追放された魔法使いの巻き込まれ旅

ゆり

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3章 依存国ツィーシャ

遺された者 (リュカオンside)

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「─────それで、私は託されたこの『クレア』の杖をあるべき場所に還しに行くために旅をしてるの」
「………………」

言葉が、出なかった。

軽く予想はしてたけど………本当に大魔協に殺されたのか。
見た目も、仲間を呼ぶ合図も、使う魔法の属性も、大魔協の特徴に合致する。

『クレア』は大魔協で毎年更新される死者のリストで殉死扱いされていた。
僕たちを見限ったのに、どうして殉死扱いされているのか不思議でたまらなかったけど………不祥事をもみ消したかったのか。

「はは……………」

自然と笑いが込み上げてきた。





『リューク!私たち同じところに配属だって!これからもよろしくね?』

同じ時期に入っただけで全く話したこともなかったのに、僕のことを知ってくれていた。

『…………リューク、あの子たちは悪いことでもしたのかな。私たちのほうが悪いことをしてる気がしない?』

配属先で見せられた現実に、自分ごとのように心を痛めて。

『リューク、見てっ!あの子たちが笑ってくれるの考えたの。まずは大きく吸って───』

自分ができることを、と任務にないことをして寄り添い続けた。

『いつか、世界を旅してみたいなぁ。リュークもそういう夢ない?』

何気なさそうに語っておいて、希望に満ちた瞳を見逃さなかった。

『明日、あの子とここを去る』

任務よりも、自分の夢よりも、人を助けることを決意して。

『リュークは、困ってる人を見て助けられなかったら後悔しちゃうもんね?』

はぐらかそうとしていたけど、少し涙が出そうになっていたことを知っている。

『じゃあね、リューク。元気でやってってね』

元気でと言ったのに、次に会ったとき、新聞で名前を見つけたと思ったら死んでいて。



元気じゃなかったのかよ。
殉死ってなんだよ。
勝手に死ぬなよ。



文句ばかり出てきて、涙が出てこなかった。
あの日から、僕はずっと止まっていた。



「あの、リューク………?」

何も言わない僕に恐る恐る声をかける『ちびっ子』は、不安げだった。
僕と目が合うと、すぐに目を逸らして、うつむきがちになった。

「…………ごめんなさい」
「え?」

突然謝られて何事かと驚いていると、『ちびっ子』はそのまま続ける。

「私のせいで……『クレア』は命を落としてしまった、から。
私が、あのときもっと……………っ」

『ちびっ子』は顔を手で覆いながら嗚咽を漏らして、言葉を詰まらせる。
僕はそんな『ちびっ子』を見て、どうして『ちびっ子』が話せそうになかったかわかった気がした。

怖かったんだろう。
本当のことを話して、『クレア』と長くいた僕に責められることが。
ずっと、負い目を感じているんだろう。
あの日の出来事を思い出しては、たらればで自分を非難し続けて。

ずっと抱え込んできたんだろう。

僕は泣き続ける『ちびっ子』の背中をさすりながら最大限優しく声をかけた。

「誰も悪くない。『ちびっ子』も『クレア』も、誰も悪くない。
『クレア』も、まだ杖に宿ってるよ」


死んだら体が戻ることはない。
でも、遺された物や思い出は色褪せない。

杖に『クレア』は想いを託して死んだ。

『クレア』は予期しない災難に見舞われて、死んでしまったけれど、『ちびっ子』を守れて本望だったのかもしれない。

なんなら、『クレア』に会いに行くために旅を始めて、いろんな場所を杖として巡ることができて喜んでいるかもしれない。
本当に考えてそうだし。

殉死でも、寝首をかかれたわけでもなく、守りたいものを最期まで守って死ぬことができたと知れただけでも嬉しかった。


………でも、『クレア』のもとまで『ちびっ子』が会いに行くのは求めてないだろうな。
まさか託した杖が『ちびっ子』をそうさせているなんて思いもしていないんだろう。


あのときから動かなくなった時間が、動き出した気がする。

『クレア』の死が僕や『ちびっ子』に大きな傷跡を残したのは確実だけど。
痛み分け、かな。

自然と流れ出た涙を拭って、僕は泣き続ける『ちびっ子』をあやし続けた。


遺された者として、けじめをつけてやらないと気が済まない。
また、決意が固まった。
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