訳アリ兄妹 

いしぽよ

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第2章 雪乃との日常

第16話 俺、雪乃と旧南都へ行く3

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雪乃「あ、あのー、あのー、そ、そのー、そのー、えーっとぉー、そのー、あの!あの!」
通行人「うわぁ!びっくりした!」
雪乃「猫又ちゃんを知っていますか。知ってますか知ってますか知ってますか知ってますか知ってますか。」
通行人「うわぁ!もう一体何なんですか!猫又?知らない訳がないだろう!ていうか怖っ!」
雪乃「あああ、行ってしまった。」
克海「はっはっはっはっはっ!雪乃、聞き方下手くそすぎ笑」
雪乃「う、うるさい!とにかくうるさい!そ、そこまで言うのであれば、お手本を見せて頂きたく?」
克海「いいだろう!見ておけ!」
克海「あのぅ、ちょっとお時間よろしいでしょうか?」
通行人「はい。構いませんが。」
克海「ありがとうございます。今、巷で話題になっている猫又という怪物を探しているのですが、何か知っていませんか?」
通行人「ああ、知っているよ。というか、ここら辺の者で知らない者はいないと思うがね。」
克海「では、その猫又について色々教えて頂けませんか?」
通行人「ああ、だったら、昨晩猫又に襲われたという男がいますので、彼に聞いた方がいいでしょう。私は生で見たことがありませんから、噂レベルのことしか知りませんし。
紹介しますよ。」
克海「お願いします!」
通行人「では、こちらへ。」
雪乃「兄様、中々やる男であるな。」
克海「まぁな?」
雪乃「...........」
頬を赤らめて目線を反らす雪乃。
通行人「ほら、着きましたよ。あのお方です。」
見ると、そこは漁師の家であった。そこにはいかにも酒好きそうな親父が横になっていて妻に身の回りの世話をしてもらっていた。
克海「あのーごめんください。昨晩、猫又に襲われたというのはあなたですか?」
漁師「え?ああ、そうだけど。あんたら誰?」
克海「猫又を探しているものです。」
漁師「猫又を探し出して何しよってのさ。」
克海「この子が友達になりたいそうで。」
雪乃「え、えへへへへ。」
漁師「はぁ?何馬鹿なこと言ってんのか知らないが、生半可な覚悟であれに会いに行こうとしない方がいいぞ?最近ここらで猫又が頻繁に出没しててな、退治しに行った警察たちは誰も帰ってこなかったって話だ。おれは昨晩、漁の後にその猫又に襲われてな、見ての通り大怪我負っちまってしばらく漁にいけない体にされちまったよ。漁の後だったもんで俺は大量の魚を背負っていてな、どうやらそれがいけなかったらしい。
奴はやっぱり猫なだけあって魚が好物だから、魚の匂いに反応して俺を見つけて襲ってきたみたいだ。」
克海「それにしても、よく生還できましたね。警察でも生還できなったというのに、漁師のあなたが、、、一体どうやって逃げたんです?」
漁師「そりゃあ、自力で逃げられたわけじゃない。警察官の姉ちゃんが助けてくれたんだよ。」
克海「警察の姉ちゃん?」
漁師「ああ、おれが襲われて大怪我負わされて、トドメ刺されそうになって、もうダメかと思ったその時、急にさっと体格のいい姉ちゃんが現れてな、俺を抱きかかえて間一髪のところを救出してくれたんだよ。その後、その姉ちゃんはその猫又と刀でやり合ってな。その姉ちゃん、相当な剣術の使い手みたいで猫又と互角にやり合ってたぜ。姉ちゃんの刀と猫又の爪がぶつかり合って火花を散らしててな。かっこいい姉ちゃんだった。しばらくすると、その姉ちゃんの刀が猫又の腹を捉えてな。猫又は大量の血しぶきを上げてすげえ悲鳴を上げてたよ。ただ、あっという間に傷が塞がっちまってな。姉ちゃんもびっくりしてた。でも、姉ちゃんには勝てないと思ったのか、その後すぐにしっぽ巻いて逃げて行ったな。あれと正面からやり合って生き残ったってんだからあの姉ちゃん大したもんだぜ。」
克海「こ、この時代に日本刀ですか!?その人、どんな人だったんです?」
漁師「背丈は160後半で暗かったから顔はよく見えなかったけど、二十代前半くらいの女だったな。戦いの後、俺を抱きかかえて家まで運んでくれてな。いやあ、まさに命の恩人って感じだぜ。聞くところによると、その姉ちゃんは猫又退治の任務を受けてやってきたらしい。飛び級で出世を続ける若きエリートだそうで、日本刀を持つことを認められていると言ってたな。」
克海「なんだかすごいですね、、、ま、まぁ、とにかく、我々と同じく猫又を探しているものがいるということですね。」
漁師「ああ。そういうことだ。ただ、相当腕に自信がない限り、あれを探すのは止めた方がいい。死ぬぞ?」
克海「貴重な情報ありがとうございます。」
漁師「ああ、わかったら猫又探しなんてやめて、とっととこの町から立ち去りな。」
克海「検討致します。ご忠告どうもありがとうございます。では、我々はこれで。」
漁師の家を後にし、一旦外に出た克海一行。
克海「だれなんだろうな、その姉ちゃんっていうのは。」
雪乃「わからにゃーいけれども、とりあえずまずは猫又ちゃんに会わないと何も始まらないというもの。お魚を買って、夜道を歩いてれば向こうから現れるのではないかにゃ?」
克海母「そうだろうけど、ホントに大丈夫?いざとなったらどうするの?」
雪乃「猫又ちゃんだろうとなんだろうと、相手は猫ちゃんである。このあたしが猫ちゃんと分かり合えないわけがにゃい。」
克海「どうなっても知らないぞ?最悪、死ぬかもしれん。」
雪乃「そこまでいうなら、二人は近くに隠れていればいい。あたし1人で猫又ちゃんと会うので。」
克海母「そ、そんなの危険すぎよ!」
雪乃「カカ様!あたしを信じるにゃ。」
珍しく真剣な顔つきの雪乃。
克海母「あたしより先に死んだら許さないからね!」
雪乃「大丈夫にゃあ!」
その晩、先ほどの漁師から何匹か魚を買って、夜道を一人で歩く雪乃。それを陰から見守る克海母と克海。
時刻は深夜2時、丑三つ時だ。
雪乃はとぼとぼ歩いている。すると!雪乃の背後に巨大な猫の影が現れ、雪乃に猛スピードで近づいていく!
克海母(雪ちゃん!危ない!!気づいて!!)
克海(ゾクゾクゾクゾク!!な、なんだあれは!?で、デカすぎる!あんなサイズの猫、さすがに許容できない!ていうかその前に雪乃が危ない!こ、これはマズいぞ!!)
その巨大な猫の影は雪乃の半径10メートル内に入るとついに具現化し、体長3メートルの巨大猫となり雪乃に急接近する!
克海(あ、あれが具現化した姿!?だ、ダメだ、、、直視できない、、、前世の記憶がぁぁ、、、)
自分より大きな猫を目の当たりにし、前世の死の記憶が鮮明に蘇ってしまった克海は、全身に鳥肌が立ち、恐怖でその場にうずくまってしまう。
克海母「!?克海!?克海!?どうしたの克海!?」
しかし克海の心配をしている暇はなかった。猫又は雪乃の至近距離まで接近すると、ついに爪を立て、雪乃に襲い掛かる!
猫又「にゃあああああ!!!」
克海「ぎゃああああああ!!」
克海は雪乃が猫又に襲い掛かられている様を前世の自身と重ね合わせて悲鳴を上げる。
克海母「いやあああああ!!雪ちゃん逃げてぇぇ!!克海は克海で一体どうしたっていうのよぉぉ!!」
雪乃「...スッ」
猫又「!!?」
猫又の鋭い爪が雪乃を切り裂かんとした瞬間、雪乃は背を向けたままその攻撃を交わした。そして猫又は雪乃の姿を見失った。
猫又「きょろきょろ、、、」
雪乃「ふふふ、ここだにゃあ!」
猫又「!!?」
なんと雪乃は猫又の肩の上に乗って、足を組み上げていた!
雪乃「んー!!猫又ちゃん!やっと会えて嬉しいにゃあ!あたしは日本全国の猫ちゃんとお友達になる娘、三条雪乃である!よろしくにゃあ!」
猫又「...ポカーン」
克海母・克海「ですよね!!笑」
雪乃「初めましてでこんなにも物凄い勢いでじゃれ合おうとするなんて、随分とフレンドリーな猫ちゃんと見た!唯ちゃんとは大違いであるな。
あの子は打ち解けるまでに随分と月日を費やしたものである!あの子はいわゆるクールキャットというやつ。」
克海「あ、あの子何を言ってるんですかね、カカ様。」
克海母「ええ、さすがにあたしも付いていけませんわ、克海殿。」
猫又「にゃああああああああ!!!!」
雪乃「わお!随分と元気な猫ちゃんであるな!ほら、話なら聞いてやるのである!ペン吉!」
ペン吉「はいよ、通訳な」
猫又「この俺様の攻撃を避けるなんてこしゃくな娘め、俺と友達になるだとぉ?笑わせんな、今すぐ殺してやる!」
雪乃「な、なんと!俺様系の猫ちゃんとは!初めて出会ったのである!これは是が非でもお友達になりたーいというもの!」
すると雪乃は猫又の頭にぎゅーっと抱き着く。
雪乃「よろしくにゃああ~!」
猫又「この!ふざけやがって!」
猫又は雪乃を振り落とそうと頭を振り回す。
雪乃「ぎゃははははっ!いくらなんでも照れすぎにゃ!これは、いわゆる好き避けというやつ?もっと素直になるにゃあ~!」
猫又「こやつめ!」
猫又は鋭い爪で雪乃を襲う。しかし雪乃はこれをひらりと交わす。
雪乃「ははーん!中々のツンデレ猫ちゃんと見た!可愛い猫ちゃんだにゃ!ん?」
猫又「うっ、くそ、、」
猫又は雪乃に攻撃を交わされ、自分の爪で自分の肩を切り裂いてしまった。
雪乃「だ、大丈夫かにゃ!!?か、可哀そうに、すぐ手当してやるにゃ!」
雪乃はカバンから包帯を取り出すと猫又の肩にぐるぐると巻き付け、出血を止めた。
猫又「........」
克海母「話と違って、傷口勝手に塞がらなかったですね。雪ちゃんが止血しなければどうなっていたんだろ。」
克海「もしや自分でつけた傷はすぐに治癒させられないのでは?」
克海母「あ、なるほどね」
猫又「お前、どうして手当なんか、こんな醜い俺の為に、、、それに、さっき可愛いといったな?こんな俺が可愛いのか?」
雪乃「えっへん!お友達が困っていたら助けるのは当然である!それに、おみゃあは十分可愛いにゃ?初対面でこんなに激しくじゃれ合ってきた猫ちゃんは初めてにゃ!」
猫又「お前、名は何と言ったか?」
雪乃「さんじょー!ゆきのである!」
猫又「雪乃か、、、お前、珍しい人間だな。」
雪乃「んー?そうであるか?」
猫又「ああ。」
そこへ一人の女の影が現れ、物凄い速さで猫又に近づいていく!
克海「なんだあの女は!?」
その女は猫又を射程圏内に捉えるや否や、すぐさま猫又を深く切りつける!
「バシィッ!」
猫又「ぎゃああああああ!!」
雪乃「あああ!ね、猫ちゃん!!だ、誰にゃあ!こんな酷いことするのはぁ!」
猫又「雪乃、お前、こうやって俺を油断させて隙を作り、仲間におれを攻撃させる作戦だったんだな。やっぱり人間は信用ならん!」
雪乃「ああ!待つにゃあ!それは誤解にゃあ!勘違いは止めて頂きたいというものぉ!ああ!行っちゃった、、、」
猫又はさっと暗闇に姿を消した。
雪乃はカンカンに怒っていた。
雪乃「だ、誰にゃあ!!!せっかくお友達になれそうだったのに邪魔したのはぁ!!姿を見せるにゃあ!」
???「え?あ、あれ?どこかで聞いたことのある声だと思ったら、雪ちゃんじゃない!!」
雪乃「へ?んーっとぉ、、、どこかで見たことあるような?」
雪乃は目を点にして、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。
すると、カバンの中から唯が飛び出し、女に抱き着く。
唯が抱かれている様を見て雪乃は目の前の女が誰か思い出す。
雪乃「ああああああああ!!あ、明日香ぁぁ!!」
明日香「雪ちゃん久しぶり!元気そうね!唯も久しぶり!」
唯「にゃああああ~。」
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