窓の外を見ながらぽつりと、私の質問への答えらしいことを呟いた。
 しかしその時ちょうど、車が大きなトラックとすれ違ったところで、私はその返答をうまく聞き取れなかった。

「え? なんですか? 何か言いました?」

 クロは、体ごと窓の外へ向き直り、怒りに肩を震わせながら、低い声で唸る。

「なんでもない。何も気にせずお前は運転に集中していろ!」
「…………はい」

 それ以上食い下がると、ますます不興を買ってしまいそうだったので、私は本当にそれきり口を噤むことにした。
 実際は、うっすらとは言葉を聞き取れていたのだが、それに関してもう触れてほしくなさそうな雰囲気だったので、自分のその勘に従うことにしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

明治あやかし黄昏座

鈴木しぐれ
キャラ文芸
時は、明治二十年。 浅草にある黄昏座は、妖を題材にした芝居を上演する、妖による妖のための芝居小屋。 記憶をなくした主人公は、ひょんなことから狐の青年、琥珀と出会う。黄昏座の座員、そして自らも”妖”であることを知る。主人公は失われた記憶を探しつつ、彼らと共に芝居を作り上げることになる。 提灯からアーク灯、木造からレンガ造り、着物から洋装、世の中が目まぐるしく変化する明治の時代。 妖が生き残るすべは――芝居にあり。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私は実は“本物の聖女”でした。 

さら
恋愛
 私――ミリアは、クラスで地味で取り柄もない“都合のいい子”だった。  そんな私が、いじめの張本人だった美少女・沙羅と一緒に異世界へ召喚された。  王城で“聖女”として迎えられたのは彼女だけ。  私は「魔力が測定不能の無能」と言われ、冷たく追い出された。  ――でも、それは間違いだった。  辺境の村で出会った青年リオネルに助けられ、私は初めて自分の力を信じようと決意する。  やがて傷ついた人々を癒やすうちに、私の“無”と呼ばれた力が、誰にも真似できない“神の光”だと判明して――。  王都での再召喚、偽りの聖女との再会、かつての嘲笑が驚嘆に変わる瞬間。  無能と呼ばれた少女が、“本物の聖女”として世界を救う――優しさと再生のざまぁストーリー。  裏切りから始まる癒しの恋。  厳しくも温かい騎士リオネルとの出会いが、ミリアの運命を優しく変えていく。

神様達の転職事情~八百万ハローワーク

鏡野ゆう
キャラ文芸
とある町にある公共職業安定所、通称ハローワーク。その建物の横に隣接している古い町家。実はここもハローワークの建物でした。ただし、そこにやってくるのは「人」ではなく「神様」達なのです。 ※カクヨムでも公開中※ ※第4回キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました。ありがとうございます。※

処理中です...