大鳥居横あやかし宅配便~ワケアリ荷物お届けします~

シェリンカ

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19 狭間の場所

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 翌日の休日を、私は本当に半日寝て過ごした。
 午後からも少しごろごろしていたが、さすがにそれで一日が終わってしまうのはもったいないので、周囲を散策してみる。
 思い返せば山の上出張所へ赴任してから、仕事場と社宅以外の場所をうろついてみたことはまだなかった。

 旅館やお土産物屋が並ぶ参道を歩いていると、昨夜あやかしが集まっていた光景を思い出し、背筋が寒くなったが、昼間は当然人間しかいない。
 観光客が楽しそうに足湯に浸かったり、甘味処の店先で赤い毛氈が敷かれた腰かけに座り、お団子を食べたりしている。
 観光地によくある風景だ。

 お土産物屋の呼びこみや、観光客の楽しそうな話し声が賑やかな中、忙しそうに立ち回っている見慣れた着物姿の女性を見つけた。

(あ、多香子さんだ……)

 宿泊客の見送りをしていたらしい多香子さんは、深々と下げた頭を上げて、私の姿を見つけると、いそいそと歩み寄ってくる。
 着物姿なのに、いつもながらとても歩くのが速い。

「瑞穂ちゃん!」

 大きく手を振られるので、私は会釈する。

「こんにちは」
「こんにちは。お散歩?」
「はい。他にすることもないので……」
「いいわねー。仕事が休みの日は、うちを手伝ってほしいくらいだわー」

 言いながら『梅の屋』をふり返り、玄関前にタクシーが到着する様子を見ると、お客さんを迎えるためなのか、また急いで帰っていく。

 去り際に耳もとで、「特に夕方以降はぜひ」と囁かれ、私は笑って見送ったのだが、よくよく考えてみると、少し笑えないような意味を含んでいる気がした。

(待って……まさか『夕方以降』って、狭間の時間からってこと……?)

 シロとクロは昨夜私に、第二の鳥居から大鳥居までは狭間の場所だと教えてくれた。
 人間とあやかしが入り混じって暮らしているとも――。
 そこに住むあやかしたちが、シロとクロのように、昼間は普通の会社員や学生だったりするのならば、私にはもう誰が人間で誰があやかしかの見分けなどつかない。

(多香子さんは? 千代さんは? みやちゃん……は、そもそも神様だった!)

 参道を行き来する誰もが妖しく見えて、私は急いで出張所裏の家へ帰った。
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