公爵家のだんまり令嬢(聖女)は溺愛されておりまして

茶歩

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第81話『仲間たち』

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レストール家の内部の情報を得るには、遠く離れた土地からは不可能。
レストール家を離れても尚、情報を手に入れ続けることは容易ではない。


だからこそ、現状を調べるならば変身の術に長けたシンドラがレストール家に潜入する必要がある。

シンドラの変装術は大いに感服するものだし、この湖の家は敵の脅威もないから、戦力であるシンドラが不在でも大丈夫。


「もし見破られたらどうするんですか」


心配しているネロさん。


「すぐにワープで戻ってきます。
魔力も回復したので大丈夫です」


シンドラはそう言って笑った。


‥やっぱり、この2人の雰囲気が少し変わったような‥?



そしてこの日、シンドラが偵察の為に出掛けていくことになった。







シンドラがワープしたのは、レストール家の屋敷内。
メイドのリーシェという女性に化けて、久々の屋敷内を歩く。

二階の一番東の部屋に入ると、シンドラは鉄製の燭台を手に取った。
この部屋はリーシェの部屋。本物のリーシェがいたら途端にピンチな状況になってしまうが、幸運にもリーシェは部屋にいなかった。


鉄製の燭台に向かって、シンドラは話しかける。


「トレヴァン、姿を表して‥」


そう呼びかけると、燭台がウニョウニョと動き出してトレヴァンが身を乗り出すかのように飛び出してきた。


トレヴァンは鋼鉄の魔法使い。
テリトリー内の鋼鉄・鉄の内部を行き来することができる上、鋼鉄・鉄を自在に操ることができる。

捕らえられていたガブリエルの元へ辿り着けたのも、トレヴァンが鋼鉄の魔法使いだった為だ。


「シンドラさん、お久しぶりです」


そう言って笑みを見せるトレヴァン。
男性魔法使いの存在は稀なうえ、トレヴァンはまだこんなにも幼い。
スパイとして怪しまれる心配も少なく、非常に有望な戦力だ。


「久しぶり、トレヴァン‥
早速だけど状況は?」


シンドラがそう問いかけると、トレヴァンは頷いた。


「‥ガブリエル様は被害者です。
ガブリエル様は知らずに摂取させられていました」


「そう‥やっぱりね」


ガブリエルすらも駒だったという事実に、シンドラは小さく息を吐く。
予想していたことだけど、やはりハロルド公爵は欲深い。


「‥ガブリエル様に事実を告げたら、泣いていました。とても苦しそうに‥。
‥ソフィア様を救う手助けがしたいと仰ってました」


「ガブリエル様は、まだソフィア様を想ってる?」


「そこは分かり兼ねますが、恋い焦がれるというよりかは兄弟愛に近いかと‥」


あんなにも身を焦がれるように、心が焼きつくようにソフィアを愛していたガブリエル。
その生命の全てはソフィアの為にあったと言っても過言ではなかった。

それが、全てだと気付かされた時、どれほどまでの虚無感と罪悪感に襲われるのだろう。

シンドラは頷きながら、その心に燻る何かに体の芯を疼かせた。


ハロルド公爵‥
その揺るぎない欲望の為に、自分の子供の人生すらを亡き者にしたのだ。


この疼きが怒りからくるものだと気付いたのは湖の家に戻った後のこと。


「‥‥きっとレオ王子もソフィア様も、首を縦に振るとは思う。
だけど私がここで決断をすることはできない」


シンドラがそう言うと、トレヴァンも納得したかのように頷いた。


「‥お待ちしています」


「うん、近いうちにまた来る」


そう言ってシンドラはワープで湖の家に戻った。






時同じくしてとある山の中。
野生地味た旅装束の少年と、頭からマントを被った小柄な少女。


「いつまで着いてくるつもりだよ」


キノがそう言うと、ミルフィはニコッと笑う。


「わたし1人守れない人が、仲間を守れるわけないよね?」


「‥もう仲間じゃないっつーの!」


「はいはい。
心の中が筒抜けだって何回言ったらわかるのかなぁ」


「うるさいってば!」


「早く見つかるといいね、花の種と珍獣の尻尾」


「もーーーー!!
勝手に心読むなよっ!!!」


キノの髪の毛を一本手に入れたミルフィは、キノに着いて行こうと決めた。
キノの心は、何とも心地良かったのだ。

愚直に、ただただ仲間の為にやれることを探し始めたキノ。
何より、キノに着いていけばまたソフィアに会えるかもしれない。

キリスを失った悲しみはもちろんあるけど、ミルフィもキノに着いて行きながら、前を向こうと決めたのだ。


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