妖器伝

茶歩

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第2話 器のあれこれ

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「あ、あのー、ここは?」


まだ涙も流れ続けたまま。
住み慣れた家を出てから数秒も経っていない‥のに。
目の前に広がるのは大きな神社の境内。


「ここは目的地の妖島あやかしとうだよ」


ったくさっきから、妖妖って!
って、何この人。ワープかなんかしたの?


「えっと、私の家の目の前が妖島の神社だったってこと?」


「あは、そんなわけないじゃない」


私の涙のせいで、狐のお面の人の胸元には涙のシミができてしまっている。
本当はもう少しまともに落ち込ませて欲しいんだけど、ツッコミどころ満載でそれどころじゃない。


「‥‥じゃあどういうわけですか」


「僕の名前は二千翔にちか。妖狐をこの身に宿す、君の先輩さ。僕は幽世かくりよを行き来するのが上手だから、こうして現世うつしよと幽世をうまく移動すればワープも可能なわけ。だから多分君が一番乗りだよ」


‥妖狐??幽世??現世??
何言ってるのこの人。

すとん、と地に降ろされる。
二千翔さんを見上げてみると、視線に気付いたようで明るく「よろしくね」と挨拶をしてきた。

おずおずと差し出された手を握り返す。
なんでお面付けてるんだろう。‥要らなくない?


「さすが二千翔。仕事が早いのう」


そんな声と共に、黒い髪がやたらと艶やかな女性が姿を現した。
見るからに巫女さんだ。
私より少し年上ぐらいな感じに見えるけど、ド級の美人。


八重やえ様‥!
平井小春さんを連れて参りました」


二千翔さんがぺこりと頭を下げる。


「小春よ、辛い思いをさせてすまぬな」


「‥いえ」


この八重様って人のせいでこうなったわけではないんだろうし、謝られる筋合いはきっと無い。


「早速だが、これを小春に授けよう」


八重様はにっこりと微笑むと一歩二歩と私に近付き、何やら数珠のようなものを私に差し出した。


「‥‥?」


お守り‥的な?


「妖は、器を好んでやってくるもの。憑依されるのではなく、憑依させてやるのだ。主導権は小春、おまえだ。その為には、この数珠は必要不可欠‥。自分の命より大切に扱え」


「‥ん??‥‥んんん?」


「ん?」


キョトン顔にキョトン顔で返される始末。
なんなのよ、もう少し丁寧に教えて欲しいんですけど。

‥憑依されるのではなく、憑依させてやる?
つまり、憑依されるのは決まりなわけ‥?


「‥憑依されない為にここに隔離されるんじゃ‥?」


‥さっき、二千翔さんは‥‥
妖狐をこの身に宿す、私の先輩だとかなんとか言ってたけど‥


「あはは、違う違う。
そのまま本土にいれば、勝手に憑依されてただの妖になるからここに来たのだ」


「‥どちらにしても、私は憑依される‥てことですか?」


「違う。憑依させてやるのだ!」



いやいや、埒があかない。
私が可笑しいの‥?!私の理解力が足らないのか?!


「‥僕が説明するね」


私と八重様の堂々巡りに助け舟を出したのは二千翔さん。


「お、お願いします」


「妖は器に憑依したがるんだよ。日本全国に器が点在してる状態だと、妖は所構わず憑依しちゃうでしょ?
妖島に器を集めれば、妖はこの妖島にいくらか集中してくれるってこと」


‥いくらか?


「器みんなをこの島に集めてるんですよね‥?いくらかって?」


「よく気付いたね。
この島に招集するのは大きい器の人のみ。例えるならば僕や小春さんは『どんぶり』サイズ。世間には実際には『御猪口おちょこ』サイズの人も沢山いるんだけど‥
御猪口サイズの人たちまで隈なくこの島に集めたら、とんでもない数になっちゃうからね」


「‥‥え」


どんぶりサイズは突然島に隔離されて‥御猪口サイズなら今まで通り平然と生活できるの‥?


「幽世が近づいてるんだよ。だから、今までよりも妖が格段に増えてしまう。その為に、大きい器を集めて、敢えて憑依させる必要があるんだ」


「何故‥?」


私の問いに、二千翔さんは明るい声色で言った。


「妖退治のためさ」


ーーーーはい?


「あやかしたいじ‥?」


「大きい器の人は、より強い妖をその身に憑依させてやることができる。つまり、強い妖の力を扱えるってこと。この島に寄ってきた妖を片っ端から排除できるってわけ」


「‥‥本土の、御猪口サイズの人に寄ってくる妖は‥?」


到底理解が追い付かない。
このオカルトがっ!ってキレてしまいたいくらいにパニック。
なのに、変に冷静な私を自分自身で恨む。
長所と短所は紙一重なのよね、うん。


「もちろん、本土の妖退治も仕事の一環さ。
要は、小春さんはこれから『政府』の仕事として、妖退治をするんだよ」


どういうお仕事ですかそれ‥



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