一条物語

いしぽよ

文字の大きさ
上 下
7 / 29
第1章 序章

第7話 謎の秘密結社、烏

しおりを挟む
有力御家人達が結託し、打倒北条を謳って立ち上がった。
ここに有力御家人達による幕府争奪戦、嘉禄の乱が勃発した。この乱は、以後、数十年続く、大乱に発展してしまうことになる。これを抑える為、北条家は日本全国から戦力を集める。
その為、九州の鎮西奉行、京都の六波羅探題などが一時的に弱体化するなど、地方の監視や統制が緩和されてしまった。これを見て、ある組織が暗躍し始める。組織名は"烏"。彼らの正体は平家の残党であった。
平家の残存勢力を追討するために九州に置かれた鎮西奉行の弱体化によって、平家の残党達が活動しやすくなってしまったのだ。彼らの目標は当然、打倒源氏。源氏を倒し、もう一度平家の世の中に戻すことを目標に”烏”という組織を結成し、活動している。とはいえ、現在、すでに源氏の嫡流は途絶えてしまっているので、現在の彼らの目標は打倒幕府、といったところである。彼らはその幕府が関東で内乱を起こし、鎮西奉行が弱体化しているという情報を仕入れ、不敵な笑みを浮かべる。幕府が勝手に内輪揉め始めてくれた上に、鎮西奉行が機能不全に陥っているとなれば、今こそ、立ち上がる好機!まずは鎮西奉行を落とす!と意気込み、鎮西奉行を攻め、これをあっさり落としてしまった。しかし、関東に戦力を集めてしまっているせいで、この情報は幕府には届かない。
それをいいことに烏は活動を活発化させていく。

一方、鎌倉では、北条家が有力御家人達の鎮圧に奔走する中、頼経は、何やらどこかへ向かおうとしていた。
将軍ということもあり、普段中々鎌倉から出られない頼経であったが、関東が嘉禄の乱で混乱している今なら、この混乱に乗じて鎌倉から脱することができるだろうという、若さ故の自由奔放な発想だった。
行先は、当然、都であった。目的は2つ。一つ目は、京の都で開かれる国内最大の蹴鞠大会に出場すること。二つ目は、両親に会うことだ。北条家の目を盗み、鎌倉を脱した頼経は、都に付くとすぐに両親を訪ねた。
頼経との再会に感極まって涙する道家。対して、ストレスフルな子育ての日々を思い出し、手放しで喜べない綸子は席を外す。頼経は道家とたくさん話し、そして一緒に蹴鞠をやった。頼経の蹴鞠の腕は、中々のものであったが、まだまだ道家には敵わなかった。一週間後の蹴鞠大会に向け、親子二人三脚で特訓し、さらに腕に磨きをかけた頼経は、明日、蹴鞠大会に出場する。決戦前夜、武者震いする頼経を明日は応援に行くから頑張れよと鼓舞する道家。
頼経は安堵して眠りに着いた。

翌日、いつもより少し早く起床し、入念に準備する頼経。外は、よく晴れた快晴の空が広がっていた。
準備万端、天候OK、頼経はお供のものを引き連れて会場へ向かった。道家も後から会場へ向かった。
蹴鞠大会は予定通り開催され、順調に試合が進んでいく。次は、頼経の番だ。鎌倉で零に習って始め、たくさん練習し、直前に父と特訓もできた。今までの特訓の成果を発揮してやる!と意気込みながら、前の試合を眺める頼経。そんな頼経を見守る道家。そこには幸せに満ちた、親子の姿があった。
頼経の命を狙う、腹を空かした烏が忍び寄っていることなど、露も知らずに。(続く)
しおりを挟む

処理中です...