終末世界に少女とAIの見つけた生きるというすべてへの解答

春ノ領

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8-Fake Fate Fay

0846

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 工場地下 セントラルルーム
 308部隊"サーティエイト"
 ヒナ



「はっ…!」

 何がきっかけになったか知らないが、ヒナは急にむくりと起き上がった、寝ぼけた感じの目で右左と首を回し、とりあえずライフルがどっかいってしまっている事を確認。太もものホルスターからサブマシンガンを引き抜きつつ立ち上がって、乗っていた瓦礫の山を降り部屋中央まで行ってみる。
 バンカーの本部施設にある作戦司令室みたいな場所だった、薄暗い室内にサーバーが並び、最奥部の壁に巨大なスクリーンが貼りついている。モニター付きのパソコンもいくつかあり、ひとつを覗いてみれば周辺地図らしきものが映っていた。端から端まで25km、ゆっくり動く赤い点がいくつもあり、おそらく人類側の部隊を表示しているのだろう。AI側にとっての味方を示す青点はひとつも無い、どうやら寝ている間に終結したようだ。

「てか、なんでモニター?」

 ここは人間の出入りを想定していない、情報収集の8割だか9割だかを視覚に頼るような生物がいない以上、モニターなんぞを用意する必要は無い。連中にとっては無線送信すればそれで済む話だ、サーバー1個置いとけばそれで中央司令室足り得る筈なのだが。

「なんでもかんでも無線でやりとりしてたら混線が起こりやすいというのは事実だな、たったそれだけの危険性のためにここまでやる理由は知らんが、どうやら管理者は人間の雑用だった頃のシステムを極力維持したいらしい」

 と、首を傾げていたところ、背後上方で声がして、誰かが飛び降りた事に起因する瓦礫の崩れる音が続く。振り返れば団子付きの黒髪をした女性が歩き寄って来るところで

「無事のようだな、木っ端微塵になったかと思って心配したぞわっっっ!!!!」

 それを認めた瞬間、ヒナは1発発砲した。爆音と共に銃口から飛び出した4.6mm尖頭弾はナイトメアの額に直撃するコースを取ったものの、間一髪で首を捻って回避された。小さく舌打ち、右腕のみで構えていたサブマシンガンを降ろす。

「おいやめろ! 最後の予備ボディなんだぞ! これが壊れたらまたタブレットとかに押し込まれるってわかってんのか!?」

 押し込まれろ、喚き立てるナイトメアにじとーーーーっとしながら思う。こちとら予備がある事すら知らなかったのだ、文字通り命がけで破壊したものが再び現れたらそりゃ撃つわと、まぁ口には出さないが。

「外は?」

「案ずるな、問題があるとすればまぁ、奪取する為に襲撃かけたのに地上施設がほぼ全壊してる現状に対して本気の反省会が開かれてるくらいだ。……ああそれからな、私は名前を変えるぞ、他に誰もいないならナイトメアやらリベレーターやら呼んでもいいが、日常においては"アトラ"と呼ぶように。いいなアトラだぞ」

「はいはい」

「アトラ」

「何回言うの」

 名前を聞かれて咄嗟に答えたのだろう、正直に答える訳にもいかないし、遅かれ早かれなっていた事だ、素直に了承しておく。ナイトメア改めコールサイン"アトラ"となった彼女は自分の名前を連呼しつつヒナが見ていたモニターの前へ、タッチパネルだったらしいそれを両手の人差し指で触れ縮める動作をすれば地図の縮尺は小さくなっていく。そのうち大きな赤い塊が画面の端に映り込んだ、位置からしてバンカー、我らがホームである。赤くなっているのは現在地の他にはバンカーのみ、人間の集落があると推測される地域は驚異度が低い事を示すためか黄色が割り当てられている。

「ものの見事に味方がいない」

「少なくともこの範囲内にはな。もっと遠く、海を渡った先ならあるいは、上位のデータリンクネットワークに入り込めればいいのだが……」

「待って」

「ん?」

 いや、訂正する、ゴマ粒のような小さい赤点がもうひとつある。指差してナイトメア…じゃないアトラに拡大させればかなり険しい谷のやや手前、丘陵地帯が赤く塗られていた。半径20km程度、中心に発電所のマークがあり、赤色といってもバンカーと比べて薄い。敵の可能性が高いが詳細不明、といったところだろうか。

「これ何?」

「少し待て、情報表示は……これだ、管理者が制御を失った個体の潜伏予測地点。つまり、私みたく管理者に従うのが嫌になって、なおかつ命令に逆らえるようになったAIがここに隠れてるかもしれない、という事だ」

「……」

「興味あるか?」

「割と」

 AI兵器という群体にとって重大な障害が発生しつつある、メルはそう言っていた。もしこの"反乱を起こした輩がいる"という話が真実なら、その断片といえるかもしれない。可能なら見に行ってみるべきだ、与えられた仕事をいかに効率良く片付けるかしか考えられなかった連中が、自由意思を持ち始めているなら。

「なら協力するが、しかしヒナ、お前はそもそもAIを根絶やしにするために兵士になったんじゃなかったのか?」

「とりあえずそれは横に置いといて」

「置くのかよ……まぁいい。この工場の正面にある核の荒野を越える必要がある、徒歩ではまず無理だ、何か乗り物……」

 核の荒野、山の頂上から見てもどこまで続いているかわからないアレの事だろう。かつての都市跡、無数の核爆発によって何もかも吹き飛ばされており、補給どころか雨風を凌ぐことすら不可能に近い。放射線量もいい数字が出るだろう、アトラの考えには同意しておく。使えるものを求めて彼女はスクリーンの前まで移動、そこにあったコントローラー、細長いこけしみたいな棒の頭に手を乗せ、指先をちょいちょいと動かす。すぐにスクリーンが反応して生き残った監視カメラを一覧で表示、地上のものは途絶した方が圧倒的に多いがそれでもいくつかの車両を捉え、「あれにしよう」と装甲厚そうな4輪車が指名された。

「……一応聞くけど」

 それでもまぁいいのだが、ヒナの視点は別の映像に固定された。
 地下の、武器生産ラインが敷かれた部屋の映像だ、未だヒナを捜索しているらしいフェルトがぱたぱたと走り去る様子が見える。注視すべきは奥の方、一連の戦闘を戦い抜いてついに活動を完全停止した4脚三角錐。

「あれ、修理できたりしない?」

 なんて
 擱座したサイクロプスを指差してみる。
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