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1章 商業都市フレンティア
夜間警備(ルークside)
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「クレア=モルダナティスは10年前に殉死したそうだ」
「……………は?」
セイエ様の言葉が飲み込めなかった。
俺は確かに、クレアを検閲して、孤児院に連れて行って一緒にご飯まで食べたのに。
どうして死んでいるんだ?
俺以外も、納得がいっていない。
当たり前だろう。クレアは確かに俺たちの前で魔法を見せてくれたのだから。
「私も納得していない。だが、これ以上は個人情報だと取り合ってくれなかった。
だから、あとは本人に聞くしかない。
ルーク、明日にでも連れてきてくれないか?
これが本当なら内容虚偽で取り扱わないといけない」
俺は「はい」と答えようとして止まった。
頭の中でさっきの手紙がよぎった。
あの手紙はリリーと引き換えにクレアを連れてくるように書いていた。
今連れ出せないということは、シスターが孤児院に張っている結界が邪魔で入りたくても入れないのだろう。
クレアを狙っているなら、孤児院を出たときを狙われてしまうのでは。
俺はその推測にたどり着いた。
それに、俺はクレアに留守番を頼んだ。
魔法を見せてもらうために連れ出したときは何もなかったが、これから先何があるかわからない。孤児院にいるのが一番安全だ。
俺はセイエ様に向かって深々と頭を下げた。
「すみません。できません」
「……何か事情があるなら聞くが」
セイエ様の声に怒りが含まれているのがわかる。
クレアが虚偽をしていることを庇おうとしているのでは、と思われているのだろう。
俺だって、話せるなら話したい。
でも、さっき無理だったんだ。
2人に協力を得ようとして事情を説明したくても、何かの力が俺を孤立させるためなのか説明させてくれなかった。
俺はセイエ様にもっと深々と頭を下げる。
「………………すみません」
「なぁ、本当に何も言わないのか?」
「ルーク隊長、やはり……」
「………悪い、もう少し待ってくれ」
俺は笑ってハースとゼルナの言葉を遮った。
さっき、事情を話さなかった俺はセイエ様に呆れられて部屋を追い出された。
そして、夜間警備を任された。連帯責任でハースとゼルナも、だ。
まあ、妥当だよな。
俺がクレアの偽装に関わっているかもしれないと疑われたのだろう。
明日、リリーを救出できたらクレアを連れてこよう。
俺は簡単にリリーを救出できると思い込んでいた。
エントランスに戻ると、休んでいたシスターが俺にひとこと言って帰ろうと待っていた。
「今日は遅いから中央地区の孤児院で一泊させてもらうことになったわ。
向こうのシスターにも事情を話して、もう1日任せることにしたの。子供たちには言わないようにお願いしたから、あなたも帰るなら今日のことは言わないようにしてちょうだい。
それと、仕事ばっかりやってないでちゃんと休みを取って栄養のある……」
「あぁー、わかったわかった、送ってくから。話はそのとき聞くって」
そうだった、シスターのひとことは15分くらい続く小言なんだった。
俺はシスターの背中を押して一緒に警備舎を出る。
俺だけで送っていけるのに、ハースもゼルナも一緒についてくる。
2人も俺に言いたいことがあるんだろうな。
俺は困ったように笑ってしまった。
「じゃあ、ゆっくり寝ろよ」
「えぇ、ありがとう」
「ルークばいばーい!!」
「………おう、またな」
俺はシスターを送り届けて子供たちとも別れを告げると、3人で孤児院を後にした。
「ルーク隊長は子供に人気なんですね」
「こいつ、面倒見いいし、子供好きだからな」
「やっぱり陽キャだ……」
俺たちはすっかり暗くなった道を歩きながら話していた。
俺に聞きたいことがあったはずの2人は何も聞いてこなかった。
俺たちは警備舎に戻って夜間警備のために装備をつけて、また警備舎を出た。
連帯責任で夜間警備になったのに、2人は何も言わずに俺と夜間警備に出てくれる。
優しさ、だろうか。
嬉しいようで申し訳ないような気がした。
夜間警備を任された食事街は、仕事終わりの職人が酒を飲み交わしていた。
昼は子連れ向けのスイーツや胃もたれしないさっぱりしたものがたくさん売られているが、夜になると大人向けに酒のつまみや脂の乗った肉などがそこら中で売られている。
ここの警備はいつも空腹との戦いだと、いつも言われている。
確かに美味そうだ。
俺も空腹との戦いに移りそうになりながら警備を続けていると、話しかけてくる人が増えてきた。
しかも、『王子さまの』俺のことを知っている女性ばかりだ。
「ルーク様、夜間警備なんて珍しいですね!その………よかったら、一緒に飲まない?」
「ちょっと!邪魔しないで!ルーク様は私と約束してるのよ」
「フン、この女狐……嘘なんてついて恥ずかしくないの?」
「あらぁ、ルーク様ぁ。わたしぃ、もうフラフラで歩けないかもぉ……」
どれもめんどくさい女性ばかりなど、口が裂けても言えないな。
本当に、外面だけはいいから困る。
これは断じて自慢ではない。俺は困っているんだ。
本当に外面しか良くないから。
それ以外じゃ、役立たずだから。
「うわぁ………囲まれちゃってますよ。話には聞いてましたけど、凄まじい人気ですね……」
「まあ、あいつは外面だけはいいからな。絆されて捕まったやつもいるくらいだし」
「助けないんですか?」
「はは。助けたらあいつ、絶対落ち込むよ」
少し離れたところで女性に囲まれた俺をながめながら、ハースとゼルナが話していたことを俺は知らない。
「じゃあねぇ~ルーク様、夜間警備がんばってぇ~」
「ありがとうございます。レディが安心してフレンティアに居られるよう、今日も頑張りますね。よい夜を」
俺は最後の女性が手を振っているのが見えなくなるまで笑顔を貼り付けていたが、見えなくなると大きく息を吐いた。
疲れた…………。
今日は酒が絡んでいる分やけにめんどくさい女性が多かった。
途中で胸の大きさを競って、服を脱ぎはじめたときはさすがに肝が冷えた。
巻き込まれないように離れた場所にいたハースとゼルナが俺のもとへ戻ってきたため、しぶしぶ警備を再開した。
本当はこっちがメインなんだけどな………。
「……………は?」
セイエ様の言葉が飲み込めなかった。
俺は確かに、クレアを検閲して、孤児院に連れて行って一緒にご飯まで食べたのに。
どうして死んでいるんだ?
俺以外も、納得がいっていない。
当たり前だろう。クレアは確かに俺たちの前で魔法を見せてくれたのだから。
「私も納得していない。だが、これ以上は個人情報だと取り合ってくれなかった。
だから、あとは本人に聞くしかない。
ルーク、明日にでも連れてきてくれないか?
これが本当なら内容虚偽で取り扱わないといけない」
俺は「はい」と答えようとして止まった。
頭の中でさっきの手紙がよぎった。
あの手紙はリリーと引き換えにクレアを連れてくるように書いていた。
今連れ出せないということは、シスターが孤児院に張っている結界が邪魔で入りたくても入れないのだろう。
クレアを狙っているなら、孤児院を出たときを狙われてしまうのでは。
俺はその推測にたどり着いた。
それに、俺はクレアに留守番を頼んだ。
魔法を見せてもらうために連れ出したときは何もなかったが、これから先何があるかわからない。孤児院にいるのが一番安全だ。
俺はセイエ様に向かって深々と頭を下げた。
「すみません。できません」
「……何か事情があるなら聞くが」
セイエ様の声に怒りが含まれているのがわかる。
クレアが虚偽をしていることを庇おうとしているのでは、と思われているのだろう。
俺だって、話せるなら話したい。
でも、さっき無理だったんだ。
2人に協力を得ようとして事情を説明したくても、何かの力が俺を孤立させるためなのか説明させてくれなかった。
俺はセイエ様にもっと深々と頭を下げる。
「………………すみません」
「なぁ、本当に何も言わないのか?」
「ルーク隊長、やはり……」
「………悪い、もう少し待ってくれ」
俺は笑ってハースとゼルナの言葉を遮った。
さっき、事情を話さなかった俺はセイエ様に呆れられて部屋を追い出された。
そして、夜間警備を任された。連帯責任でハースとゼルナも、だ。
まあ、妥当だよな。
俺がクレアの偽装に関わっているかもしれないと疑われたのだろう。
明日、リリーを救出できたらクレアを連れてこよう。
俺は簡単にリリーを救出できると思い込んでいた。
エントランスに戻ると、休んでいたシスターが俺にひとこと言って帰ろうと待っていた。
「今日は遅いから中央地区の孤児院で一泊させてもらうことになったわ。
向こうのシスターにも事情を話して、もう1日任せることにしたの。子供たちには言わないようにお願いしたから、あなたも帰るなら今日のことは言わないようにしてちょうだい。
それと、仕事ばっかりやってないでちゃんと休みを取って栄養のある……」
「あぁー、わかったわかった、送ってくから。話はそのとき聞くって」
そうだった、シスターのひとことは15分くらい続く小言なんだった。
俺はシスターの背中を押して一緒に警備舎を出る。
俺だけで送っていけるのに、ハースもゼルナも一緒についてくる。
2人も俺に言いたいことがあるんだろうな。
俺は困ったように笑ってしまった。
「じゃあ、ゆっくり寝ろよ」
「えぇ、ありがとう」
「ルークばいばーい!!」
「………おう、またな」
俺はシスターを送り届けて子供たちとも別れを告げると、3人で孤児院を後にした。
「ルーク隊長は子供に人気なんですね」
「こいつ、面倒見いいし、子供好きだからな」
「やっぱり陽キャだ……」
俺たちはすっかり暗くなった道を歩きながら話していた。
俺に聞きたいことがあったはずの2人は何も聞いてこなかった。
俺たちは警備舎に戻って夜間警備のために装備をつけて、また警備舎を出た。
連帯責任で夜間警備になったのに、2人は何も言わずに俺と夜間警備に出てくれる。
優しさ、だろうか。
嬉しいようで申し訳ないような気がした。
夜間警備を任された食事街は、仕事終わりの職人が酒を飲み交わしていた。
昼は子連れ向けのスイーツや胃もたれしないさっぱりしたものがたくさん売られているが、夜になると大人向けに酒のつまみや脂の乗った肉などがそこら中で売られている。
ここの警備はいつも空腹との戦いだと、いつも言われている。
確かに美味そうだ。
俺も空腹との戦いに移りそうになりながら警備を続けていると、話しかけてくる人が増えてきた。
しかも、『王子さまの』俺のことを知っている女性ばかりだ。
「ルーク様、夜間警備なんて珍しいですね!その………よかったら、一緒に飲まない?」
「ちょっと!邪魔しないで!ルーク様は私と約束してるのよ」
「フン、この女狐……嘘なんてついて恥ずかしくないの?」
「あらぁ、ルーク様ぁ。わたしぃ、もうフラフラで歩けないかもぉ……」
どれもめんどくさい女性ばかりなど、口が裂けても言えないな。
本当に、外面だけはいいから困る。
これは断じて自慢ではない。俺は困っているんだ。
本当に外面しか良くないから。
それ以外じゃ、役立たずだから。
「うわぁ………囲まれちゃってますよ。話には聞いてましたけど、凄まじい人気ですね……」
「まあ、あいつは外面だけはいいからな。絆されて捕まったやつもいるくらいだし」
「助けないんですか?」
「はは。助けたらあいつ、絶対落ち込むよ」
少し離れたところで女性に囲まれた俺をながめながら、ハースとゼルナが話していたことを俺は知らない。
「じゃあねぇ~ルーク様、夜間警備がんばってぇ~」
「ありがとうございます。レディが安心してフレンティアに居られるよう、今日も頑張りますね。よい夜を」
俺は最後の女性が手を振っているのが見えなくなるまで笑顔を貼り付けていたが、見えなくなると大きく息を吐いた。
疲れた…………。
今日は酒が絡んでいる分やけにめんどくさい女性が多かった。
途中で胸の大きさを競って、服を脱ぎはじめたときはさすがに肝が冷えた。
巻き込まれないように離れた場所にいたハースとゼルナが俺のもとへ戻ってきたため、しぶしぶ警備を再開した。
本当はこっちがメインなんだけどな………。
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