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第一章 転生先は物語と酷似している世界の中二人の転生者は……。
3 ファーストコンタクト
しおりを挟む「初めましてお義姉様」
そう言って私に満面の笑みで話し掛けてくるのは、私が眠っている間に家族となったらしい末の義妹。
名前はエレオノーラ・カルリエ男爵令嬢。
親しい者達からは愛称でエラと呼ばれているそうな。
キラキラと金色に光る髪と澄んだ青い瞳を持つとても美しい乙女である。
そして彼女こそがこの世界のヒロイン的存在らしいシンデレラなのだっっ。
「宜しくね、エラ。私の事はドリエラでもドリーとでも好きな様に呼んでくれていいのよ。それにアナと貴女は同じ年齢ですものね。だから私とも一つしか離れていないのですもの。義姉……と言うより仲の良いお友達の様になればいいわね」
「な、仲の良い……ですか?」
「えぇ、それが何か?」
何故かエラは心底信じられない様な眼差しで私を凝視している……けれど何故?
エラ自身は何も知らない筈……よね?
大体そんなに異世界転生者がホイホイいるなんて事はあり得ないだろうし。
それからっ、私からは絶対に意地悪なんて馬鹿な事もしないわよっっ。
まあお母様とアナの行動は十分注意させて貰うけれどもねって、おい!!
「アナっ、姉妹三人でお茶会をしましょうって言うのにどうして何時も何時も……」
お菓子ばっかり食っとるんじゃ――――い!!
隣を見れば碌な挨拶や会話もせず、アナスタシアはテーブルに盛られたケーキやお菓子をこれでもかと言うくらい豪快に食べている。
どう贔屓目に見てもその姿は大食い選手権に出ている選手の様な感じだわ。
そして今私はハリセンを持っていたら、間違いなくアナの頭を叩いていたかもしれない。
良かったぁ、今の私は武器に不向きな扇を持っていて。
でもこの扇も多少の武器になったりしてね。
あぁまた話が逸れてしまったじゃない。
兎に角今の私は子爵から男爵令嬢となったドリゼラよ。
関西弁を遣うのは心の中だけに留めておかなきゃ。
でもアナを見ているとついね、つい関西弁で喋りながら彼女の背中をバンバン叩きたくなるのも事実だったりする。
「お姉様ぁ、お茶の時間くらいいいでしょ」
「しん……え、エラと初めてのお茶会なのよ。縁あって私達は姉妹となったの。だからこれから仲良く暮らしていく為にもお互いの理解を深めないとね。それなのに貴女ってば食べてばかりじゃない。しん、いえエラの様に素敵な令嬢になれなくってよ」
そうそう相手の事をよく理解して、何としてもバッドエンドのフラグを叩き割らないとね。
その為にはどんな小さなフラグも見逃しちゃあいけない。
「いいもーん、私はお姉様やエラの様に美人じゃないもの。だから高望みなんてしてはいないわ」
「もうアナってば……」
そうアナスタシアはドリゼラと違い、特に上昇志向が強い訳じゃあない。
美味しいものをお腹一杯食べて、ちょっとお洒落を楽しめればそれで十分幸せだと感じる何処にでもいる素直で可愛い乙女なのだ。
私も最初は随分物語と違うキャラだと思ったけれど、これはこれでアナスタシアは十分可愛い妹だと思う。
でも……。
「う、嘘……」
私とアナの様子を見たエラはまるで信じられない様な表情でそう呟いた。
なんだかなー、私とアナが仲良しなのってそんなに不思議なのかしらん。
「どうかしたのエラ?」
そして何が嘘なのかを知りたくて、私はエラへ声を掛ける。
するとエラは何もなかったかの様に満面の笑みを浮かべ……。
「いいえお義姉様、余りに仲が良さそうなのでびっく……いえ、羨ましいと思ったのです。わ、私はずっと一人でしたでしょう。だから姉妹と触れ合った事がなかったから……」
「まあそうだったの。大丈夫よ、私もアナも貴女の様に綺麗な義妹が出来てだから本当に嬉しいもの。直ぐに仲良くなれるわ」
「そ、そうかしら?」
「えぇ絶対喧嘩も意地悪なんて事はしないわっっ。だから信じて頂戴!!」
そう勿論よっっ。
今日ここが私達のスタート地点なのっっ。
だから絶対に失敗なんてしないしさせない。
ちゃんとエラと友好を深めて穏便に事を進めるわ。
それにちゃーんとわかっているわよ。
勿論ヒロインとヒーローの邪魔なんて事もしない。
寧ろ諸手を挙げて応援するわっっ。
だからお願いっ、私達親子を五体満足な姿で、そう平凡でいいから無事に人生を終えさせてね。
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