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第29話
しおりを挟むあーだこーだ煩く騒ぎ立てていた少年達も、1時間もすればだんだんと静かになっていく。
「‥いつまでこうしてるつもりだ?」
リーダー格の赤毛の男の子は、死んだ魚のような目をしながらそう言った。この1時間で得られた情報として、この赤毛の男の子の名前はヴィンス。細長い男の子はティモシー、ぷっくりした男の子はメルヴェンという名前らしい。
「もちろん貴方達を連れていきたいんだけど、生憎こんな夜更けじゃない」
私がそう言うとヴィンスは明らかに眉間に皺を寄せた。
あからさまに血気盛んだなー、この人ー‥。
「夜更けだったらなんなんだ!
緊急ならすぐに動くのが普通だろう!!」
血気盛んだし高圧的なんだけど、“異物のアイナ”という存在を知らないようで、一方的に蔑まれているような感覚じゃなくて、全力でぶつかられている感じが妙に嬉しく思えたりもする。
「緊急‥って言っても、私1人で押さえ込めている状況ですし‥
こんな時間に貴方達を連れて家に戻ったら絶対にギルさんを起こしちゃいますもん」
「なっ!!!」
ヴィンスは顔を真っ赤にして怒った。まるでお猿さんだ。
「そういうわけで、皆さんも朝まで我慢してくださいねー」
嘘だろー!と騒ぐ3人を無視して、私は朝までここで過ごすことにした。
あまりの大木すぎて枝は横になって寛げるほど悠々と太い。
チュンチュんと鳥の囀りが聞こえ、私は目を覚ました。
縛られたままの3人は睡眠不足でぐったりとしてたけど、仕方ないよね。ギライナ泥棒なんだから。
そろそろギルさんの元に連れ帰ってもいいと思い、私は魔法で3人と共に拠点の家に戻った。
戻って驚いたのは、もう既に目を覚ましていたギルさんが、焦ったように家の中をぱたぱたと歩いていたということだ。
「アイナ?!」
そして開口一番がコレ。
いつも“あんた”と呼ばれてたのに‥!
どうしよう‥感動‥
「ギルさん‥!」
「どこに行ってたんだよ。
そして、そいつらはなんだ」
私の後ろにいる縛られたままの3人は、不機嫌そうにしかめっ面をしたままギルさんと私を睨みあげている。
「夜中に窓の外を見たら、ギライナの大木に月明かりに照らされた人影があって‥行ってみたらこの人たちが。私のことまで連れ去ろうとしてたし、ルーン村の人ではないなぁと思って拘束してました」
「‥なるほどな。それで、なんで一晩戻ってこないんだよ」
「ギルさん起こしちゃったら悪いなって‥」
「‥そんなんいいから連れて来いよ‥‥」
「それはそうと、ギルさん何か探してましたか?
ぱたぱたしてましたけど」
「もう見つかったからいい」
ギルさんが少々ご立腹だ。なんでだろう‥。
朝になってから報告しちゃったからかな‥?ヴィンスの言うことは当たってたってことか‥。次からはすぐに知らせるようにしないと‥。
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