サイハテの召喚士

茶歩

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第1章 幕開け

1 もう1人のオッドアイ

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 例え龍でも神獣でも、身の毛もよだつ化け物でも。
 一声かければ瞬く間に呼び寄せてしまうーーー


 一子相伝として力が受け継がれる【召喚士】は、その絶大なる力から国王にも唯一肩を並ばせることができる存在だ。

 召喚士は、この世界にただ1人しか存在しない。

 基本的には父、又は母から子へ‥
子を授かる前に死んだ場合は血族へとその力が相伝される。

 この召喚士の力のおかげで、大きな島国であるこのロルタ王国は、久しく戦争の無い平和な国である。


 前召喚士であるナターシャが姿を消してから13年。
 血族だというウォングバッドが召喚士として現れて以降‥ただ1つのを除き、この国は今日も穏やかなのだ。








「ねぇブラウン、これなんて読むの?」


 砂浜に打ち上げられた布をブラウンにぐいっと差し出す。
 ブラウンは目まで隠れるほどに深く被ったバンダナの隙間から、探るようにその布に書かれた文字を読み取った。


「【ウォングバッド様万歳】って書いてある。式典かなんか開かれたんじゃないか?」

「式典??」

「さぁ、それはわからないけど」


 ブラウンは、物心ついた頃からこのZ地区で共に過ごす少年だ。
 まるで兄のようで弟のようなブラウンは、物凄く頭が良くて一度目にしたものは何でも記憶してしまう。

 こうしてしょっちゅう砂浜に来ては、打ち上げられた漂流物を元に独学でこの世を知ろうとするほどの天才なのだ。

 きっとZ地区なんかじゃなくもっともっと上の地区に生まれ落ちていれば、ブラウンは不自由なく勉強できたんだろうなぁなんて思う。

 黒いバンダナから肩までの黒い髪をそよそよと泳がせて、ブラウンは私を見た。


「カラーの出番だな」


 ブラウンにそう言われて辺りを見回すと、砂浜にベヒーモスが一匹顔を覗かせている。


「ベヒーモスかぁ。肉かったいんだよなぁ」


 私は気乗りしないまま、シュルルッと肩に背負っていた双剣を握り、ベヒーモスに飛びかかった。

 こちらに気が付き、威嚇音を鳴らすベヒーモスに対し、その大きく長い鼻に飛び乗りながら双剣でその眼を潰す。
 あとは単純作業だ。暴れるベヒーモスを見ると罪悪感に襲われるけど、これも生きていくため。


 ごめんね、ありがとう


 心の中でそう言って、トドメを刺す。
これで3日は狩をしなくていいかな。


「カラーはさすがだなぁ。
たぶん、他の地区じゃあベヒーモスなんてかなりの大物だぞ?まぁこのZ地区でも、こんな簡単にベヒーモス倒せる人はいないだろうけどな」


「へへ、そうかなぁ?
目潰せばちょちょいのちょいだよ?」


「いや、そのちょちょいのちょいが可笑しいんだよ。鼻に飛び乗れるのもカラーくらいなんじゃない?まずこの大きな牙がね‥本当カラーはすごいよ」


 ブラウンがあまりにも褒めてくれるもんだから、私は少し小っ恥ずかしくなった。


 私たちが住むこのZ地区は、この国の【サイハテ】の地。

 ステータスを明確化され、住み分けられたこの国の‥1番の底辺の地。


 山・海を中心に集落を作って原始的な生活をしているこのZ地区は、狼や熊だけではなく魔物までも平然と蔓延る、人間には住みにくい世界だ。

 私はこの生活が好きだった。体の私、頭のブラウン。同じ集落で育ち、数年前に集落を飛び出して2人暮らし。

 だけど、きっとブラウンはもっともっと、世界を知りたいんだろうな‥

 バンダナに隠された瞳はなかなか見えないけど、きっとブラウンは欲してる。いつの頃からか、それはなんとなく感じていた。

 だけど上の地区に上がるには、関所で対価を要求される。
 原始的な生活をしているZ地区には【金】という概念がなく、私たちは文字通りの無一文‥。


 ベヒーモスの肉を捌きながら、ブラウンに問う。


「どうしたら上の地区に行けるのかな?」


「Y地区に上がるには1人3コイン。
だから2人で行くと6コインだね」


「コインね~。
どうしたら稼げるのかな。
Z地区にいたらまず無理なのに、Z地区から出れないんだから笑えるよね」


「だな~」


 慣れた手付きで共にベヒーモスを裁くブラウンがふと私を見た。


「‥カラーのそのオッドアイ、なんなんだろうね」


「え?なに急に」


 私の左の瞳は黄色がかっていて、右の瞳は青がかっている。まぁ漂流物の割れた鏡でしか自分の姿を見たことがないんだけど。

 伸びきった白金の髪に、オッドアイ。
まだ膨らんでもいない胸と、身軽で細い体。


「いや、召喚士も代々オッドアイなんだって」


「あーなんだっけ?ウォングバッド様??」


「そうそう。カラーもその血筋かなんかなんじゃないの?」


「あはは。そんなわけないじゃん。
第一、ここでは私は呪われた子って言われてたんだから」


 まぁね、とブラウンがこめかみをぽりぽりと掻いた。



ーーーここは、ロルタ王国。
王と共に召喚士が治める国。

AからZまで、ステータスごとに住み分けられた戦争のない平和な国。


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