終末世界に少女とAIの見つけた生きるというすべてへの解答

春ノ領

文字の大きさ
91 / 113
14-そして人は破滅に向かう

星からの便り

しおりを挟む
「鈴蘭、解析が終わったから返すって。複製不可能って解析結果だけど」

 爆破すべき壁の特定と爆薬の設置までは速やかに終了、シオンとヒナは機材を運び入れるといって上へ、メルはついでに雑事を済ませるといってアトラを連れ下に行ってしまい、突入ポイントに残ったフェルト、ティオとぽつぽつ雑談していた鈴蘭だったが、1人で戻ってきたヒナにイヤホンとスロートマイクを渡された。ここで目覚めた時に使った通信セットで、使い方がわからず預けていたものだ。周波数の合わせ方は判明(周りの電波を自動認識)したらしいのだが、何がどうなってそうなるのかはまったくわからず、結局これはワンオフ、鈴蘭専用装備となった。装備といえば借りていたマークスマンライフル、なんだかんだあって正式に譲渡となった。初心者向けとはとても言えないライフルスコープとダットサイトは取り払ってしまい、1.5~4倍可変の大口径スコープに変えてある。

「アンタはこっち側でいいの? ついてきただけっぽいけど」

「姉様が好きなものは私も好き」

「あ、そ」

「姉様が好きなものは……」

「ちょっと手握んないでよ!!」

 などとヒナティオがやっているのを尻目にヘッドギアを外し、とりあえずイヤホンを付けてみる。やはりこちらの方が圧倒的に軽い、周波数は戦闘隊の共通周波数に合わせてあるらしいので、切り替えてしまっていいだろう。スロートマイクも首に装着、フェルトとの間で「聞こえますか?」「聞こえるよぉー」と交わし、ヘッドギアを床に置く。

『鈴蘭』

 そうしたらすぐ、しばらく聞いていなかった声が聞こえてきて。

「アステル?」

「へ…?」

「あ……ちょっと待っててください」

 今の声、フェルトには聞こえなかったらしい、後の2人はなんか取っ組み合うのに夢中なのでわからないが、おそらく鈴蘭しか聞こえていない。フェルトに言いつつ部屋を出、廊下でスロートマイクを押さえる。

「今までどうしてたんです?」

『色々あって……私の事はいいから、少し説明させて。今あなた達が対峙してる集団、考えてる以上に酷い』

 目覚めてからの最初の味方、地上に出てから音信不通だったが、久しぶりに現れた。いや現れたといっても姿を見た事は無いけれども。

「どういう事…?」

『まずその拠点、通称バンカーの存在を知った後、彼らはトンネルを見つけて制圧した。そこには50人前後が住んでいたけど、従属を約束した2人を除いて殺されてる』

「え……」

『さらに道中、消耗品の補給のために集落を襲ってる。備蓄してあったものをすべて持ち去って、死者100人以上。共産主義ではこの世すべての財産は共同所有されるものだから、任務遂行のために物資を徴収した、なんていうのが言い分』

「あの、それ、助かった人は」

『大丈夫、なんとかした。とにかく私が言いたいのは、理想を失った社会主義、共産主義、もしくはマルクス主義っていうのは本来の機能をまったく発揮しない、自己中心的思考の塊みたいなものだっていう事』

 嘘、ではないだろう、わざわざそんな事をする理由が無いし、ヒナやフェルトから聞かされた話とも一致する。
 アステルの言う通り、皆が思っている以上にまずいものを入れてしまったのかもしれない。何はともあれ人間なのだから、AI兵器と戦うという目的で一致できると信じていたのだが、『彼らはそれを第一目的としてない、この環境を受け入れて、その中で繁栄を目指してる』と付け足されれば言葉を失ってしまう。
 人間、という条件だけで信用してしまっていた。

『ごめんね、意地悪してる訳じゃないんだけど』

「いえ……」

『それで、ここから先の事は指揮官の人にもメールで伝えた話で、彼らの装備はすごく古い。装弾数5発のボルトアクションライフルを主力に、一部がサブマシンガンやショットガンを装備してて、車両の半分にマシンガンを据え付けてる。対装甲装備は迫撃砲とロケットランチャー、こちらはバンカーの外に待機してる部隊だけが持ってる。額面上のステータスならお話にならない戦力差だけど、既に壁の外側に入れてしまっている以上、それはあまり重要じゃない』

 左腕の時計を見る、会談の開始まで1分を切っていた。アステルの話を信じるならまずい事態が起きそうだ、ライフルのチャージングハンドルを引いて初弾を装填、確認のため一度構えてみる。

『気をつけて、また連絡する』

 ちょうど、通信機材を抱えるシオンもやってきた、部屋に戻って備えよう。
 勘違い、で済めばいいのだが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

独身おじさんの異世界おひとりさまライフ〜金や評価は要りません。コーヒーとタバコ、そして本があれば最高です〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で身も心もすり減らした相馬蓮司(42歳)。 過労死の果てに辿り着いたのは、剣と魔法の異世界だった。 神様から「万能スキル」を押し付けられたものの、蓮司が選んだのは──戦いでも冒険でもない。 静かな辺境の村外れで、珈琲と煙草の店を開く。 作り出す珈琲は、病も呪いも吹き飛ばし、煙草は吸っただけで魔力上限を突破。 伝説級アイテム扱いされ、貴族も英雄も列をなすが──本人は、そんな騒ぎに興味なし。 「……うまい珈琲と煙草があれば、それでいい」 誰かと群れる気も、誰かに媚びる気もない。 ただ、自分のためだけに、今日も一杯と一服を楽しむ。 誰にも縛られず、誰にも迎合しない孤高のおっさんによる、異世界マイペースライフ、ここに開店!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

処理中です...