公爵家のだんまり令嬢(聖女)は溺愛されておりまして

茶歩

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第38話『男子トーク』

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ガブリエルのあの一方的な溺愛が嫌だった。
だけど‥それが副作用のせいだったのならば‥。

果たしてガブリエルの白魔法は、私の血によるものなのか、そもそもハロルド公爵の目論見に、ガブリエルは荷担しているのか。
それが分からないから、何とも言えないけれど‥


もし、ガブリエルは知らないうちに私の血を摂取させられていて‥
ガブリエルもまた、ハロルド公爵の目論見の被害者なんだとしたら‥。


それは、私にとってこれ以上にない程の幸せだ。
人として、兄として慕えるガブリエルが、『普通のお兄ちゃん』になってくれるのであれば、それはとても‥


私とレオ王子を除く4人が、洞窟の入り口で代わる代わる見張りをしてくれていた。私は声が出せないし、みんなにお願いするしかなかった。


ネロさんが見張りを終え、キノさんと交代した。
明日以降の長距離移動を考えると、少しでも休まなくてはならない。


それでも、やはり当然のことながらみんな深く眠ることができず、浅い眠りを細かく繰り返しながら、朝日が昇るのを待っていた。

レオ王子は、一睡もできていないかもしれない。
洞窟の壁に向かって横になり、ずっと苦しそうな呼吸を続けている。



レオ王子‥本当にごめんなさい‥


心の中で、何度もそう謝ることしかできない。
近付けないし、触れることもできない。


ネロさんが、レオ王子に近付いてその肩に触れた。レオ王子が、ピクッと体を震わせる。


「ねぇ、レオ様‥
俺付き添ってあげるから、一旦外行きましょ?」


「‥‥うん」


レオ王子は考え抜いた結果、頷いた。
ネロさんは小さく笑って、レオ王子の縄を解いていく。


トイレに行ったりもしたいだろうから、いつまでもあの縛り方でも辛いだろう。
私は、立ち上がったレオ王子に出来る限り悪い影響を与えないように、体を小さく縮こませた。


レオ王子は目隠しをしたままネロさんに腕を引かれて、洞窟の外へと出て行った。







ーーーレオ王子とネロが洞窟の外に出ると、僅かに漏れる月明かりの光が何とも幻想的だった。
ネロがレオ王子の目隠しを取る。

久しぶりにその目に光を写したレオ王子は、膝に手を当てて深く深くため息を吐いた。



「あーーーーキツーーーッ」



小さな声で、出来る限り気持ちを吐き出すレオ王子。
ネロさんはレオ王子を哀れむように、その肩に手を置いた。


「一発抜いてきたら?
媚薬みたいなもんですよね?超辛そう」


「‥‥小便。
媚薬‥っておまえ使ったことあんのかよ」


「あ。一発と言わず何発でもどうぞ」


「小便っつってんだろ!」



少しして、レオ王子はすぐに戻ってきた。
ネロさんは驚いたような表情を浮かべている。



「すげー、レオ様かなりの早漏?」


「‥ちげぇよ。
目の前にソフィアがいなければ、大丈夫っぽい」


はぁー、と額の汗をぬぐい、レオ王子はやっと落ち着いたような様子を見せた。


「へー。症状どんくらい続くんですかね。
その状態でヤったらめちゃくちゃ絶倫になりそうですね」


「おまえやっぱり面白がってるだけだろ。
わかってたけどもう少し心配しろよな。またシンドラにゲスいって言われるぞ」


レオ王子は呆れた表情でネロを見てため息を吐いた。
ネロはクスクスとお腹を抱えて笑っている。


2人は歳も近いことからこうして2人きりになると、仲間というよりは男友達のような関係性になる。
レオ王子はネロの前では、肩の荷を降ろして気を休めることができるようだ。


「シンドラさんねー、可愛いですよね」


レオ王子は、ネロの女性遍歴をよく知らない。しかし、あまりにもあっさりとそう言ってのけるネロは、深い意味を持ってはいないのだろうと受け止めた。


「思ってたより若かったなぁ」


レオ王子は木の下に胡座をかき、ネロはそのすぐ近くにある大きな石の上に腰をかけていた。


「そう?俺の予想はだいたい合ってましたけど」


「いや、あいつ俺が小さい頃から城に仕えてたからさ」


うーん、とレオ王子が腕を組んだ。
何歳なんだろう、とポツポツ独り言を零している。

シンドラの過去を本人から聞いていたネロは、小さく笑った。


「そうやって、大人のふりをして生き抜くしかなかったんじゃないですか?苦労してる分、なんか凛としてて綺麗ですよね」


「‥‥おまえもしかして結構割と普通にシンドラ好き?」


「え?好きですよ?」


逆に疑問系で返答されたレオ王子は、ジッとネロを見つめた。
月の光を浴びるネロ。黒い髪が、夜風に靡いている。その中性的な整った顔は、いつも通りヘラヘラと笑みを浮かべていた。


「お、女として‥?」


顔色を全く変えないネロに代わり、レオ王子の方が食い気味だ。


「女の子はみんな好きですよ、俺は」


「‥へえ」


レオ王子は、はぐらかしたネロを見て、これ以上は答える気はないんだと察した。


レオ王子にとっては、シンドラとの歴史は長く、自分を信じ、ずっとソフィアの近くにいてくれた掛け替えのない存在だ。
ネロのことも、もちろん大事だが‥


「簡単に手出したりすんなよ?」


一応牽制しておかなくては、とレオ王子は少し気まずそうにそう告げた。
シンドラには、傷ついて欲しくないのだ。


「ははっ、やだなぁレオ王子。
要らない心配ですよー」


ネロはやっぱり、そう言ってケラケラっと笑っていた。


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