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1章 商業都市フレンティア
いただきます
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ルークに抱えられてようやく我に返ったクレアは、そのままルークに晩餐の部屋まで連れて行かれた。
クレアがしょっちゅうルークの胸を叩くので、ルークは晩餐の部屋に入ったところで、笑いながらクレアを下ろした。
クレアとルーク以外の皆はすでに準備を終え、席についていた。クレアは子供たちの礼儀正しさに感心した。
2人も席に着いたのをシスターが確認すると、シスターは手を2回叩いた。
「それでは今日も、豊穣の神ラトゥスからいただいた命とここに辿り着くまでの自然に感謝しましょう。みなさん、ロザリオを出してください」
シスターのどこまでも透き通るような声を聞いて、子供たちとルークは、慣れた手つきで首にかけていたロザリオを服から取り出した。
フレンティアは商業都市だ。
自分たちが売る商品が、自分たちのもとへ無事に辿り着いて卸されるまでの過程に、重要性と感謝を示すことが当たり前となっているのだ。
そのため、フレンティアの人々や商人を志す者は自分の商売に関連する全ての神を信仰する多神教が多く、互いを尊重する。
だからこそフレンティアは大陸一の宗教国家、ナリスケレアと並ぶほど信者が多いと言われている。
フレンティアの人々にとっては食事の前に豊穣の神、ラトゥスに感謝することが当たり前で皆が自分のロザリオを生まれたときにもらうのだが。
クレアはフレンティア出身ではないため、ロザリオを持っていなかった。
いや、何も信仰していないと言うほうが正しいだろう。
魔法使いでも魔法の神、オメルタを始めとする信者はいる。むしろ多数だ。
信心はさておき、自分の所属する場所によって信仰する必要が出てくるからだ。
クレアが所属する大陸魔法使い協会も例に漏れず、魔法の神、オメルタと全能神、ガイアを信仰しており、「特別な事情を除いたすべての者」が信仰することが協会の定める書に記されている。
だというのに、クレアは信仰をしていない。
誰も不思議に思わないのはここが宗教に寛容なフレンティアだからだろう。
皆がラトゥスに感謝を述べる間、クレアは天を仰ぎ、誰にも聞こえないほどの小さな声で何かをつぶやいた。
「へぇ…ルークさんはここで育ったんですね」
晩餐の席で隣になったクレアとルークは今日1日の振り返りから話を始め、ルークの生い立ちとこの建物が孤児院だという話をしていた。
ルークの生い立ちをいとも簡単に受け入れたクレアは、ルークにただ、「頑張ったんですね」とだけ言った。
納得したような顔で話を聞くクレアにルークは安っぽい笑顔を見せた。
「そう。だからこっちが俺の素。いきなり態度変わって驚かせたと思うし、ごめんね」
『王子様』から『プレイボーイ』に転身し、手をひらひらと振るルークを見て、クレアは小さく笑った。
「いえ、私はこっちのが好きです」
「………そう?」
予想外の答えだったのか、ルークは少し受け答えが遅れた。
ルークは口のあたりを急にバッと手で覆った。
ルークの口もとは震えながらもにやけていた。
クレアがしょっちゅうルークの胸を叩くので、ルークは晩餐の部屋に入ったところで、笑いながらクレアを下ろした。
クレアとルーク以外の皆はすでに準備を終え、席についていた。クレアは子供たちの礼儀正しさに感心した。
2人も席に着いたのをシスターが確認すると、シスターは手を2回叩いた。
「それでは今日も、豊穣の神ラトゥスからいただいた命とここに辿り着くまでの自然に感謝しましょう。みなさん、ロザリオを出してください」
シスターのどこまでも透き通るような声を聞いて、子供たちとルークは、慣れた手つきで首にかけていたロザリオを服から取り出した。
フレンティアは商業都市だ。
自分たちが売る商品が、自分たちのもとへ無事に辿り着いて卸されるまでの過程に、重要性と感謝を示すことが当たり前となっているのだ。
そのため、フレンティアの人々や商人を志す者は自分の商売に関連する全ての神を信仰する多神教が多く、互いを尊重する。
だからこそフレンティアは大陸一の宗教国家、ナリスケレアと並ぶほど信者が多いと言われている。
フレンティアの人々にとっては食事の前に豊穣の神、ラトゥスに感謝することが当たり前で皆が自分のロザリオを生まれたときにもらうのだが。
クレアはフレンティア出身ではないため、ロザリオを持っていなかった。
いや、何も信仰していないと言うほうが正しいだろう。
魔法使いでも魔法の神、オメルタを始めとする信者はいる。むしろ多数だ。
信心はさておき、自分の所属する場所によって信仰する必要が出てくるからだ。
クレアが所属する大陸魔法使い協会も例に漏れず、魔法の神、オメルタと全能神、ガイアを信仰しており、「特別な事情を除いたすべての者」が信仰することが協会の定める書に記されている。
だというのに、クレアは信仰をしていない。
誰も不思議に思わないのはここが宗教に寛容なフレンティアだからだろう。
皆がラトゥスに感謝を述べる間、クレアは天を仰ぎ、誰にも聞こえないほどの小さな声で何かをつぶやいた。
「へぇ…ルークさんはここで育ったんですね」
晩餐の席で隣になったクレアとルークは今日1日の振り返りから話を始め、ルークの生い立ちとこの建物が孤児院だという話をしていた。
ルークの生い立ちをいとも簡単に受け入れたクレアは、ルークにただ、「頑張ったんですね」とだけ言った。
納得したような顔で話を聞くクレアにルークは安っぽい笑顔を見せた。
「そう。だからこっちが俺の素。いきなり態度変わって驚かせたと思うし、ごめんね」
『王子様』から『プレイボーイ』に転身し、手をひらひらと振るルークを見て、クレアは小さく笑った。
「いえ、私はこっちのが好きです」
「………そう?」
予想外の答えだったのか、ルークは少し受け答えが遅れた。
ルークは口のあたりを急にバッと手で覆った。
ルークの口もとは震えながらもにやけていた。
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