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第二章【夕暮れのお守り】
アイコンタクト。
しおりを挟む「ほら、とーや先生に怒られるよ」
もちろん、運動部男子との力の差は理解しているつもりだった。それでも、ただ一瞬でも鉛筆の動きを止めようとしただけだったのに。
「!?」
「うわぁっ!?」
わたしはまるで何かに弾かれたように、夕崎くんの軽く振り払うような腕の動きに合わせて、椅子ごと勢いよく横に倒れた。
椅子の倒れるガターンという大きな音が教室中に響いて、床に投げ出されたわたしも、振り払った夕崎くんも、クラスのみんなも何事かと呆然とする。
「あ……え!? オレ、そんな力入れてない、よな?」
「だ、大丈夫!? みゆりちゃん!」
「痛ったぁ……。う……うん、大丈夫」
床と仲良くなったわたしを見て夕崎くんは明らかに動揺して、若菜ちゃんは手を差し伸べてくれる。
「みゆり、怪我はない? 立てる?」
「平気平気、びっくりさせてごめんね、姫乃ちゃん」
「小日向!? 大丈夫か!?」
姫乃ちゃんと、駆け寄ってきた先生も何事かと目を丸くしながらわたしの心配をしてくれた。
とりあえず、若菜ちゃんの居る方に倒れなくてよかった。巻き添え待った無しだったであろうその派手な転倒に、思わず肩を竦める。
とーや先生が片膝をついて、わたしに怪我がないか確認してくれる。幸い血やなんかは出ていない。
目立ってしまった恥じらいから、わたしはすぐに立ち上がり、無事をアピールした。
「小日向、怪我がないにしてもそんな急に立つと危ないぞ」
「大丈夫です! わたし、頑丈なので!」
強かに打ち付けた痛みは多少あれど、それよりわたしの心臓がばくばくとうるさかった。
今の弾かれたような感覚はもしかすると、魔法を無理矢理妨害しようとしたせいなのだろうか。
未だに痺れるような感覚のある手のひら。
一人での解決が無理なことを悟ったわたしは、こちらを心配そうに見るシオンくんととーや先生へと、困ったようにアイコンタクトを送るのだった。
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