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ディル①
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「婚約破棄? 何それ。美味しいの?」
目の前の女はそう言うと無心に菓子を貪り食った。
「やめろ! それ以上食うとまた、ドレスが破れるぞ」
俺は女からデザートの皿をとりあげた。
「何すんのよ! クソ王子!」
キッとクリームを口の端にくっつけたまま、俺をにらみつける女。
こいつはリアン。
俺の幼馴染みで、婚約者。
だった。
さっきまでは。
「あぁ!? わかったよ。じゃあとっとと隣国へ行ってもらうからな」
「……ん?」
ようやくリアンもいつもの俺とは様子が違うことに気がついたらしい。
「どうしちゃったのよ、ディル?」
「お前、本当に気づかなかったのか?」
「……?」
「あれだけ隣で親父たちが騒いでただろう?」
先刻まで隣のフロアでは賑やかな舞踏会が開催されていた。
今はそれが嘘のように静まり返っている。
伯爵令嬢でありながら社交嫌いなリアンは挨拶が終わるとこの隣の控え室にこもってしまう。
いつものことだ。
「なんのこと?」
キョトンとした顔でリアンは俺を見つめる。
「お前はもう、トゥーレ伯爵令嬢じゃないんだよ」
俺は右手をうちならした。
「殿下」
扉から廊下に控えさせておいた衛兵が雪崩れ込んでくる。
「こいつを馬車に放り込め!」
「ちょっと──どういうことよ! ディル!」
訳がわからないといったまま、両腕をがっしりとつかまれてリアンは連行されていった。
……とりあえず、これでいい。
俺は重い足取りでまだ舞踏会が開催されている大広間へ戻った。
目の前の女はそう言うと無心に菓子を貪り食った。
「やめろ! それ以上食うとまた、ドレスが破れるぞ」
俺は女からデザートの皿をとりあげた。
「何すんのよ! クソ王子!」
キッとクリームを口の端にくっつけたまま、俺をにらみつける女。
こいつはリアン。
俺の幼馴染みで、婚約者。
だった。
さっきまでは。
「あぁ!? わかったよ。じゃあとっとと隣国へ行ってもらうからな」
「……ん?」
ようやくリアンもいつもの俺とは様子が違うことに気がついたらしい。
「どうしちゃったのよ、ディル?」
「お前、本当に気づかなかったのか?」
「……?」
「あれだけ隣で親父たちが騒いでただろう?」
先刻まで隣のフロアでは賑やかな舞踏会が開催されていた。
今はそれが嘘のように静まり返っている。
伯爵令嬢でありながら社交嫌いなリアンは挨拶が終わるとこの隣の控え室にこもってしまう。
いつものことだ。
「なんのこと?」
キョトンとした顔でリアンは俺を見つめる。
「お前はもう、トゥーレ伯爵令嬢じゃないんだよ」
俺は右手をうちならした。
「殿下」
扉から廊下に控えさせておいた衛兵が雪崩れ込んでくる。
「こいつを馬車に放り込め!」
「ちょっと──どういうことよ! ディル!」
訳がわからないといったまま、両腕をがっしりとつかまれてリアンは連行されていった。
……とりあえず、これでいい。
俺は重い足取りでまだ舞踏会が開催されている大広間へ戻った。
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