終末世界に少女とAIの見つけた生きるというすべてへの解答

春ノ領

文字の大きさ
90 / 113
14-そして人は破滅に向かう

終末会議1

しおりを挟む
「来てやったぞ、まったく都合が悪くなった途端に手のひら返しよって」

 どこかしらで手に入れてきたらしい黒のレインポンチョで上半身と頭部を覆った真っ黒女性が最初に、何も隠していない短髪少女が次に入室してきた。途端にティーの右手がコンバットソードの柄に触れるも、ヒナと黒女性が同時に制止をジェスチャー。

「落ち着きたまえ(CV諏訪部)、今ここで我々が争っても仕方あるまい(CV諏訪部)」

「いきなりイケボ出すんじゃないの」

「なんかハマってきた」

 と、脈絡なく声が男になったり女になったりしてるのがアトラ、AI制御のアンドロイドである。人類側から付けられたコードネームはナイトメアで、幅1kmの谷挟んでヒナと殴り合い(原文ママ)した相手だとか。フードを取ると現れたのは黒の長髪、浮かべる笑顔は印象がよろしくない。今のところは人間そのものだ、機械とはとてもじゃないが気付けない。
 次いで彼女の左腕に引っ付く妹がティオ、ジャック・ザ・リッパーの渾名を持つ。両腰に直刀を備えており、「姉様……」と時折呟く。ちゃんと話してみたい鈴蘭だったが、迂闊に近付くなとの事前情報があって、アトラからもその場で「関わるとロクな目に合わんぞ」と言われる。当人が頬を膨らませる中、2人はさっきメルが用意した充電設備へ近寄ってごそごそやり出した。

 状況を確認しよう、ここはバンカーの外で、廃都市の郊外、旧陸軍施設"B1"という場所だ。施設のほぼすべてが地下にある、荒野の工場と同じ構造なのだが、大部分は崩落しており、使えるのは最も浅い場所にある司令室とその周辺の数部屋、後は非常用発電室のみ。発電機は補修と起動を終えて司令室に電力を供給中、室内は明るい。そしてそれを使って姉妹は充電を始めたようだ。
 この場にいるのは姉妹とサーティエイトの他にはティー、それとフェイがいる、話に興味があるようで、ヘリをそこらに隠してついてきた。
 情報交換をするため、である。姉妹を壁の内側に入れられないのもあるが、今のバンカーにひそひそ話ができる場所はほとんど無い。部外者まみれだ、しかも我が物顔で歩き回る。

「じゃあ話を始めます、我々が(一応)初めて接触した(事になってる)AIへの対抗手段を持つ組織、自称"人類北部連合"、便宜上ここでは"そびえ立つクソ"と呼びますが」

「北連、北連ね。あと小声でなんか言ってなかった?」

「言ってない言ってない」

 人が揃ったのでシオンが喋り出した、ツッコミ所まみれだったのですぐティーに割り込まれる。
 実のところ初めてではない、らしい。フェルトの故郷もかなり強力だったし、今回の件も予兆はあった。前者は論理的に、というかこの世にいちゃいけない奴だったので抹殺した上で無報告。後者も、こんなに早く山越えを果たすとは思っていなかった。

「奴らが信用できない人、挙手」

 全員が手を挙げる。
 同盟を結びたい、と言って寄ってきたものの、まったく友好的ではない。中に入る許可を得るなり態度を硬化させ、何を聞いても「話がまとまるまで教えられない」の一点張り。だというのに向こうはあっちこっちとバンカー内部を調べ回り、しかも武装解除もしていない。何をしてるかと言えばつい先日サーティエイトがやったばかりだ、効率的な制圧手順を構築しているのである。

「偉いさんには伝えたの?」

「伝えたけどね、ようやく見つかった外部の仲間に浮かれちゃっててさ」

「多少の不利は認めるつもりっぽ、そういう内容のメールがちらほら飛んでる」

 ヒナの質問にはティーとメルが回答する、「なんでメールの内容知ってんの?」という新たな疑問も生まれたが彼女は無視。

「……2個小隊分の人員が協力を約束してくれた、これで万一に備える。つっても向こうがふっかけてくるまで何もできんけど」

「じゃ、何をしときます?」

「6時間後、双方の代表者が司令部で会談する、地下の会議室だ。調べたところあの部屋は壁1枚爆破すれば地下シェルターと繋がるらしい、キミたちはその場所を割り出してC4を仕掛けておいておくれ」

「弾は?」

「実弾」

 何かあったら殺せ、と中隊長はおっしゃった。新開発の訓練弾の鎮圧能力は知っている筈だが、意識を奪うほどではない、熟練なら反撃してくるだろう。それを聞いて鈴蘭はやや声を漏らすも、「向こうが撃ってこないならこっちも撃たんさ」と先に言われてしまう。

「この2人を中に入れても?」

「うぬ……」

「私は信用してもいい」

 と、現状心許ない即応戦力を補強するためか、いきなり話題に出されたアトラとティオがばっと振り返った、頭にコードがくっついていた。ティーは渋ったものの、フェイがぽつりと言えば了承、充電終わりのヘリ搭乗を指示される。

「ここはセーフハウスに使えそうだね、万が一の場合はここを再集結地点にしよう」

「オーケー、時間が無い、戻りますよ。フェルト、そのソファはもう諦めろ、布敷いたくらいじゃどうにもならん」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

独身おじさんの異世界おひとりさまライフ〜金や評価は要りません。コーヒーとタバコ、そして本があれば最高です〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で身も心もすり減らした相馬蓮司(42歳)。 過労死の果てに辿り着いたのは、剣と魔法の異世界だった。 神様から「万能スキル」を押し付けられたものの、蓮司が選んだのは──戦いでも冒険でもない。 静かな辺境の村外れで、珈琲と煙草の店を開く。 作り出す珈琲は、病も呪いも吹き飛ばし、煙草は吸っただけで魔力上限を突破。 伝説級アイテム扱いされ、貴族も英雄も列をなすが──本人は、そんな騒ぎに興味なし。 「……うまい珈琲と煙草があれば、それでいい」 誰かと群れる気も、誰かに媚びる気もない。 ただ、自分のためだけに、今日も一杯と一服を楽しむ。 誰にも縛られず、誰にも迎合しない孤高のおっさんによる、異世界マイペースライフ、ここに開店!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...