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私は花になりたい
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「好き」と「愛してる」の違いについてブッダはこう答えたそうだ。
----------------------------------------
“花が好きと言う場合、ただ花を摘むだろう。
だが花を愛していれば、世話をし毎日水をやるだろう”
----------------------------------------
私は合鍵を使い彼の家に上がりこんだ。
この時間、彼が家にいないのは確認済み。
今日、彼の家で私は死ぬ。
私にはあの人が全てだったのに。
なのに突然、別れを告げられるなんて。
もう、生きていくのが嫌。
これは、彼に対する復讐心。
ぶら下げたロープで首を吊る。
頸動脈が自重で圧迫され、勝手に足がバタつく。
薄れていく意識の中で私が最後に見たのは、私があの人にプレゼントしたドライフラワーだった。
もし・・・今度・・・生まれ変われるなら・・・綺麗な花になりたいな。
そんな事を思いながら、私は一生を終えた。
……。
…………。
………………。
……暗い。
……ここは……どこ……。
……どこでもいいや……。
……。
……眩しい……。
……光……。
……花。花、花……。
沢山の花が咲き乱れている。
ここは、もしかして天国?
体が……動かない。
どうなっているの私の体?
突然、私の目の前に大きな人が現れた。
巨人!? なに? 大きい女の人。
「うわー。芽が出てる。嬉しい。もっとすくすく育ってね」
その女の巨人は大きなじょうろで上空から雨を降らしてくる。
ひっ! 冷たい! なんなの!あっ、でも気持ちいい。もっとかけてほしい。
巨人の女はしばらく、水をかけるとその場を去っていった。
……もしかして私が小さい。というよりも、この感じ……私は花になったの!?
私は花に生まれ変わっていた。
死ぬ瞬間に願った事が叶ったのだ。
第二の人生は花か。いいじゃない。
置かれた場所で咲いてやろうじゃないの。
私は花として生きていくことに決めた。
「すくすく育っていますね。もう蕾ができています」
私に水をやっている女の人。
この人の名前は、りん。誰かがそう呼んでいるのを聞いた。
そして、りんは花屋さんで働いている。
つまり、私は花屋で咲く花だ。
野原や野道に咲く花でなくてよかったと本当に思う。
犬におしっこをかけられたり、無邪気な子供にむしられたり、虫に喰われる危険性なんてないんだから。
ここにはそんな心配はない。温室でぬくぬくと生きられるわ。
あと、ここだと退屈もしないわ。りんが毎日、話しかけてくれるもの。
まあ、彼氏の話しがほとんどなんだけどね。
「今日は、たかしと動物園に行ってきたんだよ」
「たかしにご飯を作ったら、喜んでくれたんだ」
「たかしと喧嘩しちゃったけど、すぐ仲直りしたよ」
などなど。
ずっとニコニコ話しかけてくるのよね。
順調に愛を育んでいるようで、なによりって感じかしら。
「ああー。花が咲いてる。キレイ」
りんは朝早く私を見てそう言った。
ぬくぬくと育った私は何の弊害もなく花を咲かせた。
「やっと花が咲いた。咲いてくれてありがとう。花が咲いたら彼氏にプレゼントしようと思っていました」
りんはニコニコ笑いながら私に話しかける。
おおっ。私はりんのお気に入りだったのね。
私は嬉しくなった。
彼氏にプレゼントね。喜んでもらえるかしら。
いいえ。ここまでりんが私を大切に育ててくれたんだもの。
きっと喜んでくれるわよね。
「こっちの植木鉢に引っ越しです」
りんはそう言うと、私を綺麗な鉢に植え替えてくれた。
その日、いつもよりニコニコと上機嫌の様子。
そして、仕事が終わり、綺麗に梱包された私を持って店を出ていった。
「ねえねえ。今日はなんとプレゼントがあります」
「おお、嬉しい。なになに」
男の人の声。
きっと彼氏のたかしって人ね。
「開けてみて」
私を覆っていた箱が開けられる。
「うわー。綺麗な白い花だ。ありがとう。花をプレゼントされたの初めてだよ」
りんの彼氏は私を見て、笑顔で喜んでくれている。
爽やかで優しそうな人。顔もイケメンね。やるじゃない、りん。
「喜んでくれて良かった」
りんがニコニコと笑う。
微笑ましい。
幸せそうな二人を見て、私はあの人の事を思い出していた。
……この二人なら大丈夫ね。
私が見守ってあげる。
それが私にできる恩返し。って感じかしら。
「そういえば、花の名前はなんていうの?」
「ガマズミっていうんだよ」
「きいたことない」
「珍しい花だからね。種から大切に育てていたんだよ。ねえ、ガマズミの花言葉。なんだと思う?」
「なんだろう。うーん。わからないな。なに、教えてよ」
「花言葉はね『無視したら私は死にます』なんだよ。だから枯らさずにちゃんと水をあげてね」
りんはニコニコ笑って言った。
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“花が好きと言う場合、ただ花を摘むだろう。
だが花を愛していれば、世話をし毎日水をやるだろう”
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私は合鍵を使い彼の家に上がりこんだ。
この時間、彼が家にいないのは確認済み。
今日、彼の家で私は死ぬ。
私にはあの人が全てだったのに。
なのに突然、別れを告げられるなんて。
もう、生きていくのが嫌。
これは、彼に対する復讐心。
ぶら下げたロープで首を吊る。
頸動脈が自重で圧迫され、勝手に足がバタつく。
薄れていく意識の中で私が最後に見たのは、私があの人にプレゼントしたドライフラワーだった。
もし・・・今度・・・生まれ変われるなら・・・綺麗な花になりたいな。
そんな事を思いながら、私は一生を終えた。
……。
…………。
………………。
……暗い。
……ここは……どこ……。
……どこでもいいや……。
……。
……眩しい……。
……光……。
……花。花、花……。
沢山の花が咲き乱れている。
ここは、もしかして天国?
体が……動かない。
どうなっているの私の体?
突然、私の目の前に大きな人が現れた。
巨人!? なに? 大きい女の人。
「うわー。芽が出てる。嬉しい。もっとすくすく育ってね」
その女の巨人は大きなじょうろで上空から雨を降らしてくる。
ひっ! 冷たい! なんなの!あっ、でも気持ちいい。もっとかけてほしい。
巨人の女はしばらく、水をかけるとその場を去っていった。
……もしかして私が小さい。というよりも、この感じ……私は花になったの!?
私は花に生まれ変わっていた。
死ぬ瞬間に願った事が叶ったのだ。
第二の人生は花か。いいじゃない。
置かれた場所で咲いてやろうじゃないの。
私は花として生きていくことに決めた。
「すくすく育っていますね。もう蕾ができています」
私に水をやっている女の人。
この人の名前は、りん。誰かがそう呼んでいるのを聞いた。
そして、りんは花屋さんで働いている。
つまり、私は花屋で咲く花だ。
野原や野道に咲く花でなくてよかったと本当に思う。
犬におしっこをかけられたり、無邪気な子供にむしられたり、虫に喰われる危険性なんてないんだから。
ここにはそんな心配はない。温室でぬくぬくと生きられるわ。
あと、ここだと退屈もしないわ。りんが毎日、話しかけてくれるもの。
まあ、彼氏の話しがほとんどなんだけどね。
「今日は、たかしと動物園に行ってきたんだよ」
「たかしにご飯を作ったら、喜んでくれたんだ」
「たかしと喧嘩しちゃったけど、すぐ仲直りしたよ」
などなど。
ずっとニコニコ話しかけてくるのよね。
順調に愛を育んでいるようで、なによりって感じかしら。
「ああー。花が咲いてる。キレイ」
りんは朝早く私を見てそう言った。
ぬくぬくと育った私は何の弊害もなく花を咲かせた。
「やっと花が咲いた。咲いてくれてありがとう。花が咲いたら彼氏にプレゼントしようと思っていました」
りんはニコニコ笑いながら私に話しかける。
おおっ。私はりんのお気に入りだったのね。
私は嬉しくなった。
彼氏にプレゼントね。喜んでもらえるかしら。
いいえ。ここまでりんが私を大切に育ててくれたんだもの。
きっと喜んでくれるわよね。
「こっちの植木鉢に引っ越しです」
りんはそう言うと、私を綺麗な鉢に植え替えてくれた。
その日、いつもよりニコニコと上機嫌の様子。
そして、仕事が終わり、綺麗に梱包された私を持って店を出ていった。
「ねえねえ。今日はなんとプレゼントがあります」
「おお、嬉しい。なになに」
男の人の声。
きっと彼氏のたかしって人ね。
「開けてみて」
私を覆っていた箱が開けられる。
「うわー。綺麗な白い花だ。ありがとう。花をプレゼントされたの初めてだよ」
りんの彼氏は私を見て、笑顔で喜んでくれている。
爽やかで優しそうな人。顔もイケメンね。やるじゃない、りん。
「喜んでくれて良かった」
りんがニコニコと笑う。
微笑ましい。
幸せそうな二人を見て、私はあの人の事を思い出していた。
……この二人なら大丈夫ね。
私が見守ってあげる。
それが私にできる恩返し。って感じかしら。
「そういえば、花の名前はなんていうの?」
「ガマズミっていうんだよ」
「きいたことない」
「珍しい花だからね。種から大切に育てていたんだよ。ねえ、ガマズミの花言葉。なんだと思う?」
「なんだろう。うーん。わからないな。なに、教えてよ」
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