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夏の章
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相変わらずひとつの布団で真珠と篤宏は向かい合って寝ている。
一式揃えるとそれなりの金額の掛かるものを用意しろとは言いにくく、かといって自分で買って送りつけるのは更におかしい気がして、いつも篤宏と寄り添って眠っているのだ。
静かな暗闇の中で互いにたわいもないことを話し、そのうちどちらからともなく欠伸をもらし始めて、気付いたら朝になっている。そんなことが僅かな間に当たり前になっていた。
そして、朝になると真珠は必ず篤宏の胸に顔を埋めていて、腕枕までされていることがあった。こればかりは今でも多少動揺してしまう。
「君、寝てるとき必ず僕の胸に顔を埋めてるよね」
その朝も伸びをしながら起き上がった篤宏に指摘されて、布団の上に座ったままで真珠は頭を抱えていた。
「知らない。少なくともわざとじゃない」
「じゃあ眠りやすい様にしてるってことなんだろうなあ。君がそれでよく眠れてるなら問題ないんだけどね。僕も温かいし」
突然篤宏は、はっとしたように真珠に真顔を向けた。
「もしかして、僕が巨乳だから?」
「……俺は概ねあんたに対しては頭がいいと評価してるつもりだが、時々馬鹿じゃないかと思うときがある」
「まあ、巨乳については冗談だけども。僕は無意識に甘えられてるということかな」
「物心ついてから誰かと一緒に寝たことはないから、よくわからない」
少し拗ねたような真珠の物言いに、篤宏は一度沈黙した。
「なるほどね。何となくわかった気がする。まあ、僕は気にしないからさ、僕が抱き枕にしてもその時は許して欲しいな」
「……結構きついぞ、あんたのホールド」
「愛用してた抱き枕がね、去年とうとう駄目になっちゃったんだよね。僕も最近、無意識に抱きしめて寝るものに飢えてたのかもしれない。
その抱き枕、最近へたれて来たなあと思ってたんだけど、ある日外側のカバーを洗濯しようとしたときに中袋が破れてマイクロビーズがぶわーっと散らばってさ……。あれは辛かったなあ。掃除が、だけど」
篤宏には何かを抱えて寝る癖があると、それで初めて真珠は知った。癖ならば仕方がないが、抱き枕代わりにされているのだとなると思うと厳しいものがある。
「……新しい抱き枕を買え」
「ところが、その抱き枕が通販されてないんだよ。買ったのも大分前の話だし、街に出た時に同じものを偶然見つけられても、ちょっと持ち帰るのに躊躇する大きさだしね。理想の抱き枕になかなか出会えないんだ」
「なら、いっそのこと彼女でも作った方がいいんじゃないのか」
真珠の提案に、篤宏はげっそりとため息をついた。
「僕、もてるんだよね」
「だろうな」
当たり前のことを当たり前に言った。篤宏はもちろんそのつもりだろう。
だけど、これほど聞いていて呆れる言葉もそうそうないなと、真珠はどこか呆れた気持ちで篤宏の言葉に頷いた。
「この村にも若い女の子はいるんだけど、アプローチされても、気づかない振りしてのらりくらりとかわすのって結構大変なんだよ。ほら、狭いコミュニティの中で付き合ったり別れたりするといろいろ気まずくなるだろう。それを乗り越えてまで付き合いたいとは思わないな」
「別れること前提なのか」
「実際、今まで付き合った女の子とは全て別れてきたわけだからね」
真珠は思わず唸った。この村の老人達のアイドル的存在であり、それ以外の人達からも親しまれているコミュニケーション能力の権化のような篤宏が、まさかそんな苦労を抱えているとは思ってもみなかった。しかし、聞く人間によっては嫌味に聞こえるかもしれないが、いかにも篤宏らしい悩みだ。
一式揃えるとそれなりの金額の掛かるものを用意しろとは言いにくく、かといって自分で買って送りつけるのは更におかしい気がして、いつも篤宏と寄り添って眠っているのだ。
静かな暗闇の中で互いにたわいもないことを話し、そのうちどちらからともなく欠伸をもらし始めて、気付いたら朝になっている。そんなことが僅かな間に当たり前になっていた。
そして、朝になると真珠は必ず篤宏の胸に顔を埋めていて、腕枕までされていることがあった。こればかりは今でも多少動揺してしまう。
「君、寝てるとき必ず僕の胸に顔を埋めてるよね」
その朝も伸びをしながら起き上がった篤宏に指摘されて、布団の上に座ったままで真珠は頭を抱えていた。
「知らない。少なくともわざとじゃない」
「じゃあ眠りやすい様にしてるってことなんだろうなあ。君がそれでよく眠れてるなら問題ないんだけどね。僕も温かいし」
突然篤宏は、はっとしたように真珠に真顔を向けた。
「もしかして、僕が巨乳だから?」
「……俺は概ねあんたに対しては頭がいいと評価してるつもりだが、時々馬鹿じゃないかと思うときがある」
「まあ、巨乳については冗談だけども。僕は無意識に甘えられてるということかな」
「物心ついてから誰かと一緒に寝たことはないから、よくわからない」
少し拗ねたような真珠の物言いに、篤宏は一度沈黙した。
「なるほどね。何となくわかった気がする。まあ、僕は気にしないからさ、僕が抱き枕にしてもその時は許して欲しいな」
「……結構きついぞ、あんたのホールド」
「愛用してた抱き枕がね、去年とうとう駄目になっちゃったんだよね。僕も最近、無意識に抱きしめて寝るものに飢えてたのかもしれない。
その抱き枕、最近へたれて来たなあと思ってたんだけど、ある日外側のカバーを洗濯しようとしたときに中袋が破れてマイクロビーズがぶわーっと散らばってさ……。あれは辛かったなあ。掃除が、だけど」
篤宏には何かを抱えて寝る癖があると、それで初めて真珠は知った。癖ならば仕方がないが、抱き枕代わりにされているのだとなると思うと厳しいものがある。
「……新しい抱き枕を買え」
「ところが、その抱き枕が通販されてないんだよ。買ったのも大分前の話だし、街に出た時に同じものを偶然見つけられても、ちょっと持ち帰るのに躊躇する大きさだしね。理想の抱き枕になかなか出会えないんだ」
「なら、いっそのこと彼女でも作った方がいいんじゃないのか」
真珠の提案に、篤宏はげっそりとため息をついた。
「僕、もてるんだよね」
「だろうな」
当たり前のことを当たり前に言った。篤宏はもちろんそのつもりだろう。
だけど、これほど聞いていて呆れる言葉もそうそうないなと、真珠はどこか呆れた気持ちで篤宏の言葉に頷いた。
「この村にも若い女の子はいるんだけど、アプローチされても、気づかない振りしてのらりくらりとかわすのって結構大変なんだよ。ほら、狭いコミュニティの中で付き合ったり別れたりするといろいろ気まずくなるだろう。それを乗り越えてまで付き合いたいとは思わないな」
「別れること前提なのか」
「実際、今まで付き合った女の子とは全て別れてきたわけだからね」
真珠は思わず唸った。この村の老人達のアイドル的存在であり、それ以外の人達からも親しまれているコミュニケーション能力の権化のような篤宏が、まさかそんな苦労を抱えているとは思ってもみなかった。しかし、聞く人間によっては嫌味に聞こえるかもしれないが、いかにも篤宏らしい悩みだ。
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