29 / 42
第四章 初恋の人と複雑な思い
1
しおりを挟む
翌日、ひさしぶりに出勤したアマンダの店で、フィオナがやって来るとすぐに、エミリアは昨夜のアウレディオのおかしな様子を報告した。
「で? 結局、その手紙のさし出し人は誰だったの?」
「さあ……」
そんなことすらわからないのだから、推理のしようもない。
「諦めて、夕方アウレディオと会うのを待ちなさい」
フィオナにも見放されてしまい、自分だけで考える。
少なすぎる情報をうまくつなぎ合わせて何らかの答えを導こうということに集中し、エミリアはその日の仕事中、ずっと上の空だった。
それでも何も思い浮かばず、ついに考えることを放棄する。
(ディオの嘘つき。今日になったって、やっぱりわかんないじゃない)
時刻はすでに終業の時間だった。
マチルダとミゼットはひさしぶりの『今日のアウレディオ様』を見るために、飛ぶような勢いで帰っていった。
しばらく彼女たちに至福の時間を提供したら、エミリアもアウレディオのもとへと向かうことにする。
そうすれば、考えることに一日を費やした謎にもついに答えが貰えるはずだ。
「私たちもそろそろ帰るわよ」
「うん」
フィオナの声に立ち上がり、エミリアは何気なく窓の外に目を向け、夕暮れの街の風景に眩しく目を細めてから、はっと目を見開いた。
(え……?)
大通りの向こうから、一人の人物がこちらへ向かって歩いてくる。
背中には大きな荷物袋を背負い、目の粗い生地の旅行用のマントを着た長身のその人物は、手に持った地図らしきものを眺めながら、時折通りかかる人を呼び止め、どうやら道を尋ねているようだ。
(旅行者……よね……いったいどうしたんだろう?)
その人物からまったく目を逸らせない自分が、エミリアはどうにも不思議だった。
(知っている人? ううん。そんなわけ……ないわ)
青みがかった黒髪は、肩につくほど伸び放題で、着ている服も持っている荷物も全部どことなく薄汚れている。
旅人か。
それとも浮浪者か。
どちらにせよ、大通りを行き交う他の人々とはあきらかに異彩を放っているのに、嫌な気持ちではなく、本当に純粋に目が離せない。
長い前髪の間から、その人物がふっとこちらへ視線を向けた。
夜明け前の空のような、紫色の瞳と目があった瞬間、エミリアはさっと踵を返し、アマンダの店の入り口へ向かって走り出していた。
「どうしたのエミリア?」
フィオナが驚いて問いかけるが、エミリアには答えている余裕がない。
(早く! 早く捕まえないとまたいなくなっちゃう!)
必死の思いで通りに飛び出し、大声で叫んだ。
「アル! アルフレッド!」
黒髪の男はエミリアの姿を見て、遠くからでもはっきりとわかるほど嬉しそうに笑い、それから両手を大きく広げて叫んだ。
「エミリア! ただいま!」
紫の瞳が、喜びをたたえて眩しく輝く。
エミリアは全速力で、彼の腕の中に飛びこんだ。
その後、合流したフィオナとアウレディオと共に、エミリアはアルフレッドと四人で家へ帰ることになった。
「なるほど……初恋の人の登場ってわけね……」
納得したかのように何度もくり返すフィオナの口を塞ごうと、エミリアは大慌てする。
「な、何言ってるのよフィオナ!」
「だって本当のことじゃない」
しかしそんな様子も微笑ましいと、アルフレッドは目を細めるばかりだ。
「いいね。やっぱり若い子って可愛いね」
「あんただってまだ二十歳だろ。まるでオジサンみたいな言い方するなよ……」
エミリアがアルフレッドと感動の再会を果たしてからしばらく感涙に咽んでいたため、時計台の前で待ちぼうけさせられるはめになったアウレディオは不機嫌だ。
「そうだったな、ははは」
そんなことにはお構いなく、アルフレッドはアウレディオの柔らかな髪をぐしゃぐしゃと乱しながら頭を撫でる。
「やめろ」
アウレディオにいくら身を引かれても動じないアルフレッドの笑顔に、エミリアは懐かしい気持ちになった。
(ああ、何も変わっていない……)
アルフレッドはアウレディオやフィオナと同じく、エミリアの幼馴染だ。三つ年上で、エミリアの家の向かいに建つ家に、両親と共に住んでいた。
頼りになる兄貴分に、ちびっ子が三人くっついてまわるという形で、よくこの四人で行動を共にしていた。
三人より先に学校を卒業したアルフレッドが、遠くの街へ行くことになった時、エミリアはまだ九歳で、彼のマントにすがって、『行かないで! 行かないで!』と泣くばかりだった。
ある日ふいにいなくなって会えなくなってしまった母と、この三つ年上の幼馴染を、どこか重ねて見ていたのかもしれない。
『大丈夫だよ、エミリア。俺は絶対に帰ってくる。必ずこの街に帰ってくるからな』
大きな手でエミリアの栗色の頭を叩いて、アルフレッドが行ってしまってから、もう六度の秋が来た。
いつかこの坂道を登って現れるんじゃないかと、部屋の窓から外ばかりを見ていた頃は過ぎ、いつの間にかエミリアにも他に気になる人ができ、新しい生活の中に楽しみを見つけもした。
けれど幼い日に大好きだったアルフレッドは、やっぱり今でもエミリアの中では特別だった。
「しばらくはアウレディオの家に厄介になることにしたんだ。この街に、もう俺の家はないからな……」
並んで歩きながら、アルフレッドは急の帰郷について説明してくれる。
アルフレッドの就職を機に、一家ごと違う街へ移り住んだのだったか。
エミリアの家の前に建っていたアルフレッドの生家跡は、今ではもうただの空き地になっている。
「おば様とおじ様は? 元気にしてらっしゃる?」
フィオナの問いかけに、アルフレッドはいったん口をひき結び、それから改めて答える。
「いや。二人とも亡くなった。だから俺も、今はこいつと同じ天涯孤独の身の上って奴だ」
アウレディオの髪をまたぐしゃぐしゃとかき混ぜながら、アルフレッドはなんでもないことのように笑うので、エミリアは一瞬、何を言われたのだかわからなかった。
「えっ……?」
歩みを止めてしまったエミリアに向かい、アルフレッドはわざわざひき返してきた。
どうにか現実を受け止めようと、必死にパチパチと瞬くうす茶色の瞳をのぞきこみ、この上なく優しく笑う。
「ごめんなエミリア。きっと帰ってくるって約束、守れなくって悪かったって……それが親父とお袋からの、お前への伝言だ」
ポタポタポタとエミリアの頬を伝って大粒の涙が零れ落ちた。
頭の中に次々と、昔の隣人の面影が甦る。
アルフレッドの恰幅のいい母親。
人のいい父親。
みんなみんな優しかった。
母親のいなくなったエミリアを、本当に可愛がってくれた。
「私……私……!」
顔を覆ってしまったエミリアの肩を、フィオナがぎゅっと抱きしめる。
「悪い……泣かせたくはなかったけど、結局黙ってることはできないもんな」
アルフレッドが優しく頭を撫でてくれる。
その全てのぬくもりの向こうから、声が聞こえた。
「エミリア」
めったなことではちゃんと名前を呼んでくれないアウレディオが、自分を呼んでいる。
そのことにハッとし、エミリアは止まらない涙を必死に手の甲で拭って、顔を上げた。
「ごめんなさいアル……一番辛いのは私なんかじゃないのに……!」
涙声のエミリアを見つめるアルフレッドの笑顔は、ますます優しくなる。
「気にするな。エミリアがこんなに会いたがってくれてたんだって、きっと親父たちだって喜んでるさ」
子供の頃に大好きだった人の笑顔は、やはり今も変わらず、エミリアの胸に切ない痛みを与えた。
「で? 結局、その手紙のさし出し人は誰だったの?」
「さあ……」
そんなことすらわからないのだから、推理のしようもない。
「諦めて、夕方アウレディオと会うのを待ちなさい」
フィオナにも見放されてしまい、自分だけで考える。
少なすぎる情報をうまくつなぎ合わせて何らかの答えを導こうということに集中し、エミリアはその日の仕事中、ずっと上の空だった。
それでも何も思い浮かばず、ついに考えることを放棄する。
(ディオの嘘つき。今日になったって、やっぱりわかんないじゃない)
時刻はすでに終業の時間だった。
マチルダとミゼットはひさしぶりの『今日のアウレディオ様』を見るために、飛ぶような勢いで帰っていった。
しばらく彼女たちに至福の時間を提供したら、エミリアもアウレディオのもとへと向かうことにする。
そうすれば、考えることに一日を費やした謎にもついに答えが貰えるはずだ。
「私たちもそろそろ帰るわよ」
「うん」
フィオナの声に立ち上がり、エミリアは何気なく窓の外に目を向け、夕暮れの街の風景に眩しく目を細めてから、はっと目を見開いた。
(え……?)
大通りの向こうから、一人の人物がこちらへ向かって歩いてくる。
背中には大きな荷物袋を背負い、目の粗い生地の旅行用のマントを着た長身のその人物は、手に持った地図らしきものを眺めながら、時折通りかかる人を呼び止め、どうやら道を尋ねているようだ。
(旅行者……よね……いったいどうしたんだろう?)
その人物からまったく目を逸らせない自分が、エミリアはどうにも不思議だった。
(知っている人? ううん。そんなわけ……ないわ)
青みがかった黒髪は、肩につくほど伸び放題で、着ている服も持っている荷物も全部どことなく薄汚れている。
旅人か。
それとも浮浪者か。
どちらにせよ、大通りを行き交う他の人々とはあきらかに異彩を放っているのに、嫌な気持ちではなく、本当に純粋に目が離せない。
長い前髪の間から、その人物がふっとこちらへ視線を向けた。
夜明け前の空のような、紫色の瞳と目があった瞬間、エミリアはさっと踵を返し、アマンダの店の入り口へ向かって走り出していた。
「どうしたのエミリア?」
フィオナが驚いて問いかけるが、エミリアには答えている余裕がない。
(早く! 早く捕まえないとまたいなくなっちゃう!)
必死の思いで通りに飛び出し、大声で叫んだ。
「アル! アルフレッド!」
黒髪の男はエミリアの姿を見て、遠くからでもはっきりとわかるほど嬉しそうに笑い、それから両手を大きく広げて叫んだ。
「エミリア! ただいま!」
紫の瞳が、喜びをたたえて眩しく輝く。
エミリアは全速力で、彼の腕の中に飛びこんだ。
その後、合流したフィオナとアウレディオと共に、エミリアはアルフレッドと四人で家へ帰ることになった。
「なるほど……初恋の人の登場ってわけね……」
納得したかのように何度もくり返すフィオナの口を塞ごうと、エミリアは大慌てする。
「な、何言ってるのよフィオナ!」
「だって本当のことじゃない」
しかしそんな様子も微笑ましいと、アルフレッドは目を細めるばかりだ。
「いいね。やっぱり若い子って可愛いね」
「あんただってまだ二十歳だろ。まるでオジサンみたいな言い方するなよ……」
エミリアがアルフレッドと感動の再会を果たしてからしばらく感涙に咽んでいたため、時計台の前で待ちぼうけさせられるはめになったアウレディオは不機嫌だ。
「そうだったな、ははは」
そんなことにはお構いなく、アルフレッドはアウレディオの柔らかな髪をぐしゃぐしゃと乱しながら頭を撫でる。
「やめろ」
アウレディオにいくら身を引かれても動じないアルフレッドの笑顔に、エミリアは懐かしい気持ちになった。
(ああ、何も変わっていない……)
アルフレッドはアウレディオやフィオナと同じく、エミリアの幼馴染だ。三つ年上で、エミリアの家の向かいに建つ家に、両親と共に住んでいた。
頼りになる兄貴分に、ちびっ子が三人くっついてまわるという形で、よくこの四人で行動を共にしていた。
三人より先に学校を卒業したアルフレッドが、遠くの街へ行くことになった時、エミリアはまだ九歳で、彼のマントにすがって、『行かないで! 行かないで!』と泣くばかりだった。
ある日ふいにいなくなって会えなくなってしまった母と、この三つ年上の幼馴染を、どこか重ねて見ていたのかもしれない。
『大丈夫だよ、エミリア。俺は絶対に帰ってくる。必ずこの街に帰ってくるからな』
大きな手でエミリアの栗色の頭を叩いて、アルフレッドが行ってしまってから、もう六度の秋が来た。
いつかこの坂道を登って現れるんじゃないかと、部屋の窓から外ばかりを見ていた頃は過ぎ、いつの間にかエミリアにも他に気になる人ができ、新しい生活の中に楽しみを見つけもした。
けれど幼い日に大好きだったアルフレッドは、やっぱり今でもエミリアの中では特別だった。
「しばらくはアウレディオの家に厄介になることにしたんだ。この街に、もう俺の家はないからな……」
並んで歩きながら、アルフレッドは急の帰郷について説明してくれる。
アルフレッドの就職を機に、一家ごと違う街へ移り住んだのだったか。
エミリアの家の前に建っていたアルフレッドの生家跡は、今ではもうただの空き地になっている。
「おば様とおじ様は? 元気にしてらっしゃる?」
フィオナの問いかけに、アルフレッドはいったん口をひき結び、それから改めて答える。
「いや。二人とも亡くなった。だから俺も、今はこいつと同じ天涯孤独の身の上って奴だ」
アウレディオの髪をまたぐしゃぐしゃとかき混ぜながら、アルフレッドはなんでもないことのように笑うので、エミリアは一瞬、何を言われたのだかわからなかった。
「えっ……?」
歩みを止めてしまったエミリアに向かい、アルフレッドはわざわざひき返してきた。
どうにか現実を受け止めようと、必死にパチパチと瞬くうす茶色の瞳をのぞきこみ、この上なく優しく笑う。
「ごめんなエミリア。きっと帰ってくるって約束、守れなくって悪かったって……それが親父とお袋からの、お前への伝言だ」
ポタポタポタとエミリアの頬を伝って大粒の涙が零れ落ちた。
頭の中に次々と、昔の隣人の面影が甦る。
アルフレッドの恰幅のいい母親。
人のいい父親。
みんなみんな優しかった。
母親のいなくなったエミリアを、本当に可愛がってくれた。
「私……私……!」
顔を覆ってしまったエミリアの肩を、フィオナがぎゅっと抱きしめる。
「悪い……泣かせたくはなかったけど、結局黙ってることはできないもんな」
アルフレッドが優しく頭を撫でてくれる。
その全てのぬくもりの向こうから、声が聞こえた。
「エミリア」
めったなことではちゃんと名前を呼んでくれないアウレディオが、自分を呼んでいる。
そのことにハッとし、エミリアは止まらない涙を必死に手の甲で拭って、顔を上げた。
「ごめんなさいアル……一番辛いのは私なんかじゃないのに……!」
涙声のエミリアを見つめるアルフレッドの笑顔は、ますます優しくなる。
「気にするな。エミリアがこんなに会いたがってくれてたんだって、きっと親父たちだって喜んでるさ」
子供の頃に大好きだった人の笑顔は、やはり今も変わらず、エミリアの胸に切ない痛みを与えた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる