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Bastard & Master 【13】
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【13】
雨……?
眠りにつこうと、光の精霊を休ませたクリステルは、ハウスの中が暗くなって初めて、雨が降っている事に気付いた。
ネリーの事が気に掛かった。
彼女のハウスが未熟である事は、クリステルの目には明らかであった。
大気の壁の層が整っておらず、強風や雨にどれだけ耐えられるか、疑わしいシロモノであった。
傍らで寝息を立て始めたばかりのレオンを起こさないように、クリステルはそっと、寝床から起き上がり、ハウスを出た。
闇の中、思ったより激しい雨音に混じって、すすり泣くような声が聞こえる。
クリステルは濡れるのも構わず、崩れかけて空間が歪んで見えるハウスに、静かに歩み寄った。
ハウスはあちこち穴が開いているらしく、所々からネリーの姿が覗けた。
ネリーは、ずぶ濡れになって膝を抱えて泣いていた。
「ネリー……」
そっと声を掛ける。
ぴくり……と肩が跳ね、泣き濡れた瞳がクリステルを見上げた。
「何度やっても駄目なの。何度も作り直したのに……すぐに雨漏りするの」
ぐずぐずと泣きながら、ネリーが悔しそうに訴える。
クリステルは手を差し伸べた。
「風邪をひいてしまいますよ」
囁くような優しい声に、ネリーは、うわぁん、と泣き声を上げて、クリステルの胸に飛び込んで来た。
一瞬、驚いたクリステルであったが――そっと、小さい身体を抱き締めてやる。
「私も、初めは上手く作れませんでしたよ」
そう言いながら、クリステルは冷たくなっているネリーの髪を撫でた。
ネリーは、クリステルの腕の中で、その暖かさに泣けた。
未熟な自分が悔しくて、情けなくて……
雨は冷たくて、心細くて……とても寂しかったのだ。
そんな時に差し伸べられた手の優しさに、縋り付かずにはいられなかった。
強がってはいても、ネリーはまだ十六歳の少女であった。
クリステルのハウスへ招き入れられたネリーは、その想像もしなかった作りに呆然とした。
大きく描かれたサークルは、びっしりと柔らかな緑が覆い、天井は高く、雫のひとつも漏れて来ない。乾きすぎない空気は暖かく、プティがゆったりと空間を漂っている。
クリステルは荷物の中からタオルを取り出して、ネリーに手渡した。そのまま、かまどの側へ寄る。
「炎の精霊よ……」
小さくそう呟いただけで、かまどに火が点いた。
名乗りどころか、杖さえ手にしていないクリステルに、ネリーは目を見張った。
「火の側へいらっしゃい。身体を暖めなければ……」
言いながら振り返ったクリステルは、困ったような顔をした。
ネリーはタオルを手にしたままで、雫を拭う事もせず、ただこちらを凝視している。
クリステルはネリーの手を取り、かまどの側まで連れて来ると、また荷物の所からブランケットを持って来た。
「服を脱いで、これに包まって、火の側で暖まるのですよ」
言い置いて、クリステルは杖を手に取った。
「水の精霊よ……」
言いながら、杖の紫の石でポットの縁を、ちょん、と突付く。
石から水が滴り、ポットに満たされ、クリステルはそれを火に掛けた。
手際よく働くクリステルを眺めながら、ネリーはのろのろと服を脱いで、毛布に包まった。
レオンの言った通りであった。
クリステルは名乗りを上げる事もなく、しかし精霊は、打てば響くように反応を示す。
認めたくなかった実力の違いを、はっきりと自覚しなければならなかった。
重い気分で膝を抱え、かまどの炎を見つめていると、いつの間にか着替えたクリステルがやって来て、先程から温めていたカップにポットの湯を注いだ。
念入りに掻き混ぜ、ほんの数滴のお酒を落として――そうして差し出されたカップにはチョコレートが甘い香りの湯気を上げていた。
「暖まりますよ」
そう言ったクリステルの表情は、僅かに微笑を浮かべていて――
「ありがとう……」
カップを受け取りながら、ネリーは初めて自分に向けられた微笑に見惚れていた。
身体がぽかぽかと温まり、睡魔が両腕を広げてネリーを包み込もうとしていた。
眠りに落ちる間際、ネリーは呟くような声で言った。
「もし……先にあなたに出会っていたら……あたしはきっと、あなたに憧れて憧れて……弟子入りさせて下さいって、追っかけ回したんだろうな。だって……あなたは……あたしが思い描いているスピリッツ・マスターの姿そのままだったもの」
ネリーの呟きを、クリステルは無言で聞いていた。
しかし、落とした照明の中でも、きっとクリステルは穏やかな眼差しでこちらを見ているのだろう。
ネリーはそれを感じて、寝返りを打ち、クリステルに背を向けた。
「でも……先に出会ったのは、レオンだった……」
それが、ネリーの出した結論であった。
「なぁ……なにがあった?」
レオンがそっと、クリステルに耳打ちした。
翌朝、レオンが目覚めると、ハウスの中にネリーがいた。
朝食の準備をしている今も、ネリーは黙々と働いている。
しかし、昨日のように毒は吐かないものの、何だか仏頂面で、話し掛け辛い空気を全身にまとっている。
「昨夜、雨が降ったんです。彼女のハウス、持ち堪えられなくて……ずぶ濡れになっていたので、こちらへお呼びしたのです」
クリステルも小声で説明する。
ふぅん……と頷いたレオンに、クリステルは慌てて付け足す。
「あの……彼女も屈辱でしょうから、その話は持ち出さないで下さいね」
レオンは肩を竦めた。
「わかってる。揉め事はご免だ」
「あの~……食事の仕度、できたんだけど」
ネリーが向こうから呼んだ。
二人は速攻で振り返る。
「手伝って下さって、助かりました」
「メシだメシ……」
同時に声に出して、ばつが悪そうに顔を見合わせる。
ネリーは嫌味な溜息をついた。
「あのさ……食事の前に、言っておきたいんだけど……」
「なんですか?」
「なんだ?」
また声がハモる。ネリーはもう一度、溜息をついた。
「あたし、つまんない喧嘩吹っ掛けるのは辞めたから。貴族の術師を嫌いだってのは、今でもそうだけど、でも、実力で張り合っても敵わないって事はよくわかったし……それは、これからあたしも勉強すれば、何とかなるかも知れない事だし」
ネリーの言葉に、ふたりはただ頷く。
レオンに至っては、心底ほっとした表情だ。
ネリーはクリステルを真っ直ぐに見た。
「でも、これだけははっきりしてる。あたしはレオンが好き。だからあなたが嫌い」
レオンが咳き込んだ。
「なっ……なんでそうなるんだよっ! お前、そりゃ、どーゆー理屈だぁ?」
「本気で訊いてるの?」
ネリーが眉をひそめ、逆に訊き返す。
「当たり前だ。お前、言ってる事、滅茶苦茶だぞ」
レオンの言葉に、ネリーはニンマリと笑った。
「何だ、自覚がないなら、言った方が有利じゃん。一歩リードぉ」
レオンには、ますますネリーの言う意味が理解不能だ。
「クリステルにネチネチ嫌がらせなんて、無駄な所に情熱を注ぐのは辞めたの。これからはストレートにレオンにアタックする」
「あの……ネリー……?」
レオンは暑くもないのに噴き出す汗を拭いながら言う。
「俺達は、遊びの旅をしているわけじゃないんだ……。いつまでも同行を許す訳にはいかない」
ネリーは、当然……というように頷く。
「それは前に聞いたわ。都へ行くんでしょ? クリステルが王宮の術師だって事も聞いた」
「だったら……」
レオンが言いかけると、それを遮るように、ネリーは、チッチッ、と舌を鳴らして指を振った。
「だからついて行くんじゃない。都へ着けば、クリステルはお役御免となって、エライ人の御付きに戻るわけでしょ?その時こそ、あたしがレオンの専属術師になるんだから」
ネリーの言葉が、その場の空気を変えた。
レオンはほとんど無意識に、クリステルを見た。
しかし――
クリステルは、目を合わせてはくれなかった。
レオンの視線が、クリステルを追った事に、もちろんネリーは気付いていた。
胸が、ズキンと痛んだ。
「たとえレオンが貴族で、身分違いでも……専属術師として雇ってもらえれば、ずっと、側にいられるもん」
切ないセリフを呟いた。そう言うしか、なかったのだ。
つづく
雨……?
眠りにつこうと、光の精霊を休ませたクリステルは、ハウスの中が暗くなって初めて、雨が降っている事に気付いた。
ネリーの事が気に掛かった。
彼女のハウスが未熟である事は、クリステルの目には明らかであった。
大気の壁の層が整っておらず、強風や雨にどれだけ耐えられるか、疑わしいシロモノであった。
傍らで寝息を立て始めたばかりのレオンを起こさないように、クリステルはそっと、寝床から起き上がり、ハウスを出た。
闇の中、思ったより激しい雨音に混じって、すすり泣くような声が聞こえる。
クリステルは濡れるのも構わず、崩れかけて空間が歪んで見えるハウスに、静かに歩み寄った。
ハウスはあちこち穴が開いているらしく、所々からネリーの姿が覗けた。
ネリーは、ずぶ濡れになって膝を抱えて泣いていた。
「ネリー……」
そっと声を掛ける。
ぴくり……と肩が跳ね、泣き濡れた瞳がクリステルを見上げた。
「何度やっても駄目なの。何度も作り直したのに……すぐに雨漏りするの」
ぐずぐずと泣きながら、ネリーが悔しそうに訴える。
クリステルは手を差し伸べた。
「風邪をひいてしまいますよ」
囁くような優しい声に、ネリーは、うわぁん、と泣き声を上げて、クリステルの胸に飛び込んで来た。
一瞬、驚いたクリステルであったが――そっと、小さい身体を抱き締めてやる。
「私も、初めは上手く作れませんでしたよ」
そう言いながら、クリステルは冷たくなっているネリーの髪を撫でた。
ネリーは、クリステルの腕の中で、その暖かさに泣けた。
未熟な自分が悔しくて、情けなくて……
雨は冷たくて、心細くて……とても寂しかったのだ。
そんな時に差し伸べられた手の優しさに、縋り付かずにはいられなかった。
強がってはいても、ネリーはまだ十六歳の少女であった。
クリステルのハウスへ招き入れられたネリーは、その想像もしなかった作りに呆然とした。
大きく描かれたサークルは、びっしりと柔らかな緑が覆い、天井は高く、雫のひとつも漏れて来ない。乾きすぎない空気は暖かく、プティがゆったりと空間を漂っている。
クリステルは荷物の中からタオルを取り出して、ネリーに手渡した。そのまま、かまどの側へ寄る。
「炎の精霊よ……」
小さくそう呟いただけで、かまどに火が点いた。
名乗りどころか、杖さえ手にしていないクリステルに、ネリーは目を見張った。
「火の側へいらっしゃい。身体を暖めなければ……」
言いながら振り返ったクリステルは、困ったような顔をした。
ネリーはタオルを手にしたままで、雫を拭う事もせず、ただこちらを凝視している。
クリステルはネリーの手を取り、かまどの側まで連れて来ると、また荷物の所からブランケットを持って来た。
「服を脱いで、これに包まって、火の側で暖まるのですよ」
言い置いて、クリステルは杖を手に取った。
「水の精霊よ……」
言いながら、杖の紫の石でポットの縁を、ちょん、と突付く。
石から水が滴り、ポットに満たされ、クリステルはそれを火に掛けた。
手際よく働くクリステルを眺めながら、ネリーはのろのろと服を脱いで、毛布に包まった。
レオンの言った通りであった。
クリステルは名乗りを上げる事もなく、しかし精霊は、打てば響くように反応を示す。
認めたくなかった実力の違いを、はっきりと自覚しなければならなかった。
重い気分で膝を抱え、かまどの炎を見つめていると、いつの間にか着替えたクリステルがやって来て、先程から温めていたカップにポットの湯を注いだ。
念入りに掻き混ぜ、ほんの数滴のお酒を落として――そうして差し出されたカップにはチョコレートが甘い香りの湯気を上げていた。
「暖まりますよ」
そう言ったクリステルの表情は、僅かに微笑を浮かべていて――
「ありがとう……」
カップを受け取りながら、ネリーは初めて自分に向けられた微笑に見惚れていた。
身体がぽかぽかと温まり、睡魔が両腕を広げてネリーを包み込もうとしていた。
眠りに落ちる間際、ネリーは呟くような声で言った。
「もし……先にあなたに出会っていたら……あたしはきっと、あなたに憧れて憧れて……弟子入りさせて下さいって、追っかけ回したんだろうな。だって……あなたは……あたしが思い描いているスピリッツ・マスターの姿そのままだったもの」
ネリーの呟きを、クリステルは無言で聞いていた。
しかし、落とした照明の中でも、きっとクリステルは穏やかな眼差しでこちらを見ているのだろう。
ネリーはそれを感じて、寝返りを打ち、クリステルに背を向けた。
「でも……先に出会ったのは、レオンだった……」
それが、ネリーの出した結論であった。
「なぁ……なにがあった?」
レオンがそっと、クリステルに耳打ちした。
翌朝、レオンが目覚めると、ハウスの中にネリーがいた。
朝食の準備をしている今も、ネリーは黙々と働いている。
しかし、昨日のように毒は吐かないものの、何だか仏頂面で、話し掛け辛い空気を全身にまとっている。
「昨夜、雨が降ったんです。彼女のハウス、持ち堪えられなくて……ずぶ濡れになっていたので、こちらへお呼びしたのです」
クリステルも小声で説明する。
ふぅん……と頷いたレオンに、クリステルは慌てて付け足す。
「あの……彼女も屈辱でしょうから、その話は持ち出さないで下さいね」
レオンは肩を竦めた。
「わかってる。揉め事はご免だ」
「あの~……食事の仕度、できたんだけど」
ネリーが向こうから呼んだ。
二人は速攻で振り返る。
「手伝って下さって、助かりました」
「メシだメシ……」
同時に声に出して、ばつが悪そうに顔を見合わせる。
ネリーは嫌味な溜息をついた。
「あのさ……食事の前に、言っておきたいんだけど……」
「なんですか?」
「なんだ?」
また声がハモる。ネリーはもう一度、溜息をついた。
「あたし、つまんない喧嘩吹っ掛けるのは辞めたから。貴族の術師を嫌いだってのは、今でもそうだけど、でも、実力で張り合っても敵わないって事はよくわかったし……それは、これからあたしも勉強すれば、何とかなるかも知れない事だし」
ネリーの言葉に、ふたりはただ頷く。
レオンに至っては、心底ほっとした表情だ。
ネリーはクリステルを真っ直ぐに見た。
「でも、これだけははっきりしてる。あたしはレオンが好き。だからあなたが嫌い」
レオンが咳き込んだ。
「なっ……なんでそうなるんだよっ! お前、そりゃ、どーゆー理屈だぁ?」
「本気で訊いてるの?」
ネリーが眉をひそめ、逆に訊き返す。
「当たり前だ。お前、言ってる事、滅茶苦茶だぞ」
レオンの言葉に、ネリーはニンマリと笑った。
「何だ、自覚がないなら、言った方が有利じゃん。一歩リードぉ」
レオンには、ますますネリーの言う意味が理解不能だ。
「クリステルにネチネチ嫌がらせなんて、無駄な所に情熱を注ぐのは辞めたの。これからはストレートにレオンにアタックする」
「あの……ネリー……?」
レオンは暑くもないのに噴き出す汗を拭いながら言う。
「俺達は、遊びの旅をしているわけじゃないんだ……。いつまでも同行を許す訳にはいかない」
ネリーは、当然……というように頷く。
「それは前に聞いたわ。都へ行くんでしょ? クリステルが王宮の術師だって事も聞いた」
「だったら……」
レオンが言いかけると、それを遮るように、ネリーは、チッチッ、と舌を鳴らして指を振った。
「だからついて行くんじゃない。都へ着けば、クリステルはお役御免となって、エライ人の御付きに戻るわけでしょ?その時こそ、あたしがレオンの専属術師になるんだから」
ネリーの言葉が、その場の空気を変えた。
レオンはほとんど無意識に、クリステルを見た。
しかし――
クリステルは、目を合わせてはくれなかった。
レオンの視線が、クリステルを追った事に、もちろんネリーは気付いていた。
胸が、ズキンと痛んだ。
「たとえレオンが貴族で、身分違いでも……専属術師として雇ってもらえれば、ずっと、側にいられるもん」
切ないセリフを呟いた。そう言うしか、なかったのだ。
つづく
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