終末世界に少女とAIの見つけた生きるというすべてへの解答

春ノ領

文字の大きさ
2 / 113
終世界より

308

しおりを挟む
「30秒で着く!」

 パイロットが地表までの到達時間を伝えてくる、同時にヘリコプターは降下を開始、崩壊しかけたビルとビルの隙間へ飛び込んでいく。

「よし確認するぞ! 目的はデータの回収! 旧陸軍研究施設"B1"の司令室まで行って集められるだけ集める! 投下地点ドロップポイントは北500メートル! このヘリは2時間空中待機した後! 一度だけ同じ場所に戻ってくる!」

「支援は!?」

「無い!」

「2時間以内に戻って来れなかったら!?」

「察しろ!」

 コールサイン"シオン"、本来腰まである銀髪をたるみを持たせつつ上着の中に収めた、ライトグレーのフリースジャケットと黒のカーゴパンツを着た女性だ。腰に巻いたベルトに予備弾倉入りのポーチを取り付け、右太ももに柄含めて40cmある大型ナイフを固定している。ナイフは黒色で、刃根元に小さな円筒が2本挿さっており、内部には青い液体。両手に握っているのはアサルトライフル、アタッチメントを取り付けるためのデコボコしたレールを上下左右に組み合わせたハンドガードが特徴の銃である。色は茶色、伸縮式の肩当てストックを持ち、最大展開時の全長は80cm程度、重量は3kgと少しある。着脱式箱型弾倉には6.8mm弾が30発入り、有効射程500m、連射するフルオートと単発のセミオートを選択可能。
 それと頭部のヘッドギア、通信機一体型、胸につけたボタンを押せば味方と双方向通信で会話でき、人の声や足音など聞き逃したくない小さな音は増幅するが、一定以上の音量、例えば銃声なんかはむしろ減殺するという超ハイテクなマイク付きヘッドホンである。

「敵の数は!?」

「昨日のシュミレーションよりは少ない!」

「使うルート……」

 ヘリコプターの床が急激に傾いていく、それによって減速する。前進速度がほぼゼロとなった頃、彼女が最初に座席のシートベルトを解いた。

「10秒!」

「よし全員立て!」

「待った待った待った!!」

 未だ飛行中のヘリのドアを開けるシオン、吹き込んできた風によろめきつつも残りの3人は起立、一斉にライフルの初弾装填による金属音を鳴らす。
 すぐにヘリは一瞬だけ接地した、その一瞬で全員が降りる。ヘリはまた空中へ、4人は最寄りの瓦礫の影へ。一度膝をつき、姿勢を低く、今の行動が何にも見られていない事を確認する。

 落とされたのはかつて都市だった場所だ、今は暗闇の中、月明かりのみによって薄く照らされている。この都市が現役だった頃、いくつもの高層ビルが高さを競うように建設され、無数の人やモノが行き交っていた、という。今は単なる廃墟でしかない、窓ガラスをすべて失って風通しが良くなっていたり、傾いて隣のビルに寄りかかっていたり、完全に倒れてしまっていたり。この場所に人間は住んでいない、住める場所ではない。

「……フェルト」

「敵影ないよぉ」

 フェルト、と呼ばれたのは4人の中で最も背の低い少女だ、黒いレンズの四角いゴーグルを目に当て周囲を見回している。身長150cmもなく140前半。髪は真夏の快晴が如き空色で、左やや後方でショートのサイドポニーにしている。服装がフリースジャケットとカーゴパンツなのは変わらず、握っている銃がサブマシンガンになって、それと長さ70cm程度の白い棒を2本、斜めにして腰からぶら下げていた。そのうち片方は先端にカバー付き、内部には刃がある。銃について説明すると、厳密にはサブマシンガン(SMG)ではなくパーソナルディフェンスウエポン(PDW)というものなのだが、なんやかんやあってサブマシンガンの一分類みたいなものになってしまったのでサブマシンガンと呼んでも何ら差し支えない。ストック収納時で全長34cm、最大展開すると54cmになり、真横から見ると本体とグリップがT字を形成する。非装填状態での重量は1.6kg、弾倉は拳銃と同じくグリップ内部、今は15発入りのものが装着されている。
 人間の全体的な印象としてはフワッフワだ、口調も表情もすべてふんわりしている。声を聞けば眠くなり、笑顔を見れば癒される。初対面の相手は彼女が兵士だとは思わなかろう、想像できたとしても後方での雑用がせいぜいか。

 しかし決して騙されてはいけない、4人の中で唯一近距離武器をメインウエポンとし、足は最速、スイッチが入るともう止まらない、というか止める勇気が無い。
 決して騙されてはいけないのだ。

「よし、まっすぐ行くぞ、メル子先行」

「うーぃ」

 フェルトの次に小さいのがメル、前回の測定では152cmだった。外ハネのある、明るい紫色の短髪、服装もやっぱり同じでフリースジャケットとカーゴパンツ。シオンのものと酷似するが僅かに異なるライフルには1個あたり100発入るドラムマガジンが装着され、その分の重量増のため、近接武器は持っていない。

「……静かね、周りに敵がいないだけならいいんだけど」

「ほんと、ヒナちゃんて声だけなら頭良さそうだよね」

「は?いやその……はぁ?」

 メルに言われて若干怒り気味の顔を返したのがヒナ、唯一服装が違う。髪型はライトブラウンのボブカット、身長は157ある。シャツとカーゴパンツの上に纏うのはフードの付いた白いロングコート、によく似た別の何かだ、予備弾倉を含めたすべての装備はコート内側に収納、太もものホルスターにはフェルトと同じサブマシンガンが入る。
 ライフルは全長1mオーバー、弾丸直径8.6mmで装弾数10のセミオートオンリー、狙撃銃である。外観はやはり、シオンやメルのものと似ている。
 それから眼、彼女の外観上の特徴はそこにある。右は琥珀色、左は黒色で、生まれた時は両方とも琥珀色だったらしいが、今、左眼は光を反射しないつや消しブラックだ。これは義眼である、生身の眼球は失われている。機械に置き換わっているのはそこだけではないが、まぁそれは後々。

「入口どこ?」

「B1は地下施設、地下鉄の入口みたいなやつがあるはずだけれど……ああほら、もう見えた」

 瓦礫を離れ4人で前後左右それぞれを警戒しつつ、ゴミや瓦礫まみれの道を100mも進めば地下への伸びているらしき階段が視界に入ってきた。コンクリート製、切り分けたショートケーキを横倒しにしたような形状で、扉は外れて転がっていた。残りの400mも一切の会敵なく踏破、入口手前でまた膝をつく。

「ヒナ先生、この場で監視を」

「なるべく早くね」

 中へ入るのは3人、シオンから監視指示を受けたヒナがコンクリートの上まで登って、ライフルの二脚を立てながら寝そべる。途端に白コートはコンクリートと同じ色になった、タコやらカメレオンが如く灰色になって、フードを被れば体の大部分が覆われる。

「フェルト?」

「んー…内部からの音響反応なし」

「よし行きましょう、曲がり角には気を付けろ」

「だいたい四つん這いの気持ち悪いの飛び出してくるしね」

「それはゾンビ」

 なんて会話をしながらも、3人は階段を降りていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

独身おじさんの異世界おひとりさまライフ〜金や評価は要りません。コーヒーとタバコ、そして本があれば最高です〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で身も心もすり減らした相馬蓮司(42歳)。 過労死の果てに辿り着いたのは、剣と魔法の異世界だった。 神様から「万能スキル」を押し付けられたものの、蓮司が選んだのは──戦いでも冒険でもない。 静かな辺境の村外れで、珈琲と煙草の店を開く。 作り出す珈琲は、病も呪いも吹き飛ばし、煙草は吸っただけで魔力上限を突破。 伝説級アイテム扱いされ、貴族も英雄も列をなすが──本人は、そんな騒ぎに興味なし。 「……うまい珈琲と煙草があれば、それでいい」 誰かと群れる気も、誰かに媚びる気もない。 ただ、自分のためだけに、今日も一杯と一服を楽しむ。 誰にも縛られず、誰にも迎合しない孤高のおっさんによる、異世界マイペースライフ、ここに開店!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

処理中です...