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第30話

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 エルマーさんも呼び、3人に対峙してもらった。やっぱりルーン村の村人ではないらしい。エルマーさん曰く近くには山賊の集団がいるそうで、恐らくそこの子分たちなんじゃないかとのことだった。

「山賊だと?知らねぇなぁ!」

と大声をあげるヴィンスに対し、私は質問をぶつけてみた。

「‥昨日、“親分”とかって言ってたよね」

「!!」

 ヴィンスはウッ!と眉を顰め、しまったという顔をした。あまりの分かりやすさに思わず笑ってしまいそうになる。

「‥じゃあその赤髪。その山賊のアジトに案内してくれよ」

 ギルさんがそう言って口角をあげた。

「お前馬鹿だなー‥死ぬぞ」

 ティモシーが思わずそう漏らす。
山賊のアジトに自ら出向くなんて、確かに相当危険な行為だ。

「お前ら3人をここで殺してもいいが、お前らじゃない奴らが代わりに盗みに来るだろ。そしたら殺しても殺してもキリがないんだよ」

「じゃあなんだ?もう盗みに来ないでくださいってお願いしにでも行くのか?」

 ギラギラと交戦的なヴィンスは、いちいちこちらを挑発してくる。
ギルさんに向かって生意気な!と、私がヴィンスの体に巻きついているツタをキリキリと締め上げると、ギルさんはそれを手で制した。

「お前の言う通りだ。取引しに行くんだよ」

「ケッ!山賊に取引が通用するかよ!!
絶対成立するわけないだろ!」

「成立しなければそのまま全滅させるだけ。
こっちの方が手間が省けるだろ?」

 ギルさんはそう言って楽しそうに笑った。ギルさんは顔立ちがすごく整ってるから、こんな時の不敵な笑顔は変に迫力があって恐怖を感じたりもする。その証拠にヴィンス以外の2人はゾッとしたような表情を見せていた。

「うちの親分を舐めんなよ!
お前みたいなヤツなんてイチコロだからな!!」

「はいはい、分かった分かった」

「分かってねーだろ?!お前ぜってー分かってねーだろ?!?!」

 こうして、私とギルさんとツタに巻かれたヴィンスの3人で山賊のアジトに向かうことになった。
 ティモシーとメルヴェンが人質となっていることから、ヴィンスも正直に道を案内してくれた。ルーン村から少し離れると、黄色い土でできた山や崖が多く見えてきて、緑は減少して日差しはとても強くなっていった。プテラス全体が緑に溢れたと思い込んでいたけど、あくまでもプテラスの中のルーン村とその周辺までしか緑の恵みはないんだなぁ‥。

 暫く進むと岩肌に囲まれた小さな集落が出てきた。
出入り口には動物の骨でできたお面を被った人が見張りをしていて、私たちは槍で威嚇された。少し離れた崖の上にはこちらに向かって弓を構えている人までいる。

 き、危険だ‥

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