公爵家のだんまり令嬢(聖女)は溺愛されておりまして

茶歩

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第39話『チート的白魔法』

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レオ王子とネロさんはそのまま洞窟の外で夜を明かしたようだった。日が昇りだした頃、私たちも洞窟から外へ出た。


レオ王子は、やっぱりこちらを見てくれない。症状はまだ治ってないのかな‥。

この山をよく知るキノさんを先頭に、レオ王子、ネロさんと続く。そのあとに私、シンドラ、ユーリさんの順で山道を歩いた。

歩いてきた道のりを戻るのかと思いきや、昨日とは全く違う道だった。人1人通れるかどうかの、急な斜面を下っていく。


「山小屋から持ってきた水の残りを考えると‥
明日には水辺に行かないとまずいですね」


シンドラが心配そうに声を落とした。
山小屋ですら、相当山奥に入ったところにあった。
そこから更に、山を上ったところから徒歩でちまちまと移動しているのだ。
山から抜けるまででさえ、相当時間がかかってしまいそうだ。


私にとって、昨晩が初めての野宿だ。贅沢を言っている場合ではないけれど、できれば早くお風呂にも入りたい。



「途中で水辺を見つけたら寄ろう」


レオ王子が、振り返ることなくそう言った。
レオ王子をそういう状態にしてしまったのは他でも無く私だ。それはもちろん分かってはいるけれど、想いが通じてるはずの相手から避けられているこの状況は、少し寂しく、辛かった。



山小屋でネロさんが焼いていたパンと、もう残り少ない果物が私たちの食料だ。
移動しながらも食料を調達して歩かないと、みんな飢え死にしてしまう。


「あ、いいもん見っけ」


ネロさんがそう言って、背中に背負っていた弓を構えた。
トシュッと音がした後、バタバタッと何かが地面に落下した。


「さすがだな、ネロ」


レオ王子が感心したように呟く。
弓を構えてすぐに放たれたその矢は、野生の鳥を見事に落としていた。


「あとで焼いて食べましょ」


ネロさんはニシシ、と微笑んで鳥を拾い上げた。
一方でキノさんも、食すことができる草花やキノコを手に取りながら前へ進んでいく。


この人たちが居てくれるならば、食料に関する不安を抱える必要はないかもしれない。



昨日に引き続き足を酷使していたせいか、数時間もするともう足の感覚はなくなっていた。会話もガクッと減り、みんなの息遣いだけが響いている。

もちろん、私以外のみんなはまだまだ余裕そうだが、私はといえばもう気を緩ませたら腰が砕けてしまいそうな程に疲労を感じていた。
屋敷に篭り、何年も運動とは無縁の生活を送っていたせいだろう。


「‥‥大丈夫か?ソフィア。
休憩するか?」


レオ王子が、声を掛けてくれた。
こちらを振り向かないものの、気にかけてくれている‥それだけで心は晴れやかになった。


ぶんぶん、と首を横に振ると、私の前を歩いていたネロさんが私の反応を見ていてくれていた。


「休憩は大丈夫だそうですよ。
根性ありますね、ソフィア様」


ネロさんは大して息も切らさずに、涼しい表情を浮かべていた。
わりと細めな体付きなのに、山で生活していたせいか体力はあるんだなぁ‥と感心する。


「‥キノ、もう少ししたら休憩しよう」


レオ王子が、キノさんに声を掛ける。
休憩はいらないと伝えたのに‥その優しさに、申し訳なく思うのと同時に、嬉しく思ってしまう。




しばらく歩き続けると、沢が見えた。
キノさんがコンパスを確認したあと、小さく頷いた。



「よし、ここで休憩するか。上流側で水筒に水を汲んで、下流の方で汚れを落とすなりしようぜ」


皆、キノさんの言葉に賛同し、各々リュックを下ろしたり、靴を脱いだ。
沢山の荷物を詰め込んだリュックはとても重く、簡単に下ろすことができないほどに背中はバリバリに固まっている。
とは言っても、私が運ぶ荷物はみんなよりも圧倒的に少ないため、私が弱音を吐くことは許されないんだけど‥


蒸れた靴を脱いで腰を下ろし、透き通る沢の中に足を入れた。キンっと冷えた沢の水は、ペロリと向けてしまった足の皮を刺激する。

 痛くて仕方ないものの、さっぱりと浄化される気がして、皮がめくれた痛みを我慢することができた。



レオ王子が、閃いたようにシンドラから魔法書を借りて、とある白魔法を唱えた。
私たち全体を包み込むように、煌めく光が辺りを覆う。
 

「わー、レオ様。モノにしてますねぇ」  


どうやらレオ王子は、白魔法でみんなの体力を回復させえくれたようだ。何というチート的な使い方‥。レオ王子自身も体力が回復しているようで、これならばまた数時間歩き続けることができそうだ。
めくれていた足の皮も、バリバリに固まった背中も、綺麗に元の状態へと戻った。

幼い頃の記憶では、白魔法を使うと体への負担が大きかったように感じていた。
しかし、レオ王子にはさほど負担の色は見えない。やはり元々の体力も関係しているのかもしれない。


体がすっきりと回復したところで、キノさんが閃いたように呟いた。


「レオ様よ、その白魔法まだ何回も使えるなら、俺たち馬車馬のように進めるよな?」


「ああ、そうだな」


「じゃあ、次またいい感じの水辺が見つかるかわからないし、ここでの休憩をちょっと多めにとっちまおう」


「それもそうだな。
順番決めて水浴びでもするか」


レオ王子の提案に、みんな喜んだように頷いた。



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