終末世界に少女とAIの見つけた生きるというすべてへの解答

春ノ領

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13-"いつも"の終わりとユリウスの災難

増勢

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 ズン!という爆音と爆煙、地響きと共に格子の扉は建屋ごと吹き飛ぶ。少なくない量の破片が周辺の建物に突き刺さったが仕方ない、これで地下へ降りられるようになった。建屋跡地を複数人が取り囲んで警戒を開始、ティーも隠れていた物陰から出て階段へ駆け寄る。

「中隊長、通信士からの報告です、出所不明の無線メッセージを受け取ったと」

「続けて」

「北から人間の武装集団が接近しつつあり、警戒せよ。数500以上、1時間以内には外縁部集落を目視する」

「ふむ」

「近くに展開中の部隊を向かわせたところ、確かに大隊規模の集団が南下してきているそうです。無線での呼びかけには応じないらしいですけど」

「人間ってのはどうやって判断したんだ? 発信源は掴めてないの?」

「不明です、ただ向こうは"アトラ"と名乗ったとか」

 邪魔な瓦礫を蹴り転がし、部下から報告を聞きつつ階段を降りていく。最下層まで続く螺旋階段だ、急ぎ足にカンカンと鳴らして一番下へ、突き当たりのドアに左手を、ハンドガンに右手を。

「とにかく今のところは敵である可能性のが高いか……レア、そっちの対処に回っておくれ」

『ええぅ……わかった、防衛線を張っておく…』

 通信機越しに話しかけた彼女はスイッチOFFしてしまっていた、あの程度の煽りでは数十分が限界か。とはいえ対処法は教え込んでおいた、そのくらいなら問題なかろう。
 目配せして、ティーがドアを引き開け、追ってきた数名が最初に突入する。10秒経ったかどうかのうちに「クリア」と声が上がり、ティーも入室、本当に廊下のど真ん中で寝転がっていた管理担当へ駆け寄った。
 工場入り口の手前、見学用に設けられたガラス窓にはフェイの姿が見える。手を振ると同時にもう少し待てとジェスチャーで伝え、どんな悪夢を見ているのか激しく呻く彼の肩を揺さぶる。

「起きない……いったい何されたんだ…?」

「中隊長、これ見てください」

「ん?」

「全員無事です、おそらく」

 部下に言われ、揺するのを中断してそちらに行ってみる。彼が取り付いていたのは壁に埋め込まれたコンソールパネル、その監視カメラ映像である。フェイのいる工場内部は扉が開かない以外はごく普通、製造ラインは延々と弾薬を生産し続けているし、アサルトフレームというらしい試作兵器も無傷で棒立ちしたまま。5人の人間もすべて確認でき、窓際にはフェイ、我関せずとばかりにAFの調整を続けるアリソン、後の3人はやはり開かない裏口に取り付いて自力脱出を試みていた。元気そうである、しばらく心配はしなくてもいい。
 重要なのは工場から廊下を挟んで反対側、武器保管庫の内部映像だ。メカニックねーちゃんコンビが1丁のアサルトライフルにグレネードランチャーとソードオフショットガンと暴徒鎮圧用レーザーガンを同時に装備して遊んでいた。どうやってんだと思うのだができちゃってるのだから仕方ない、しかもちゃんと装填できる、実用性があるかは別として。
 彼女ら以外にも人の姿はちらほら見える、いずれも拘束されておらず、怪我している様子は無い。武器保管庫にスピーカーはついていないので呼びかけられないが、無事は確認できた、大きめに息を吐く。

「よし、彼を運んでおくれ、どうしても起きないなら司令部から鍵とパスワードを取ってくるから」

 うんうんと呻き続ける管理担当が運ばれていく、それを見届けてからフェイの近くまで行き、改めて待機をジェスチャー、頷いたので皆の後を追う。

『クソ……おい遊んでる場合か、責任者を出せ責任者を』

 そうしたらなんかクレーマーみたいなのが通信機から聞こえてきた。
 若い女性の声だ、明らかにイラついている。現状戦闘隊を指揮しているのは自分なので、階段を登りつつマイクを口元へ。

「どちらさんですかね?」

『その声は…あれだな、ミオ・リリーホワイト』

「ぶっ……」

『どこの誰かもわからんトンチキに先程伝えた話は聞いたな? 北から武装集団が向かってくる、木製銃床のボルトアクションライフルとサブマシンガンで武装してギアが3段しかない車に乗ってそうな連中だ。今のうちから攻撃すればなんてこたなかろうが…接近されればその限りではない』

「え、えー……なんで名前知……いやそれはいい。なんで敵対前提? 相手が人間だってどうやって知った? それとキミは誰?」

『諸事情あって連中が社会主義者だと知っている、生物と機械を誤認する訳が無い、アトラとさっき名乗った』

 立て続けに質問して、返答を聞いている間に地上まで辿り着く。元々慌てていたのに謎の集団来襲によってさらに混乱しており、榴弾砲を引いた車両が北門へ走っていく中、複数の重機関銃が準備され、部隊ごとに割り当て、トラックに搭載。中央で指揮を執るのはレアだ、泣きそうな顔をしているが、前回の代理就任時に比べれば遥かに手際が良い。

『こちらが入手した情報では連中、社会主義の名を借りたテロリストだそうだが、どうする? 私は今、奴らを足止めできる位置にいる』

「どうすると言われても、キミの話を鵜呑みにはできない。それに相手が本当に人間ならまず話し合わないと」

『だろうな。まぁいい、忠告はしたぞ』

「今こっちで起きてる問題はその集団とは関係ある……あぁもう……」

 アトラなる謎の女性は通信機の向こうからいなくなった、溜息ひとつ、データセンターに急ぐ。
 どうしても起きない管理担当が水をぶっかけられるところだった、彼の右手か左手を認証装置に押し当てれば武器庫の扉が開いてみんな解放される、のだが。
 そしてやはりというかデータセンターの扉も開かなかった。これの管理は司令部のパソコンだ、すぐに操作できる、はず。どっちにしろか、もう一度行ってこの扉を開け、鍵とパスワードも探してくる。

「一体どこが安全なのやら」

「早く究明しよう。司令部に戻る、最大限の警戒を」

 見通しは立った、
 後は辿り着けるかどうかだ。
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