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序章
3 一般的に知られているシンデレラと言う童話 Ⅲ
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魔法が解けたシンデレラはまた、何時もの様に朝から晩まで一生懸命働きました。
義母や義姉達の虐めも変わらずです。
ただ変わったと言えば……。
「こちらの屋敷には未婚の乙女がいるだろう。王命にてこの扉を開けよ、そしてこの靴にピッタリと合う娘を王子の妃とする」
声高らかにやってきたのは王命により城から遣わされた数名の騎士と役人達。
彼らはあの舞踏会で王子様と出逢った美しい娘を探しているとの事でした。
手掛かりは娘が逃げる様に帰った時に落として行ったであろうガラスの靴の片割れ。
仰々しく赤いふわふわのクッションに載せられたガラスの靴を持って、彼らは何処にいるかも知らない娘を翌日より延々と探していたのです。
まあ王命ですから仕方ないですよね。
そこが宮仕えの悲しい所です。
そして今街の外れにあるこの屋敷へと役人達はやって来たのでした。
この屋敷へ来るまでに何処の家も我が娘こそ――――と、躍起になってガラスの靴を履かせようと試みましたが、誰一人としてこの靴に合う娘は存在しませんでした。
連日の激務と言うか当てのない探し物故に役人達こそ疲労困憊で、次こそは……と願いつつも必死に探してきたのです。
そんな役人達の様子にトレメイン夫人はにこやかな表情で出迎えます。
「まぁこれはこれはお役人様方、我が家にはちょうど未婚の娘が二人おりましてよ。きっと二人の内どちらかが王子様のお妃さまとなる筈」
トレメイン夫人は早速娘達を呼び、役人が持っているガラスの靴を履く様に促します。
先ず最初に長女のドリゼラがガラスの靴を試してみましたが、靴が小さい為か直ぐにはいいえ、全く履けないのです。
悔しそうな表情をしつつもドリゼラが諦めようとする前に、トレメイン夫人は彼女の耳元で囁く様に小さな声である事を命じます。
「爪先を切り落としなさい」
命じられたドリゼラは一瞬表情を固まらせましたが、爪先さえ切れば晴れて彼女は王子様の妃となり贅沢三昧な暮しが待っていると言われれば、仕方なく泣く泣く自らの爪先を切れ味の良いな短剣で一思いに切り落とし、そして切り落としたのを見つからない様に爪先を分厚い布でグルグルと覆い隠すと何事もなかったかのように彼女はガラスの靴を履きました。
「ほらっ、お役人様娘の足にぴったりですわ。この娘こそ王子様の妃に――――」
「いや待たれよ、未亡人。如何に靴が合うと言ってもこれでは……」
靴のサイズは確かにぴったりとドリゼラに合いましたと言うよりも、彼女が合わせたのですがしかし、切り落とした爪先からドクドクと覆われた布より真っ赤な鮮血が流れ出しているのです。
流石に役人もこれは認める訳には参りません。
そうしてドリゼラは失格となり、次に呼ばれたのは次女のアナスタシアでした。
でも身体の大きいアナスタシアにガラスの靴が合う訳はなかったのです。
そんなアナスタシアにトレメイン夫人は再び小声で囁きます。
「踵を切り落としなさい」
やはり目先の慾に流されたアナスタシアも自身の手で自らの踵を切り落とし、ガラスの靴には合いはしましたが結局切り落とした踵からの出血で、彼女もまた失格となったのです。
その様な親子のやりように半ば呆れつつも役人は次なる家へ向かおうとした時です。
「どうかお役人様っ、私にも試させて頂けないでしょうかっっ。私はこの家の末娘です!!」
灰塗れのシンデレラが彼らの前へと出てきました。
その汚れた姿に顔を顰めつつも役人はシンデレラへ靴を履く様に促します。
ところがです!!
「ふんっ、お前等に履く靴等ありはしないのよ!!」
そう叫んでトレメイン夫人は血塗れのガラスの靴を手に取ると、渾身の力を込めて大理石の床へ叩きつけました。
バリイィィィ――――ンンン!!
繊細に作られたガラスの靴はその衝撃によって粉々に割れてしまったのです。
「未亡人何と言う事をっっ!?」
「あらお役人様申し訳御座いません。つい手が滑ってしまいましたわ」
「いやしかしガラスの靴がなければ〰〰〰〰」
そうです。
王子の恋する乙女を探す唯一の手掛かりがガラスの靴でした。
そのガラスの靴がなければ如何に王命とは言え、国中の娘から王子様の唯一を探し出すのは容易ではありませんが……。
「お役人様、もう片方のガラスの靴はここにあります」
ポケットよりシンデレラが取り出したのは、紛れもなく彼女の手元に残ったガラスの靴の片割れでした。
そして彼らの目の前でシンデレラはガラスの靴へ足をそっと入れました。
「おおっ、この乙女ぞ!! この乙女こそ王子の妃となる娘ぞ!!」
「まさかっ、どうしてシンデレラがどうしてっっ!?」
「嫌よ、お母様っ、お母様の言う通りにすれば王子様のお妃さまになって贅沢三昧だって言っていたじゃないっっ」
「そうよそうよっっ」
そうして意地悪な親子が悔しがる中、シンデレラは王子の待つお城へと向かいました。
それから間もなくしてシンデレラは晴れて王子様と正式に結婚をする事になりました。
その結婚式当日――――。
あれ程シンデレラを虐めていた親子をシンデレラは許し、また自身の結婚式へ招待したのです。
恥を知らない義姉達は教会でシンデレラへ媚び、祝いを述べようとした時――――。
ばささっっ。
ぐちゅっ、ぶちゅっっ。
「「ぎゃあああぁぁぁあああ〰〰〰〰っっ!!」」
何処からともなく白い鳩がドリゼラとアナスタシアの肩へと舞い降り、そして躊躇う事無く二人の両の眼を突き潰しました。
白い鳩はシンデレラによく懐いていた鳩達です。
意地悪で醜悪な二人へ鳩が自ら……?
それとも誰かの願いだったのでしょうか。
真実はわかりません。
そして両目を突き潰された二人の消息もそれ以降誰も知りません。
最期にトレメイン夫人は結婚式の当日、屋敷に手自ら命を絶っていたようです。
全ての憂いが晴れたシンデレラ……エラは、物語の終わりらしく王子様と何時までも幸せに暮らしましたとさ?
義母や義姉達の虐めも変わらずです。
ただ変わったと言えば……。
「こちらの屋敷には未婚の乙女がいるだろう。王命にてこの扉を開けよ、そしてこの靴にピッタリと合う娘を王子の妃とする」
声高らかにやってきたのは王命により城から遣わされた数名の騎士と役人達。
彼らはあの舞踏会で王子様と出逢った美しい娘を探しているとの事でした。
手掛かりは娘が逃げる様に帰った時に落として行ったであろうガラスの靴の片割れ。
仰々しく赤いふわふわのクッションに載せられたガラスの靴を持って、彼らは何処にいるかも知らない娘を翌日より延々と探していたのです。
まあ王命ですから仕方ないですよね。
そこが宮仕えの悲しい所です。
そして今街の外れにあるこの屋敷へと役人達はやって来たのでした。
この屋敷へ来るまでに何処の家も我が娘こそ――――と、躍起になってガラスの靴を履かせようと試みましたが、誰一人としてこの靴に合う娘は存在しませんでした。
連日の激務と言うか当てのない探し物故に役人達こそ疲労困憊で、次こそは……と願いつつも必死に探してきたのです。
そんな役人達の様子にトレメイン夫人はにこやかな表情で出迎えます。
「まぁこれはこれはお役人様方、我が家にはちょうど未婚の娘が二人おりましてよ。きっと二人の内どちらかが王子様のお妃さまとなる筈」
トレメイン夫人は早速娘達を呼び、役人が持っているガラスの靴を履く様に促します。
先ず最初に長女のドリゼラがガラスの靴を試してみましたが、靴が小さい為か直ぐにはいいえ、全く履けないのです。
悔しそうな表情をしつつもドリゼラが諦めようとする前に、トレメイン夫人は彼女の耳元で囁く様に小さな声である事を命じます。
「爪先を切り落としなさい」
命じられたドリゼラは一瞬表情を固まらせましたが、爪先さえ切れば晴れて彼女は王子様の妃となり贅沢三昧な暮しが待っていると言われれば、仕方なく泣く泣く自らの爪先を切れ味の良いな短剣で一思いに切り落とし、そして切り落としたのを見つからない様に爪先を分厚い布でグルグルと覆い隠すと何事もなかったかのように彼女はガラスの靴を履きました。
「ほらっ、お役人様娘の足にぴったりですわ。この娘こそ王子様の妃に――――」
「いや待たれよ、未亡人。如何に靴が合うと言ってもこれでは……」
靴のサイズは確かにぴったりとドリゼラに合いましたと言うよりも、彼女が合わせたのですがしかし、切り落とした爪先からドクドクと覆われた布より真っ赤な鮮血が流れ出しているのです。
流石に役人もこれは認める訳には参りません。
そうしてドリゼラは失格となり、次に呼ばれたのは次女のアナスタシアでした。
でも身体の大きいアナスタシアにガラスの靴が合う訳はなかったのです。
そんなアナスタシアにトレメイン夫人は再び小声で囁きます。
「踵を切り落としなさい」
やはり目先の慾に流されたアナスタシアも自身の手で自らの踵を切り落とし、ガラスの靴には合いはしましたが結局切り落とした踵からの出血で、彼女もまた失格となったのです。
その様な親子のやりように半ば呆れつつも役人は次なる家へ向かおうとした時です。
「どうかお役人様っ、私にも試させて頂けないでしょうかっっ。私はこの家の末娘です!!」
灰塗れのシンデレラが彼らの前へと出てきました。
その汚れた姿に顔を顰めつつも役人はシンデレラへ靴を履く様に促します。
ところがです!!
「ふんっ、お前等に履く靴等ありはしないのよ!!」
そう叫んでトレメイン夫人は血塗れのガラスの靴を手に取ると、渾身の力を込めて大理石の床へ叩きつけました。
バリイィィィ――――ンンン!!
繊細に作られたガラスの靴はその衝撃によって粉々に割れてしまったのです。
「未亡人何と言う事をっっ!?」
「あらお役人様申し訳御座いません。つい手が滑ってしまいましたわ」
「いやしかしガラスの靴がなければ〰〰〰〰」
そうです。
王子の恋する乙女を探す唯一の手掛かりがガラスの靴でした。
そのガラスの靴がなければ如何に王命とは言え、国中の娘から王子様の唯一を探し出すのは容易ではありませんが……。
「お役人様、もう片方のガラスの靴はここにあります」
ポケットよりシンデレラが取り出したのは、紛れもなく彼女の手元に残ったガラスの靴の片割れでした。
そして彼らの目の前でシンデレラはガラスの靴へ足をそっと入れました。
「おおっ、この乙女ぞ!! この乙女こそ王子の妃となる娘ぞ!!」
「まさかっ、どうしてシンデレラがどうしてっっ!?」
「嫌よ、お母様っ、お母様の言う通りにすれば王子様のお妃さまになって贅沢三昧だって言っていたじゃないっっ」
「そうよそうよっっ」
そうして意地悪な親子が悔しがる中、シンデレラは王子の待つお城へと向かいました。
それから間もなくしてシンデレラは晴れて王子様と正式に結婚をする事になりました。
その結婚式当日――――。
あれ程シンデレラを虐めていた親子をシンデレラは許し、また自身の結婚式へ招待したのです。
恥を知らない義姉達は教会でシンデレラへ媚び、祝いを述べようとした時――――。
ばささっっ。
ぐちゅっ、ぶちゅっっ。
「「ぎゃあああぁぁぁあああ〰〰〰〰っっ!!」」
何処からともなく白い鳩がドリゼラとアナスタシアの肩へと舞い降り、そして躊躇う事無く二人の両の眼を突き潰しました。
白い鳩はシンデレラによく懐いていた鳩達です。
意地悪で醜悪な二人へ鳩が自ら……?
それとも誰かの願いだったのでしょうか。
真実はわかりません。
そして両目を突き潰された二人の消息もそれ以降誰も知りません。
最期にトレメイン夫人は結婚式の当日、屋敷に手自ら命を絶っていたようです。
全ての憂いが晴れたシンデレラ……エラは、物語の終わりらしく王子様と何時までも幸せに暮らしましたとさ?
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