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第二章【夕暮れのお守り】
テストの回収。
しおりを挟む「……っ」
おかしな想像をしてしまったせいで、嫌な予感は確固たるものになった。こうしてはいられない。
テストが終わったら、すぐに放課後だ。バスケ部の大会が近いとかで、エースの夕崎くんは毎日たくさん練習をしていた。
今日も部活に行くはずだから、その隙にこっそり拝借するしかない。
そしてそれを持って、シオンくんかとーや先生に何とかして貰おう。
見付けただけじゃなくて持って行くことができたら、助手として評価して貰えるかもしれない。
それに、役に立つところを見せれば、少しはシオンくんに近付けるかもしれない。
大丈夫、盗むんじゃなく、借りるだけ。未承認なら承認して貰えばいい。そうすれば、きっと危険物ではなくなるはずだから。
「……はい、終了ー。ほら、手を止めろー。後ろのひとは答案用紙を集めてきてー」
いろいろと考えている間に、テスト時間は終わりを迎えた。
結局クラスと名前しか書けていないけど、昨日に引き続き二度目ともなると諦めもつく。
「……みゆりちゃんのテスト、その、今日も輝いてるね」
「それほどでもある」
「みゆり、それ褒められてないわよ」
答案用紙を回収して、またもや困ったように笑う若菜ちゃんに、わたしはいっそドヤ顔を返しておいた。
姫乃ちゃんの冷静な突っ込みにも、もはや動じない。今メンタル強度のテストがあれば、きっと好成績に違いない。
若菜ちゃんはそのまま夕崎くんの答案用紙も回収しようとして、ふと立ち止まる。
「あの……夕崎くん?」
「ごめん委員長、あとちょっとだけ」
「でも……もう回収って先生が……」
「ダメなんだよ……まだ、まだ書き足りないんだ」
若菜ちゃんはさらに困ったようにおろおろとし始める。ついさっき彼女を困らせた自分のことは棚に上げて、わたしは夕崎くんに抗議する。
「ねえ、若菜ちゃん困ってるじゃん。もう十分回答埋まってるし、早く出しなよ」
「わかってるんだけどさ……見てくれよ、教科書に書いてたことだけじゃない、先生が話してた例や細かい知識まで、どんどん書けるんだ、すごい……たった一度見たり聞いたりしただけのこと、全部全部答えられる!」
「ゆ、夕崎くん……?」
「おい、そこの列どうした?」
とーや先生も夕崎くんの異変に気付いたように、教卓の向こうから声をかけてくる。
けれど夕崎くんは興奮したようにわたし達と会話をしながら、迷いなく動く鉛筆を持ち続け、答案用紙の余白を埋めていった。やはり、異常だ。
「おい、どうしたんだ? 何かあったか?」
先生がこちらに向かってくる。一人で解決しようと意気込んでいたわたしは、反射的に、少し身を乗り出して夕崎くんの腕を掴んだ。
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