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シェリンカ

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15 河童の恋

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「本当にお前は……考えなしの馬鹿で、つきあいきれん」

 昨日の夕食から今日の朝食まで、卓袱台ちゃぶだいを囲んでの食事の席で、クロは私を前にして、ずっとその言葉をくり返している。

「だって……どうしても諦めきれなくて、どうにかしてこれを渡したいって泣かれたら、断われるわけないじゃないですか……」

 私もまた、何度も同じ答えを返している。

 河太郎さんの依頼は、先日喧嘩別れした人間の恋人へ、プレゼントを届けてほしいというものだった。
 それをきっかけに、二人の関係を修復したいと涙ながらに訴えられたので、私はその小さな荷物を引き受けた。

「だからそもそも、内容なんて聞かず、突っぱねればよかったんだ」
「それじゃこの仕事をしている意味がないです……」

 そこでクロが決まって沈黙する。
 そのやり取りを、昨晩から飽きもせずに何度もくり返して、シロはすっかり呆れている。

「まあ、もう引き受けちゃったんだし……しょうがないんじゃないの?」

 ホッケの干物をつつきながらの発言に、私は笑顔で同意した。

「そうだよね!」
「うん。俺が同行できれば、クロも文句はないと思うんだけど……今日は一限から講義だからごめんね」
「いいの! 住所は河太郎さんにちゃんと教えてもらったから大丈夫……今回は一人で行ける!」

 シロのあと押しを得たことで、ようやく落ち着いて食事が出来そうだと、私が味噌汁のお椀に口をつけた時、クロは逆に箸を置いた。

(え……?)

 すでに出勤準備を済ませ、スーツ姿になっていたクロは、その上着のポケットからスマホをとり出す。
 どこかへ電話をかけると、ごほんと咳ばらいをして話し始めた。

「あ、黒瀬です。すみません、急用が出来たので今日の半休の予定、やっぱり全休にしてもらえますか」

(えっ!?)

 味噌汁でむせそうになり、慌ててお椀をおいた私を見ながら、クロはネクタイの結び目に指をかけ、それを少し引き下げてネクタイを緩める。

「ええ、手のかかるペットが粗相をして、片づけに時間がかかりそうなので……」

(ペットってまさか私のこと!?)

 目を剥く私の隣で、シロはぶっとふき出し、ごほごほとむせている。
 その背を撫でながら、私はクロを睨みつけたのに、当の本人はそ知らぬ顔だ。

「よろしくお願いします」

 電話を切ると、クロは私に向かって、不機嫌そうに宣言した。

「ということで、今日は俺が同行する」

(そんな!)

 できれば助けてほしいと、私はシロに縋るように目を向けたが、ようやく呼吸が整ったらしい彼には、はははと乾いた笑いを返されるばかりだった。
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