終末世界に少女とAIの見つけた生きるというすべてへの解答

春ノ領

文字の大きさ
108 / 113
15-人ならざるゴルディロックス

終電逃した酔っ払いが永住するような話

しおりを挟む
「ここだ」

 ツルツルのタイヤがヒビだらけゴミだらけのアスファルトでいつ滑るかと心配しながら秋の山道をツーリングすること十数分、集落の真上まで辿り着いた。
 真上である、地上には何も無く、周囲と同じように枯葉まみれの地面と乱立する木々だけがある。人間の住処はこの真下、古い地下施設を利用したものだという。

「確か目印が…あるはずなんだけど……」

 いや、何も無いというのは間違いか、よく見れば痕跡を見つけた、不自然に木が生えていない円形の空間がいくつかある。バイクから降り、枯葉を鳴らしつつその場所まで歩いていってみれば、円の内側へ入った途端に地面の感触が変わった。葉を払いのけ、少し土を掘ってみるとコンクリートが顔を出す、円を囲むように継ぎ目があり、そして核攻撃に耐えられるレベルの分厚さを持つ。最初は核シェルターかと思ったが、おそらくこれはミサイルサイロ。

「スコードロン1、2、ステルスモードで周辺10キロ圏内の人工物を捜索。武装は使用禁止、敵と接触の場合は離脱して」

 ユウヤが入口を見つけるのに手間取っている間、聞こえないようポケットの中にあるドローンへ命令、ここ以外に地上へ露出する部分を探させる。これは軍事基地だ、核発射能力と対核攻撃能力を持つ、かなり大規模な。

「ヴァニタス」

『何だ』

「古い地下基地があった、すごく大きな、偵察機がありったけ欲しい」

『ほらな、俺の言う事聞いておいてよかっただろ』

「うるさい」

『はは……』

 こんな山奥にこんな基地があるなんて把握していなかった、いやミサイルサイロは隠匿するのが普通だから当然といえばそうなのだが、旧軍のデータベースにも情報が無かったのだ、管理者が反乱を始めた日以降に建設された基地、という事だろうか。外国軍ではなく最初からAIと戦う事を想定した基地なら納得いく、生憎とここが稼働した記録も形跡も無いけれども。

「あったあった、よし」

 簡単な調査と一応の報告を終え、元の場所まで戻るとユウヤがバイクを倒していた。サイドバッグから出した布を被せて、その上に枯葉を敷き詰め、さらに枝を乗せる。車体はまったく見えなくなった、わざわざ枝をどかして踏みつけない限りは見つからない。

「これは?」

「隠さないで置いておいたら盗まれる、間違いなくね。そのままにしといてくれる奴なんてそうそういないよ」

 丹念に慣らして違和感も取り除き、念入りにチェックしてから彼は少し離れた別の場所へ移動した。あったのは小さなハッチだ、マンホールと同じくらいのサイズ。分厚い蓋を開けるとハシゴが1本、音響探索してみれば10m先に底がある。

「お先にどうぞ」

「じゃ、入るよ?」

「気をつけてな、暗いかあぁっ!?」

 告げてから、アステルは飛び降りた。10mを一気に降下、めちゃくちゃ反響する着地音を出す。同時にナイトビジョンを起動し、ユウヤが降りてくるまでその場で通路を観察する。
 小型トラックくらいなら通れそうな通路だ、東西に向かって伸びており、今使ったハッチはミサイルサイロのメンテナンス用だろう。東を向くアステルの左側にサイロへの入口、右側に下層への階段があって、どこまでも続く通路はここからでは突き当たりを視認できない。ただ僅かに曲線を描いているのがわかった、一方向へ走り続ければぐるりと回って戻ってこれるかもしれない。

「ひろ……」

「このすぐ下に線路が走ってる…よっと、どこに繋がってるかはまだ誰も知らないとか」

 ちゃんと蓋を閉めたのちハシゴを降りて、懐中電灯を点けた彼の誘導に従い階段を下へ、確かに地下鉄のホームと、おそらく一度も使われなかったのだろう列車の残骸があった。車内やホームの端などに明かりがちらほらあり、何人かが寝転んだりうずくまっているのが見える。

「ずいぶん、みんな散らばってるけど」

「ここの人達は協力しないタイプなんだ、この場所が安全だから集まってるだけで、手を合わせて開拓したりはしない。多くはないけどたまにあるよ、こういう、見張りがいなくても安心して眠れるような隠れ家なら」

 つまりここは村ではない、避難所だ。昼間から何もせず寝ているなら内部の探索もほぼしていないだろう。この地下施設をもっと有効活用しようとは思わないのか、しかるべき集団の手に渡ればどれほどの戦力的価値となるか計り知れないというのに。
 しかし、となると、すごく困る。彼女らがここに入ったらちょっとやそっとでは攻撃できなくなってしまう、ユウヤに案内してもらった手前、ここの住民は間違っても傷付けられないし。塩送ってる場合ではないかもしれない、むしろこちらの増強が必要だ。彼女らをここに入れさせないか、もしくは住民と分断する方法。

「非効率な生き方してるのね……」

「仕方ないんだよ、こんな世界で生きてるとどうしても心が荒んで、他人と関わりたくなくなるんだ。みんな辛い目に遭ってきてる、そうしたらもう助け合ったりなんかできない」

 辛い目か、それに関してはアステルが何か言う権利は無い、辛い目に遭わせてきた側である。
 思い当たったのはやはり"彼女"、前回の戦闘ではひどく辛い思いをさせた、出自も知ってしまったようだし。あの子でさえも絶望してしまうのだろうか、こんな世の中では。

 と、どうしても気になって、今何をしているか聴いてみようと、ネットワークに接続する、かろうじて電波を捉えた。

 彼女の通信機へ接続、すぐに声が聞こえてきて



『フェイさん! さあフェイさん! お腹空いてるでしょう!? たっぷりありますよ! 味も安全も確かめました! おいしいですよ! 保証します!』

『無理! 無理無理それはさすがに! 食べ物と思えないぃ!』

『何を言っているんですか立派に料理です! フェルトの腕は確かですから! そうみんなあまりのおいしさに打ち震えてるだけで悶絶なんてしてないしてない! これはおいしいフランス料理! ただちょっと口に出すのがはばかられるような材料使ってるだけで!』

『ていうか怖い! 目! 目が血走ってる!』

『なぁーにを言ってるんですか私は冷静です1人だけ助かろうなんて許さないとか全然考えてませんよあはははははははははははははははは! ほらほらあぁーーん!』

『ちょっと待ってやめてせめて覚悟決める時間gゔぃーぶーらーふーらーーんs



 切った。

「ユウヤ……この世界にはね……心臓が止まるまで大騒ぎし続ける人種もいるの……」

「いや長いこと旅してきたけどそんな奴……」

「いるの……ほんとにいるの……ていうかひと月以内にここに現れる」

「は…はぁ……」

 彼女の事はいい、心配いらない。なんか疲れた、気にして損した。
 探索を継続しよう、今の鈴蘭は忘れて。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

独身おじさんの異世界おひとりさまライフ〜金や評価は要りません。コーヒーとタバコ、そして本があれば最高です〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で身も心もすり減らした相馬蓮司(42歳)。 過労死の果てに辿り着いたのは、剣と魔法の異世界だった。 神様から「万能スキル」を押し付けられたものの、蓮司が選んだのは──戦いでも冒険でもない。 静かな辺境の村外れで、珈琲と煙草の店を開く。 作り出す珈琲は、病も呪いも吹き飛ばし、煙草は吸っただけで魔力上限を突破。 伝説級アイテム扱いされ、貴族も英雄も列をなすが──本人は、そんな騒ぎに興味なし。 「……うまい珈琲と煙草があれば、それでいい」 誰かと群れる気も、誰かに媚びる気もない。 ただ、自分のためだけに、今日も一杯と一服を楽しむ。 誰にも縛られず、誰にも迎合しない孤高のおっさんによる、異世界マイペースライフ、ここに開店!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

処理中です...