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番外編 ベルの初恋 ベルとシリルの出逢い
7 そして未来へ……
「えぇっっ!?」
思わず私は淑女らしかぬ声で叫んでしまいました。
えぇそれは余りにもあり得ない事ばかりでしたもの。
そう、色々とね。
パーシヴァル様のお話によると私は外出した日より約十日程行方不明となっていたようです。
まあ行方不明なのは間違いないでしょうが、それにしてもあれから十日も経っていたなんて、どちらかと言えばそちらの方が驚きでしたわ。
まさかあの薬にその様な効果がある等、そしてあの異様な臭いの元凶はあまり考えたくはないのですが、身に纏っていたドレスとは言い難いモノだけではなかったのですね。
乙女と致しましては何とも言えないショックが隠しきれないです。
でもよく無事でいられた事。
もしかすれば私は死んでいても可笑しくはなかったでしょう。
薬の分量の匙加減一つで……ね。
それと同時に一国の王女が平民に身を窶してはいたとしても消息を絶ってしまったのです。
王宮ではお母様とお兄様が必死になって極秘とは言えお探しになっていた様なのですが、依然として行方の分からない私を何処で情報を得たのでしょうか。
戦場にいる筈のお父様が王宮へ突如転移され、それからは私を想う娘ラブなお父様主導で、いえお父様が先頭切って私を探している――――いいえその様な甘いものではなく、大捜索を展開しているそうです。
戦場は――――?
そう、私も思いましたよ。
旗印でもある国王が、幾らなんでも我が子可愛さに命を懸けて戦っている騎士達を放置するなんて考えられませんもの。
でもそこはきちんと対応なさっていたようです。
流石は私の大好きなお父様。
王宮へ転移なさる前に、氷炎の魔王と言う異名そのものと言った様に、戦野を一瞬にして凍れる炎で敵を薙ぎ払い、即日終戦と成したそうです。
戦場にいるだろう騎士や兵達の事、詰まり後始末は元帥であるジレスが引き受けたらしい。
でもそれが出来るのであればどうして何時も長期戦で戦をしているのかしら。
あーそうだったわ。
戦はお父様の実益を兼ねた趣味……だったものね。
それにしても外出した事はお父様にバレてしまったのね。
兎に角一刻も早く帰宮しなければ色々面倒な事になりそう――――と言うか、既になっているみたい。
私はお庭にいるシリル様へと視線を向ける。
シリル様の瞳にはアイリーン嬢しか映ってはいない。
きっと今日私との出会いも、彼にとっては一瞬の出来事でしかない。
私にとってはその一瞬の出来事は到底忘れられるものではないけれど、どの道私には自由な恋愛は許されはしない。
さぁベル、顔をしゃんと上げて前を見なさい。
貴女はこのマンヴィルの王女。
王女として生を受けた者にとって愛や恋等の夢を見る事は許されないのよ。
全てはこの国、そして未来に嫁ぐだろう国の為に生きていかねばならないの。
だからシリル様の事は永遠に心の奥へ秘めておかねばいけない。
でも、考えようによっては私は凄く幸せなのかもしれない。
恋を知らずによくわかりもしない殿方へ嫁ぐよりも、夫となる男性へ尊敬の念を抱く事はあってもきっと恋をする事はないでしょう。
この身体は自由になる事はなくとも、心だけは誰にも触れさせはしない。
そう、シリル様を密かに想う事は自由だもの。
「そうでしょうパーシヴァル様」
「えぇそうですね。ここはは皆自由ですよ殿下」
「有難う、ではそろそろお暇させて頂くわ。シリル様とアイリーン嬢へよしなにお伝え下さいね」
お別れの言葉なんて言いたくはない……もの。
芽生えたばかりの想いを終わらせたくはないから……。
「僕よりちゃんと伝えます」
「宜しくお願いします」
そうして私は帰宮したわ。
勿論エルナンやラッセル、お母様と宰相そしてフランからは激オコお説教大会が開催されたのだけれど、状況を説明すると今度はお父様とお兄様が超絶激甘状態で暫くの間私を開放してはくれなかったの。
またそれを見て呆れるお母様達の生温かい目と呆れた様な視線は、正直に言えばとても居心地が悪かったわ。
でもそれもこれも皆私を心配をしての事よね。
生まれて初めての外出と言う冒険は、散々な目に遭ったのと甘くほろ苦い出逢いをしたの。
それから一週間程時間は流れ、私はすっかり元の生活へと戻ったわ。
そしてお父様は突如閣議で声を高らかに宣言されたの。
これよりは戦場ではなく、国内で内政ををしっかり取り組むと――――。
また誰もが等しく思ったわ。
娘ラブが暴走したとね。
でもその宣言よりお父様は本当に第一線を退かれたの。
「これからは父が全力でそなたを護ってやるからな!!」
得意げに笑みを湛えるお父様を、お母様は常備されている鉄扇で何度も「娘馬鹿も大概になさいませっっ」と頭を叩いていらっしゃる。
それを見て私とお兄様はクスクスと楽しげに笑う。
何かと厳しい毎日だけれども、私は家族に恵まれている。
とても愛されている事に凄く幸せだと思う。
でも時折、そう夜一人で眠る寝台の中でふとあの太陽の様な笑顔のシリル様を思い出す。
決して叶う事のない想い。
また声に出してはならない想い。
誰にも打ち明けられない秘めた想いだけれども、私はとても幸せなの。
だってそうでしょ。
人を愛すると言う事を教えてくれたのですもの。
想いが伝わる伝わらないは別として、想う事が出来ると言うだけで私は幸せ。
この想いがあるからこそ、私は過酷なレッスンや様々な事へ意欲的に取り組める。
ただその六年半後に待ち受ける辛くて悲しい運命が待ち受けているとも知らずに今日も私はシリル様を想い、安らかな眠りへと就いた。
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⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
丁寧な、お返事ありがとうございました(^-^)
ハッピーエンドで良かった!
ベル目線の番外編も良いですね
ですが…同じ話が投稿されていますよ
確認して下さいね(^-^)
切ないですね…王女さまに幸せになって欲しい
更新を楽しみにしています(^-^)
yokoさまコメントありがとです^^
はい切ないです。
ハッピーで楽しい恋愛もいいのですが、でも誰しも色々な場面で恋愛をする上で切ない気持を抱く事があると思います。
ベルの様に病に侵される場合もあれば、ごく普通……いえいえ様々な恋愛を通して甘く切ないもの、また悲しくぎゅっと切なくなる想い。
因みに私の近くにいる人は、現在何とも言えない甘いのか切ないのかわからない恋をしていますけれどね。
恋をしたら全てがハッピーエンドとなる事は実際少ないと思います。
紆余曲折を経て心のハッピーエンドとなる恋人達とは、本当の意味で奇跡ではないでしょうか。
何故なら全く環境や考え方の違う人間が、出会い、時を重ねて幸せになるって凄いですよね。
うーんお話しが逸れちゃいましたね。
そして私もベルが幸せになる事を祈って入るのです。
祈ってはいるのですけれど……。
最後にお返事が大変遅くなりまして申し訳ありませんでした。
最終話まで後もう少しなので、どうかそれまでお付き合いくださいませ。
。" ゚☆,。・:*:・゚★o(´▽`*)/♪Thanks♪\(*´▽`)o゚★,。・:*:・☆゚"