【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!

加藤伊織

文字の大きさ
107 / 154

107 工房の値段問題と「魔女の軟膏」

「テオ、なんであんなに丁寧な言葉でスラスラと話せるの!? そんな話聞いてないし、いつもの様子からは想像も付かなかったんだけど!」

 工房に帰り着いた途端、カモミールはテオに詰め寄っていた。
 本当だったら、侯爵邸を出たところで言いたかった言葉である。しかしテオのことに関してはおおっぴらにできないことが多すぎて、なんとか工房まで我慢した。

 貰ってきた鉢を窓辺に置き、テオはむしろ不思議そうな顔でカモミールを見ている。彼にとっては当たり前のことだったようだが、彼の非常識に今まで散々気を揉んできたカモミールにとっては納得できない。 

「そりゃ、俺を形作ってるのは過去の工房主や出入りしていた全ての錬金術師なわけだからな。中には貴族の三男で家を継げずに錬金術師になったなんて奴もいるんだよ。
 普段は気にしてねえけどな、一番表に出やすいテオドールの性格や態度以外にも、その気になりゃああいうこともできるってこった」
「う、羨ましい!」

 さすがは千年目の錬金釜である。彼はその中に膨大な数の人物像を収めているのだろう。

「テオさんが丁寧な言葉でしゃべったんですか?」

 信じられない、と言った顔でキャリーがカモミールに尋ねる。カモミールはキャリーなら共感してくれると、そちらに愚痴を吐く。

「そうなの! 結局白アロエが種しか見つからなくて、もしかしたらと思って侯爵邸を訪ねて温室を見せていただいたらそこにあったんだけどね。そこで侯爵様がいらして、テオが『わたくしはテオ・フレーメ。アトリエ・カモミールで働く錬金術師でございます』とか言い出しちゃって!」
「えええええ、それはない……侯爵様には怪しまれなかったんですか?」
「テオは何ひとつ嘘は言ってなかったし、私も本当のことだけをごまかしながら話してきたわ。お辞儀とかもちゃんとしてたのよ。私なんて特訓が必要だったのに!」
「テオさん、常識的なことができるなら普段からそういう振る舞いをしてくださいよ」

 テオに向けるキャリーの目が冷たい。カモミールという制止役がいない間、キャリーはかなりの迷惑を被ったのだろう。

「やなこった。肩が凝る。本当に必要なときだけやればいいんだよ」
「その態度! そういうところですよ、ほんと!」

 どっと精神的に疲れたのか、キャリーが書類を広げたテーブルに突っ伏した。疲れているところに悪いが、カモミールはキャリーに報告しておかなければならないことがある。

「突然だけど、明日侯爵様がこの工房にいらっしゃることになったの。以前侯爵邸で練り香水を作って見せたことがあるんだけど、侯爵様がそれで領内の産業をもっと視察したいと思われたそうなのよ。
 で、薬草をいろいろ分けていただいた対価として、この工房の仕事の様子をお見せすることになって。石けんに興味をお持ちだから、明日いらっしゃるそうよ」
「急ですね!? この工房の状態でお見せして大丈夫なんですか?」

 確かにそれはカモミールにとっても引っかかるところではあった。しかし、唸りながら室内を見回してみても、「ボロくて狭い」ということ以外にはこれといってわかりやすい欠点などがない。掃除も行き届いているし、素材はきちんと仕分けされて収納されている。

「むしろ、国内でも屈指の話題性と性能を誇るヴィアローズの品々が、こんなボロ工房で作られているというのをお見せするべきなのかな、と思ったのよね……」
「ああー、うまいこと補助金をせしめてもっと大きい工房に移転するとかですか?」

 キャリーの推測にカモミールは苦笑した。そこまでのことはさすがに考えていない。その発想はさすがキャリーというところだろう。

「まさか。綺麗で華やかなものを扱っていても、庶民の実情はこんなものだということをお見せする機会だと思ったの。だからいつもの私たちでいいのよ。侯爵様とお付きの方には丁寧な言葉を使うべきだと思うけど、侯爵様がいらっしゃるからといって私たち同士はいつも通りに会話するべきだし。
 むしろ、今の私の身の丈に合った工房はここだと思うのよね。独立したばかりで、有力な支援者がいたわけでもないのに物件を買えたこと自体が凄いと思わない?」
「それはまあ、確かに。そういえばここって格安で買ったと聞きましたけど、いくらだったんですか?」
「200万ガラムよ。元はもっとしたんだけど、ヴァージルが交渉してくれて値下げして貰ったの。元はいくらだったかなあ……確か350万だった気がする。半額近くになった! って驚いたのを憶えてるから」

 カモミールの言葉にキャリーが真顔を通り越して、「頭おかしいんじゃないですか!?」とでも叫びだしそうな表情になっている。

「おかしい……それおかしいです。いくら城壁近くでボロとはいえ、そんな値引きないですよ。そもそも、土地の値段ってものが決まってるんですから。ここだったら600万くらいが土地だけ買ったときの相場で、多分350万になってたのはこのボロ工房に価値がなくて取り壊さないと新たに家を建てたりできないせいですよ。取り壊し代として250万値引きされて350万になってるんです。お隣のエノラさんの家なんかは、家ごとまるっと買おうとしたら3000万くらいするはずです」

 キャリーの詳しい説明に、今度はカモミールが叫びそうになる番だった。
 城壁に囲まれているカールセンは市内の土地が限られているので3階建て以上の家が多く、比較的新しい建物が多い北側の区域などは確かに5階建てなどでしっかりした造りのアパートメントが多い。

「えええ……でも実際に200万で買ったのよー?」
「いえ、そこのところは別に私も疑ってませんよ。カモミールさんだって5年で300万以上お金を貯めたのは凄いと思いますしね。住み込み弟子だとお給料が凄く安かったり、そもそも出なかったりすることもあるじゃないですか」
「それはそう。私もロクサーヌ先生の家に住んでたときは『技術を教わる代わりにお給料は20歳までは出ない』って約束だったし。家賃を払うのと相殺されてたような感じよね。
 でも、ミラヴィアの純利益に関しては私の貢献分として4割貰ってたからお金を貯められたの」
「それはロクサーヌさんが良心的だったんだと思います。……というか、ヴァージルさんですよ。あの人一体どういう手を使ってそこまで値引きさせたんでしょうね。もしかして、担当者の弱みでも握ってたりして」
「あーあーあーあーあー!」

 突然テオが大声を出し、カモミールとキャリーは思わずそちらを振り向いた。
 テオは妙に慌てたような顔で頭を抱えており、彼らしくなく悩んでいるように見える。

「そういうことか……いや、なんでもねえ。おまえらは気にすんな」
「テオ、何か知ってるの?」
「いや、家の値段のことなんか知るわけねえだろ。それより、白アロエが手に入ったんだから軟膏作るぞ」
「あっ、そうだったわね」

 カモミールはついキャリーとの話に夢中になっていたが、テオの方は黙々と準備をしていたようで、テーブルの上には秤やフラスコなどが並んでいる。

「ヴァージルさんは交渉の達人……? もしうちを売るときが来たらお願いしなきゃ」

 難しい顔をしたまま、ぼそっとキャリーが呟いた。その内容が不穏だ。

「ええっ、キャリーさんの家ってそんなに厳しいの? というか、まさかそれで土地の価格とかに詳しかったの?」
「今すぐ家を売らないと、って状況ではないですね。父がギルド長の仕事を辞めたりしなければの話ですが。でもあの人事あるごとに辞めたい辞めたいって言うので、脅す材料として家の価格を調べたのは確かです。『辞めてもいいけどその時にはこの家売るよ?』って値段突きつけてやろうと思ってるので」

 事務仕事に関して才があるキャリーのやることだ。比較対象としてもいくつもの地域の価格を調べ、「もしその後に改めて家を買おうとしてもこうです」と突きつけるつもりだったのだろう。薄ら寒い話である。

「もうちょっとしたら、キャリーさんのお給料も上げられると思うから……そうね、そのためにまずはこの薬だわ」

 従業員のためにも、ヴィアローズを盛り上げるのが工房主の仕事だ。カモミールはテオとの作業に集中することにして、彼を手伝い始めた。

「癒やし草の根、リコリスの根、ムラサキ草の根、白アロエの葉。そしてラベンダーの花は取ってくるのをすっかり忘れてたからこれでいい」

 テオがラベンダーの花の代用として示してきたのはラベンダーの精油だ。錬金術師が実験中に薬品を手に浴びて火傷し、近くにあったラベンダーの精油を「とりあえず水の代わりに」と傷に掛けたところ、傷の治りがいつもよりも早かったという。
 それを疑問に思った彼がラベンダー精油について研究を始め、殺菌効果と傷の治りを早くする効果が確認された。特に火傷に効くと有名なのはこのためかもしれない。

「ああ、なるほど。ラベンダーの花を材料にするって、精油の成分を使いたいからなのね。だったら最初から精油を使った方が合理的かも」
「これは『魔女の軟膏』と呼ばれてたレシピだ。錬金術師の隆盛前には『魔女』が医術やまじないを担っていたのは知ってるな?」

 魔女とは、村などの共同体の中でも魔法が使える女性が負っていた特別な役割だ。魔力を使って薬を作り、あるいは様々なまじないを行っていた。
 現代では男女問わず魔法を使える人間そのものがほぼおらず、魔女の役割のうち医術分野に関しては錬金術が引き継いだ形になっているので、「錬金術が魔女を葬った」とも言われている。

 それは錬金術の歴史を学ぶ上でかなり最初の内に出るところなので、当然カモミールも知っている。けれど、魔力無しのカモミールは今まで魔女に興味を持つことがなかった。

「魔女の軟膏……てことは、魔女時代から続くレシピなの?」
「それもあるし、魔女の名前が消えなかったのは、作るのに魔力消費が多いからだ。おそらく今の『魔力持ち』程度の錬金術師じゃ作れねえよ」

 テオがレシピについて詳しく説明もせず、さくさくと進めているのはそのためだろう。テオしか作れないものならば、カモミールに教えても仕方ないのだ。

 白アロエは分厚い皮をナイフで剥き、中の葉肉だけを取り出して使っている。根っこ類はポーションの時と同じように細かく刻まれていた。
 フラスコに少なめの水が入り、その中に刻まれた根が投入されて成分が煮出される。ここまではポーションと工程的には似ている。けれどその後はムラサキ草の色が抜けたところで一度煮汁だけを漉してビーカーに移し、それが三分の一程になるまで煮詰められた。
 かなり濃い色の紫の液体ができあがったが、テオはそこに白アロエの葉肉とラベンダー精油を入れ、ガラス棒でゆっくり混ぜ始めた。すぐに色が変わり始めたのを見ると、魔力はここで注ぎ込んでいるのだろう。

 やがて、ビーカーの中身はねっとりとした薄緑色のものに変わっていた。白アロエの与える影響が余程強いのか、剥いた皮の色とよく似ている。

「よし、できた」
「試していい?」

 魔力消費が多くて現代の錬金術師では再現できない「魔女の軟膏」。それがどれほどの効果を持っているのか、カモミールは気になって仕方がなかった。ナイフで左手の指をピッと切って、傷から血が流れるのを確認すると、へらですくい取った軟膏を傷口に塗ってみる。
 驚いたことに、塗っただけで出血が止まり、痛みも消えた。それを見たキャリーも嫌そうな顔をしている。

「効き過ぎ……」
「これも、絶対外に出しちゃいけない奴ですよ」
「古傷を消すにはこのくらい強力じゃねえと効かないんだよ」

 まだ傷は残っているが、どのくらい治りが早いかも要検証だ。
 けれど、カモミールは魔女の軟膏に、「これはそのまま使っては不自然なまでの効果がある薬」というラベルを心の中で貼ることにした。
感想 5

あなたにおすすめの小説

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

大自然を司る聖女、王宮を見捨て辺境で楽しく生きていく!

向原 行人
ファンタジー
旧題:聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。 土の聖女と呼ばれる土魔法を極めた私、セシリアは婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡された上に、王宮を追放されて辺境の地へ飛ばされてしまった。 とりあえず、辺境の地でも何とか生きていくしかないと思った物の、着いた先は家どころか人すら居ない場所だった。 こんな所でどうすれば良いのと、ショックで頭が真っ白になった瞬間、突然前世の――日本の某家電量販店の販売員として働いていた記憶が蘇る。 土魔法で家や畑を作り、具現化魔法で家電製品を再現し……あれ? 王宮暮らしより遥かに快適なんですけど! 一方、王宮での私がしていた仕事を出来る者が居ないらしく、戻って来いと言われるけど、モフモフな動物さんたちと一緒に快適で幸せに暮らして居るので、お断りします。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています