もう一度『初めまして』から始めよう

シェリンカ

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5 知らない日常

11

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「せっかくだから、お祭り……一緒に行こうよ」

 私の誘いに、椿ちゃんは長い黒髪をさらさらと揺らして、きっぱりと首を横に振った。

「それはダメ。行ってはならないというお父さまの言いつけを、破るつもりはないの」
「そっか……」
「うん……ごめんね」

 椿ちゃんならばそう答えるだろうと、私は頭のどこかでわかっていた。
 だからこそ彼女は、あの『成宮』の後継ぎなのだ。
 そうなるべくして生まれ、育てられた『お嬢さま』なのだ。

 わかっていても、やはり残念で、固く唇をひき結んだ椿ちゃんの横顔を名残惜しく見ているうちに、私はいいことを思いついた。

(そうだ……!)

 わくわくして先走ろうとする心を必死に抑えながら、私は椿ちゃんにとある提案をする。

「髪……結ってあげる約束をしてたよね? あの髪飾り持ってきた?」

 椿ちゃんならば、誠さんからもらったあの大切な髪飾りを、肌身離さず持ち歩くのではないかと思っていたが、予想通り、恥ずかしそうに腕に提げていた編み籠から、それは取り出された。

「持ってはいるけど……」
「せっかくだから、結ってあげるよ」

 背後にまわった私に、椿ちゃんは慌てた。

「祭りに行くわけじゃないんだし……もういいわよ」
「でもせっかくだから」

 結局は私が押し勝ち、椿ちゃんの長い髪を編み始めたのだが、椿ちゃんも案外、まんざらでもない顔をしている。

「和奏は器用ね……私は全然ダメ……三つ編みだって太さがめちゃくちゃになるもの……」

 編みこみをする私を横目に見ながら、椿ちゃんが呟くので、私は何げなく答える。

「誠さんは器用だよね。椿ちゃんがもらったその髪飾り……手作りでしょ?」

 瞬間、椿ちゃんは大切に手にしていた髪飾りを取り落としそうになるほど、大慌てした。

「そ、そうなの!?」

 その様子が、椿ちゃんへの想いを私が指摘した時の誠さんの反応を彷彿とさせ、私は笑わずにはいられない。

「そうだよ。とても上手だよね」
「そ、そうね……」

 悪いとは思いながらも、焦る椿ちゃんの様子を見るのは楽しかった。
 椿ちゃんも誠さんも、お互いに関して同じような反応をするのだ。
 それは二人の想いが同じであることの証明であり、私はますます嬉しくなる。

(きっとうまくいく……二人の恋がうまくいかない未来なんて……絶対に私が認めない!)
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