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第四章 錆色の迷宮
62:天裁1
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学校の近くに一人で住んでいる美久ちゃんに連絡をしたら、二つ返事でOKを貰えた。
「いいよ、いいよ。いつでもおいでよ。せっかくだから若菜と理香子も呼ぼうっか?」
奇しくも教室以外で、三人のクラスメートと初めて顔を会わせることになった。
「へえ……千紗んちのお弁当、けっこうおいしいじゃん……」
「ほんと。コンビニのより量も多いし、おかずもいろいろ凝ってる……」
「学校に近かったら、毎日買いに行くのにねー」
叔父が持たせてくれた二つの弁当は、四人でわけて食べた。
夜の教室で毎日くり返されている他愛もない会話は、美久ちゃんの狭いアパートへ場所を移しても、変わらない。
「でも毎日こんなにおいしいもの食べてたら絶対太る」
「大丈夫だよ。だって千紗は、全然太ってないじゃん」
「ほんとだ。ははっ」
三人の笑顔を見て会話を聞いてるだけで、私の心も軽くなる。
「毎日買いに来る人もいるよ。それもかなりの人数……」
一瞬心に浮かんだ蒼ちゃんの面影を胸の奥に封じこめ、私は小さく笑った。
「ねえーほらー……やっぱり近かったらよかったのに……!」
「はははっ」
夜の学校が始まるまでのわずかな時間、彼女たちから元気をわけてもらえて本当によかった。
ほんの少し浮上した気持ちで、今日も休まず学校へ向かうことができる。
目と鼻の先にある学校へ向かってアパートの部屋を出る時、美久ちゃんがポツリと呟いた。
「千紗……話を聞くくらいならいつでもできるからね……あまり役にはたたないかもだけど、あたしは口だけは固いよ」
「美久ちゃん……」
「最近、あのイケメン君、学校で見ないね……元気だしなよ……」
あながち外れでもない指摘に、思わず涙が浮かびそうになり、少し慌てた。
いろいろなことが重なり、すっかり自分が嫌になり、沈んでしまった気持ちだが、その原因の一つには、おそらく紅君の姿を見れていないこともある。
『もう会わない』と言われ、仕方がないと思った。
悲しかったが納得した。
だがそれは理解したという意味で、私の目は自然と紅君の姿を探してしまっている。
ちらりと見るだけでいいから、また会えないかとずっと探し続けている。
(本当に……どれだけ特別なんだろう……)
そういう相手に小さな子供の頃に巡り会えた。
辛いことも苦しいことも山ほどあるが、その奇跡にだけは感謝したい。
心から感謝したい。
そう思いながら俯けていた顔を上げ、何気なく目を向けた道路の向こうに、その人を見つけた。
「あれ? ひょっとして噂をすればってやつじゃない……? ねえ千紗? あれって……」
学校の正門の前で、次々と登校してくる生徒たちに時々小突かれながら、笑って立っているのは確かに紅君だ。
私が見まちがえるはずはない。
「学校やめたわけじゃなかったんだね……よかったじゃん」
バチンと私の背中を叩き、美久ちゃんたちはそのまま歩いていく。
紅君が立つ校門へ向かう。
しかし私は先へ進むことができず、じりじりと後退りした。
「千紗……? 何やってんの?」
みんなが私を呼ぶ声に、紅君がゆっくりとこちらをふり返ろうとするので、その仕草を全て見届ける前に、私は踵を返して学校とは反対の方向へ駆けだす。
「えっ? ちょっと千紗! どこ行くのよ!」
三人が慌てる声を背中に聞きながら、走るスピードを上げた。
「いいよ、いいよ。いつでもおいでよ。せっかくだから若菜と理香子も呼ぼうっか?」
奇しくも教室以外で、三人のクラスメートと初めて顔を会わせることになった。
「へえ……千紗んちのお弁当、けっこうおいしいじゃん……」
「ほんと。コンビニのより量も多いし、おかずもいろいろ凝ってる……」
「学校に近かったら、毎日買いに行くのにねー」
叔父が持たせてくれた二つの弁当は、四人でわけて食べた。
夜の教室で毎日くり返されている他愛もない会話は、美久ちゃんの狭いアパートへ場所を移しても、変わらない。
「でも毎日こんなにおいしいもの食べてたら絶対太る」
「大丈夫だよ。だって千紗は、全然太ってないじゃん」
「ほんとだ。ははっ」
三人の笑顔を見て会話を聞いてるだけで、私の心も軽くなる。
「毎日買いに来る人もいるよ。それもかなりの人数……」
一瞬心に浮かんだ蒼ちゃんの面影を胸の奥に封じこめ、私は小さく笑った。
「ねえーほらー……やっぱり近かったらよかったのに……!」
「はははっ」
夜の学校が始まるまでのわずかな時間、彼女たちから元気をわけてもらえて本当によかった。
ほんの少し浮上した気持ちで、今日も休まず学校へ向かうことができる。
目と鼻の先にある学校へ向かってアパートの部屋を出る時、美久ちゃんがポツリと呟いた。
「千紗……話を聞くくらいならいつでもできるからね……あまり役にはたたないかもだけど、あたしは口だけは固いよ」
「美久ちゃん……」
「最近、あのイケメン君、学校で見ないね……元気だしなよ……」
あながち外れでもない指摘に、思わず涙が浮かびそうになり、少し慌てた。
いろいろなことが重なり、すっかり自分が嫌になり、沈んでしまった気持ちだが、その原因の一つには、おそらく紅君の姿を見れていないこともある。
『もう会わない』と言われ、仕方がないと思った。
悲しかったが納得した。
だがそれは理解したという意味で、私の目は自然と紅君の姿を探してしまっている。
ちらりと見るだけでいいから、また会えないかとずっと探し続けている。
(本当に……どれだけ特別なんだろう……)
そういう相手に小さな子供の頃に巡り会えた。
辛いことも苦しいことも山ほどあるが、その奇跡にだけは感謝したい。
心から感謝したい。
そう思いながら俯けていた顔を上げ、何気なく目を向けた道路の向こうに、その人を見つけた。
「あれ? ひょっとして噂をすればってやつじゃない……? ねえ千紗? あれって……」
学校の正門の前で、次々と登校してくる生徒たちに時々小突かれながら、笑って立っているのは確かに紅君だ。
私が見まちがえるはずはない。
「学校やめたわけじゃなかったんだね……よかったじゃん」
バチンと私の背中を叩き、美久ちゃんたちはそのまま歩いていく。
紅君が立つ校門へ向かう。
しかし私は先へ進むことができず、じりじりと後退りした。
「千紗……? 何やってんの?」
みんなが私を呼ぶ声に、紅君がゆっくりとこちらをふり返ろうとするので、その仕草を全て見届ける前に、私は踵を返して学校とは反対の方向へ駆けだす。
「えっ? ちょっと千紗! どこ行くのよ!」
三人が慌てる声を背中に聞きながら、走るスピードを上げた。
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