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1章 商業都市フレンティア
任せられない
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晩餐を食べ終え、使った食器を片付けると、子供たちは年長について浴場へ向かって行った。
ルークは自室に戻ると言って2階の方へ行ってしまった。
クレアは、晩餐のときから続く子供たちの礼儀正しさに、どこか落ち着かなかった。そんなクレアを見てらシスターは笑った。
「あの子たち、普段はあんなに静かじゃないのよ。今日はあなたみたいな可愛い子が来て緊張してるのかしら。
とにかく、嫌だとは思っていないはずだから、仲良くしてあげてね?」
「はい、もちろんです」
クレアはシスターの言葉に安心すると、外の空気を吸いに中庭へ出た。
庭、と言ってもそこまで広くはなく、フレンティアの中心部にあった噴水でも置いたら、歩く場所もなくなるだろうと思われるほどだった。
端っこには野菜が植えてあり、ところどころ人の名前が書かれた札がささっているのを見るに、自力で育てているのだろう。
上を見上げると、あまり発達していないほうだからか、灯りが少なくて星が見えやすい。
クレアが野宿先を求めて、夜も歩くときに目印にしていた一段と明るく光る赤い星も見える。
(フレンティアは全体の生活水準が高いとは聞いていたけど、格差が小さく済んでるだけなんだろうな…)
1日フレンティアを周って、色んな階層の人に出会った。
商店街や貴族街、そして孤児院がある貧民街に分かれてはいるが、貴族といえど平民寄りの中流階級が多かったり、一律の値段で売る政策によって儲けがまばらではあるもののほぼ均一な商人が多かったりする。
ルークに聞くと、盗みなどの犯罪行為さえしなければ、フレンティアの人々は貧民街にも協力的だという。
先ほど植えられていた野菜も商人がタダで分けてくれたものを使っているそうだ。
そのため、貧民街もそこまで貧困で困っているようではないようだ。
クレアはマジックバックからぼろぼろになった手帳を取り出すと、『商業都市 フレンティア』と最初に書いて、城門や商店街、経済状況などを記していった。
ガシャーンッ!!!!
何かが壊れたような音が聞こえたのは、クレアが商店街について書いている途中の頃だった。
クレアが外に出てから30分は経ったころだ。
地面にガラスが何か硬いものが打ちつけられて壊れる大きな音が聞こえてからすぐ、何かに怯えるように叫び声をあげて数人かが孤児院の前を走り去って行ったようだ。
音の発信源は孤児院からさほど遠くない場所だったため、クレアが気になって見に行こうとすると、
「ダメよ!!!!クレアちゃん!」
後ろから突然、大きな声でシスターに呼び止められてしまった。
鬼気迫る顔で言うので、気圧されたクレアは行くのをやめた。
土地勘のある人が強く止めるのなら行かないほうがいいのだろう、と判断したのだ。
クレアが孤児院の中に戻ると、自室に戻っていたはずのルークが制服を着て真面目な顔で今にも孤児院を出ようとしているところだった。
クレアが戻ったのに気づいたルークはクレアを見ていつもの表情を見せた。
「クレアちゃん、孤児院はどう?」
「え……あ、いいところ、です」
「そう、よかった」
てっきり今起きたことの事情を聞いてくると思っていたクレアは拍子抜けな顔で答えてしまった。
ルークはクレアの後ろにいたシスターの方を見て、また真面目な顔をする。
「シスター、悪いけど俺また出ないとだから。アイツらにもまた埋め合わせする、って言っといて」
「怪我だけは気をつけるのよ?生きて帰ってきなさい」
「大げさだってば」
まるで熟年の夫婦のような会話をして、ルークはシスターに別れを告げた。
そうして、もう一度クレアに視線を戻した。
クレアはシスターとの会話でさっきの音の犯人を追うのだろうと察していた。
クレアはルークに近寄った。
「ルークさん、私を連れて行ってください。役に立ちます」
クレアの言葉にルークは顔を顰めた。
ルークの中には、テッドを捕まえたという役に立つ実績を持っている『魔法使い』クレアと、昼間に見たあどけない表情をする『15歳』のクレアがいた。
確かにクレアを連れていけば役に立つかもしれない。
しかし、クレアを危険に晒して感情の発露が少なくなるかもしれない。
そんなことを考えなくても、ルークの頭の中で、答えは決まっていた。
ルークはクレアに王子スマイルを向けて肩に手を置いた。
「クレアはここでお留守番です」
その言葉をクレアは、一線を引かれたと感じた。
顔が見れない。
ひどく落胆した顔でクレアは、何かを思い出していた。
[子供のくせに][恐ろしい][あの歳で全魔法を覚えるなんて…][悪魔だ][あんな者に国を任せられない]
[追い出せ]
(………あぁ、また)
追い出されるのか_____と思ったとき、ルークがまた口を開いた。
「クレアは強いので、ここを守る役目を与えます」
クレアは驚いて、ぱっと顔を上げる。
そこには、自分と対等な立場で話すルークがいた。
ルークは自分を捨てない。
むしろ、信じてここを任せようとしてくれている。
クレアは何かが込み上げてきて目頭を押さえる。
こんなこと『あの日』からなかった。
「クレア、もう一度聞きます。ここで『お留守番』を任せていいですか?」
ルークは王子スマイルを崩さずにクレアに問い直す。
クレアは涙が出そうになりながらも抑えて潤んでいる瞳で、ルークの目をしっかり見すえた。
「_____はい。任せてください」
クレアの答えにルークは満足したようで、立ち上がった。
シスターに目配せをして後を頼むと、ルークは孤児院をあとにした。
ルークの目の縁には涙が溜まっていた。
「クソ……、あのガキただじゃおかねぇ………」
ルークは自室に戻ると言って2階の方へ行ってしまった。
クレアは、晩餐のときから続く子供たちの礼儀正しさに、どこか落ち着かなかった。そんなクレアを見てらシスターは笑った。
「あの子たち、普段はあんなに静かじゃないのよ。今日はあなたみたいな可愛い子が来て緊張してるのかしら。
とにかく、嫌だとは思っていないはずだから、仲良くしてあげてね?」
「はい、もちろんです」
クレアはシスターの言葉に安心すると、外の空気を吸いに中庭へ出た。
庭、と言ってもそこまで広くはなく、フレンティアの中心部にあった噴水でも置いたら、歩く場所もなくなるだろうと思われるほどだった。
端っこには野菜が植えてあり、ところどころ人の名前が書かれた札がささっているのを見るに、自力で育てているのだろう。
上を見上げると、あまり発達していないほうだからか、灯りが少なくて星が見えやすい。
クレアが野宿先を求めて、夜も歩くときに目印にしていた一段と明るく光る赤い星も見える。
(フレンティアは全体の生活水準が高いとは聞いていたけど、格差が小さく済んでるだけなんだろうな…)
1日フレンティアを周って、色んな階層の人に出会った。
商店街や貴族街、そして孤児院がある貧民街に分かれてはいるが、貴族といえど平民寄りの中流階級が多かったり、一律の値段で売る政策によって儲けがまばらではあるもののほぼ均一な商人が多かったりする。
ルークに聞くと、盗みなどの犯罪行為さえしなければ、フレンティアの人々は貧民街にも協力的だという。
先ほど植えられていた野菜も商人がタダで分けてくれたものを使っているそうだ。
そのため、貧民街もそこまで貧困で困っているようではないようだ。
クレアはマジックバックからぼろぼろになった手帳を取り出すと、『商業都市 フレンティア』と最初に書いて、城門や商店街、経済状況などを記していった。
ガシャーンッ!!!!
何かが壊れたような音が聞こえたのは、クレアが商店街について書いている途中の頃だった。
クレアが外に出てから30分は経ったころだ。
地面にガラスが何か硬いものが打ちつけられて壊れる大きな音が聞こえてからすぐ、何かに怯えるように叫び声をあげて数人かが孤児院の前を走り去って行ったようだ。
音の発信源は孤児院からさほど遠くない場所だったため、クレアが気になって見に行こうとすると、
「ダメよ!!!!クレアちゃん!」
後ろから突然、大きな声でシスターに呼び止められてしまった。
鬼気迫る顔で言うので、気圧されたクレアは行くのをやめた。
土地勘のある人が強く止めるのなら行かないほうがいいのだろう、と判断したのだ。
クレアが孤児院の中に戻ると、自室に戻っていたはずのルークが制服を着て真面目な顔で今にも孤児院を出ようとしているところだった。
クレアが戻ったのに気づいたルークはクレアを見ていつもの表情を見せた。
「クレアちゃん、孤児院はどう?」
「え……あ、いいところ、です」
「そう、よかった」
てっきり今起きたことの事情を聞いてくると思っていたクレアは拍子抜けな顔で答えてしまった。
ルークはクレアの後ろにいたシスターの方を見て、また真面目な顔をする。
「シスター、悪いけど俺また出ないとだから。アイツらにもまた埋め合わせする、って言っといて」
「怪我だけは気をつけるのよ?生きて帰ってきなさい」
「大げさだってば」
まるで熟年の夫婦のような会話をして、ルークはシスターに別れを告げた。
そうして、もう一度クレアに視線を戻した。
クレアはシスターとの会話でさっきの音の犯人を追うのだろうと察していた。
クレアはルークに近寄った。
「ルークさん、私を連れて行ってください。役に立ちます」
クレアの言葉にルークは顔を顰めた。
ルークの中には、テッドを捕まえたという役に立つ実績を持っている『魔法使い』クレアと、昼間に見たあどけない表情をする『15歳』のクレアがいた。
確かにクレアを連れていけば役に立つかもしれない。
しかし、クレアを危険に晒して感情の発露が少なくなるかもしれない。
そんなことを考えなくても、ルークの頭の中で、答えは決まっていた。
ルークはクレアに王子スマイルを向けて肩に手を置いた。
「クレアはここでお留守番です」
その言葉をクレアは、一線を引かれたと感じた。
顔が見れない。
ひどく落胆した顔でクレアは、何かを思い出していた。
[子供のくせに][恐ろしい][あの歳で全魔法を覚えるなんて…][悪魔だ][あんな者に国を任せられない]
[追い出せ]
(………あぁ、また)
追い出されるのか_____と思ったとき、ルークがまた口を開いた。
「クレアは強いので、ここを守る役目を与えます」
クレアは驚いて、ぱっと顔を上げる。
そこには、自分と対等な立場で話すルークがいた。
ルークは自分を捨てない。
むしろ、信じてここを任せようとしてくれている。
クレアは何かが込み上げてきて目頭を押さえる。
こんなこと『あの日』からなかった。
「クレア、もう一度聞きます。ここで『お留守番』を任せていいですか?」
ルークは王子スマイルを崩さずにクレアに問い直す。
クレアは涙が出そうになりながらも抑えて潤んでいる瞳で、ルークの目をしっかり見すえた。
「_____はい。任せてください」
クレアの答えにルークは満足したようで、立ち上がった。
シスターに目配せをして後を頼むと、ルークは孤児院をあとにした。
ルークの目の縁には涙が溜まっていた。
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