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第4話 まさかの該当者
しおりを挟む純和風な長屋の中、月を見て泣きじゃくるのは着物を着た私。
どうやら、血が出ているうちは憑依できないらしい。数珠の力を持ってしても制御できないだとか八重様が言ってた。
そして、そんな私の側にいるのは陽さん。
二千翔さんは他の人の送迎に駆り出され、腕っ節がいいらしい陽さんが見張り役として側にいる。
ちなみに、陽さんはもうヘドロから解放されて全く臭くない。
「まだ泣いてんのか」
「‥陽さんだって、分かりますよねこの気持ち」
突然全てを失った、この喪失感と虚無感。
お父さんとお母さんに会いたい。兄弟たちにも会いたい。千郷にも、会いたい。
嘘だと言って欲しい。
「俺はここに来て10年近いから。
もう慣れた」
10年?!
「‥あの、二千翔の話を聞いても疑問だったんですけど。
陽さんも二千翔さんも私の先輩なんですよね‥?」
月明かりに照らされた陽さんの顔は、今朝よりはだいぶ穏やかだ。少なくともあんな殺気は纏っていない。
「あぁ」
「‥‥つまり、今回の妖法が制定される前から、この島はあったってことですか‥?」
じゃなきゃ色々おかしい。
この島の環境も、二千翔さんや陽さんの存在も。
「‥この島はずっと昔から有る」
そう言って月を眺める陽さん。
「‥えっと。幽世が近付いてきてるから、戦力を増やす為に法律として私たちが召集されたってことですか?」
そんなことを二千翔さんが言っていた。
「まぁそういうことだ」
「‥‥」
一体、この気持ちをどこにぶつければいいんだろう。
きっと二千翔さんも、陽さんも。何年も前にこの気持ちを消化したのかな。
政府を責めるのはきっと違う。
打ち出さなければいけない程の状況ってことなんでしょ、きっと。
唯一責めれるとしたら、自分自身が器該当者として生まれてきてしまったことかな。
「‥‥妖って、突然来るんですか?
そうそう来ないなら、2人部屋とかやめて欲しいんですけど」
仮にも今朝まで婚約者がいたんだもん。
男の人と2人きりで朝を迎えろだなんて、抵抗ありまくりなんですが。
「突然来るし、突然憑依する。
まぁここは中央区だから他よりは安心だけどな」
‥中央区?
いっちょ前に名称があるのか。
「安心ならいいじゃないですか」
私がそう言うと、陽さんは小さく息を吐いた。
なによ、その溜息は‥
ムッと陽さんを睨むと突然「入るよ」と声が聞こえ、襖が開いた。
二千翔さんだ。
「やっほー、陽。小春さん」
未だに狐のお面をつけたままの二千翔さん。
そのお面、眼鏡みたいなもんなんだろうか。
「‥いつまで付けてるんだよ」
ていうことは、普段はお面付けてないんだ‥。
「いやぁ、小春さんを驚かせちゃうからね」
「??」
縁側に座る私の隣に腰を掛けた二千翔さん。
陽さんは二千翔さんが来たことで用心棒としての責任が多少減ったのか、腕をぐんっと上に伸ばしたあとに横になった。
こちらに背を向けて寝そべっている。
「どう?失恋の傷は癒えた?」
「癒えるわけないじゃないですか‥
婚約までしてたんですよ?!」
大学生の時にできた恋人。
一緒に就活も頑張って、一緒に社会に出たのに‥
「あはは、そりゃあキツイね」
笑いを溢した二千翔さんを思わず二度見したけど、お面のせいで表情は分からない。
笑うなんて酷すぎやしませんか‥!
「‥‥」
「ああ、ごめんごめん。
でもコッチで結婚できるかもよ?」
「いや、私新たな恋愛とか‥」
しかもみんな憑依されてる人なんでしょ‥?
「彼氏さん、該当者だから。
あのアパートは小春さんの家だから、小春さんにしか葉書送られてないけど、彼氏さんの実家には届いてたんだよ」
「‥‥え?!?!」
つまり‥
千郷も器該当者‥‥?
「あんなに取り乱してたのにね。
自分も該当者って笑えるよね」
なんか二千翔さん辛辣じゃないですか‥?!
え、でも‥それなら‥
また千郷に会えるの‥?
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