エイデン~一度死んだ俺はもう一度世界を旅する~

咲夜

文字の大きさ
12 / 42

1-11

しおりを挟む
「痛たいって言ってる!」

「なにすんだよ、せっかく親切心でやったのに」

「…どこが親切なんだよ」

怪力でやりやがって、痛かったのかどうかさえも分からなくなった。「もう少し自分の怪力度合いを知れ!」と視線を送ると腰をさする。まだまだある藁の山になんだか腰がさらに重くなった気もする。

そのとき、陽気な笑い声が後ろから響いてきた。
いきなり現れた声に驚くように振り向くと存外近くに人がたっていた。

「本当に仲がいいのですね。」

「ジュナファーさん」

そこにいたのは白いひげを生やした依頼主だった。緑色の背景に似合わず、黒の衣服をまとって何だかまるで喪に服しているようなそんな恰好だった。

「…煩くしてすまない。」


ユウリは少し肩をすくめた。

「楽しいですからいいですよ」

ジュナファーは相変わらず笑いながら、首を振った。

「ユウリこっち向いて」

ジュナファーが来たというのにシュウはいないも同然のようにユウリに声をかけた。
まだ汚れているユウリに向き直って、細かい塵をつまんで地面に落とし始めた。ユウリはその行動に少し慌てると、シュウの腕をつかんで動きを止める。

「おいっ。シュウどういうつもりだ?話している人を無視してはいけない——」

「——ユウリ、こいつ何かがおかしい。」

「え?」

遮るように口を開いて、ほぼ音がないに等しいくらい小さな声でささやいた。シュウはユウリよりも繊細なセンサーでも持っているのか、何かを感じ取ったらしい。

だからユウリは、今は追及すべきでないと判断した。理解したと合図するようにシュウの小指から手をつかみなおして離させた。

「——で、ジュナファーさんは独り暮らしですか?」

今さっきまでの謎動作をあたかもなかったかのように、シュウは堂々と振り返ると、杜撰な態度でそう言った。
ユウリはシュウのその言葉に、事前に確認した依頼書を思い出した。
事細かな情報まで、書かれたあの依頼書は冒険者にとっては大切な情報網だ。たしか家族がいるって記載だった気がすると記憶をさかのぼる。しかし、見渡す限り人の気配がしない。

記憶力には自信があるからジュナファーの家族構成も間違いなく覚えている。

シュウはユウリが口を開こうとしたその瞬間に袖をつかむ。小指に合図を送ると、ユウリは開きかけた口を閉じいて、代わりにシュウが開いた。

「…家族はいると聞いていたのですが、情報に行き違いがあったみたいですね?」

ジュナファーが答える間にシュウはそう言う。

「…何のことですか?家族なんて僕にはいませんよ?」

「…?」

ジュナファーは一瞬だけ表情を変えるが、その顔がいったい何を思った顔なのかが分からない。

ユウリは思っていた反応が違って、シュウに「話さないで」と合図があったのに、思わず「え、妻いない?」と、ポロっと声を漏らした。

それはユウリも無意識で、シュウが微かに笑ったのを感じてユウリは焦ったように口をつぐんだ。

「そうでしたか。それじゃあぼくたちは誰かと勘違いしていたようです、ずいぶん経営維持も大変だったんでしょうね、」

「…こんなに広い農場で一人きりなんてさみしいですけれどね。」

後ろにぽつんと立つ家屋を見ると眉を下げた。

「ところでお二人は昔から仲がいいんで?」

ジュナファーは話を変えるようにユウリたちに質問を振った。

「……いいえ、僕たちはまだ会って数週間しかたっていないんですよ」

シュウの物言いにその通りだとうなずく。

「そうでしたか…。私が昔助けられた恩人の方にそっくりだったものですから、そうかと思ったんですけれどね。」

ジュナファーはそういうと目を細めて笑う。ユウリはその話が気になったみたいで少し体を前のめりにする。しかしシュウがそれを制止するように後ろから引っ張るものだから不満で微かに眉を寄せたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

分厚いメガネ令息の非日常

餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」 「シノ様……素敵!」 おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!! その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。 「ジュリーが一番素敵だよ」 「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」 「……うん。ジュリーの方が…素敵」 ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい 「先輩、私もおかしいと思います」 「だよな!」 これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話 ※長くなりそうでしたら長編へ変更します。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

ヒーロー組織のサポートメンバーになりました!

はちのす
BL
朝起きたら、街はゾンビだらけ!生き残りたい俺は、敵に立ち向かうヒーロー組織<ビジランテ>に出逢った。 ******** 癖の強いヒーロー達の"心と胃の拠り所"になるストーリー! ※ちょっとイチャつきます。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...