109 / 113
15-人ならざるゴルディロックス
やや騒がしいスタンドバイミー
しおりを挟む
「降ってきた、危なかったな」
探索結果、入っていけるのは施設全体の半分以下というのが判明した。 人が住み着いているのはホーム付近のみ、南北に伸びる線路はシャッターが道を塞ぐ。上層の円形通路も等間隔に並ぶ扉のすべてが開かないのを見て早々に切り上げた。扉もシャッターも電子ロックで、開放するには電力を復旧させなければならない、それか大量の爆薬だ。
諦めて地上へ戻り、地下探索の間に偵察ドローンが集めた情報を整理する。内部侵入ができそうな箇所がひとつ、地表に露出したシャッターがふたつ。
それととある一帯で放射線の反応、ユウヤにとっては悪い知らせだが、アステルにとっては良い知らせである、原子炉の存在を示唆する情報に他ならない。見つけた入口から発電室へ向かい、電力を復旧、すべての扉を開ける。内部は広い方がいい、色々予想すると。
それで、現在その新しく見つけた入口の前、ポツポツ降ってきた雨を避けようとバイクを中へ押し入れる。本当に間一髪だった、葉を弾く雨は大粒で激しく、少し経てば一面びしょ濡れになるだろう、このツルツルタイヤで濡れた路面など考えたくない。
「アナタはここで待ってて、この先、生物にはすごく危険だから」
「大丈夫なのか? ここで棒立ちしてても」
「うん」
大きな横穴、破口である、地面にたくさんの足跡がある。どっからどう見ても例のビーストで、サイズは20mに届くかもしれない。他にも体毛やら爪痕やら痕跡だらけ、ここは巣穴なのだろう。放射線もあるし彼を同行させる訳にはいかない、さりとて1人にしてもそれはそれで危ない、この雨では退避もできない。
そこでこれだ。
「危なくなったら無闇に動かないで、実のところあんまり賢くないから、戦闘機動に巻き込まれて踏み潰されるかも」
「おおぉ……」
まず4脚鏡餅、人類側からはグリムリーパーと呼ばれる機体が現れ、横穴の前に立ち塞がった。続けてバトルドール複数、グリムリーパーの周りで防御姿勢を取る。ハンドレールガンも持たせてあるし、巨大化したクマ程度なら追い払えるだろう。できればもう少し欲しかったが、現時点で製造を終えたのはこれだけだ。
「スコードロン1先行、スクアッド1後方警戒、スクアッド2待機」
彼から目を離し、ポケットに入れていたドローンを放る。その横をワンコが4匹追い抜いていき、もう4匹がアステルを囲んで、後方にグリムリーパーの子分がつく。エコーロケーションとナイトビジョンを併用しつつゆっくり奥へ進み、動体反応が無いのを確認してから速度を上げた。
行き先は大丈夫だ、放射線の濃い方へ進めばいい。といっても内部は線路が敷かれた一本道のトンネルである、迷いたくても迷えない。
「……そういえば、名前」
音波を出すのと足を動かす以外にCPUを使う動作が無いので、アステルを護衛するワンコに目を向けてみる。形式番号はuM21であるが、人類側のコードネームみたいなのを付けてもいいかもしれない。暇つぶしにはいいだろう、必要かどうかは別として。
「…………あの、鈴蘭?」
『あ…すてる……?』
名前決めようと思い立ってから他者に助けを求めるまでこの間1秒、このボディの演算能力は優秀だ。通信を繋げた鈴蘭はなんか疲れきっていたものの、理由はたぶん知っている、とてもくだらない話だろう、いや当人達には死活問題なのだろうが。
「今、話せる?」
『大丈夫ですよ……たまに吐き気催すかもしれないけど……』
味はいいんじゃなかったのか、いったい何を食べたんだ。
「犬の名前が欲しいんだけど」
『いぬ?』
「特定の1匹じゃなくて、同じ種別の総称を決めなきゃいけなくて」
『しば』
やっぱり早い。
「え?」
『柴』
「シヴァ?」
『そう、柴犬の柴、気に入りません?』
「シヴァ犬……強そう……」
『?』
とにかく自分でひねり出すよりはマシだろう、このワンコはシヴァと呼ぼう。なんか勘違いがあるようなないような気もするけど、まぁいい。
「もう一個いい?」
『もちろん』
「えっと……大きな虫…?」
『む、うぷぅ……!!』
虫か、虫食べたのか。
『メルぅ……』
『どした?』
『虫の名前……』
『ヨロイモグ』
『それ以外で!!!!』
とかなんとか、タイミングが悪かったようで、今回ばかりは即答しなかった。向こうで相談している間にこちらは駅のホームまで辿り着いてしまい、発電室の案内標識があるのを見てよじ登る。
『ビルマニクス』
「ん、良さそう、ごめんね」
『いえ、これくらいならいくらでも』
よし、決定だ、グリムリーパーの子分はビルマニクス、異論は無い。急いで発電機を直そう、通路の状態からしてそう劣化はしていないだろうし。
『……アステル、エビのクリームソテー食べ』
「それエビじゃないんだよね????」
探索結果、入っていけるのは施設全体の半分以下というのが判明した。 人が住み着いているのはホーム付近のみ、南北に伸びる線路はシャッターが道を塞ぐ。上層の円形通路も等間隔に並ぶ扉のすべてが開かないのを見て早々に切り上げた。扉もシャッターも電子ロックで、開放するには電力を復旧させなければならない、それか大量の爆薬だ。
諦めて地上へ戻り、地下探索の間に偵察ドローンが集めた情報を整理する。内部侵入ができそうな箇所がひとつ、地表に露出したシャッターがふたつ。
それととある一帯で放射線の反応、ユウヤにとっては悪い知らせだが、アステルにとっては良い知らせである、原子炉の存在を示唆する情報に他ならない。見つけた入口から発電室へ向かい、電力を復旧、すべての扉を開ける。内部は広い方がいい、色々予想すると。
それで、現在その新しく見つけた入口の前、ポツポツ降ってきた雨を避けようとバイクを中へ押し入れる。本当に間一髪だった、葉を弾く雨は大粒で激しく、少し経てば一面びしょ濡れになるだろう、このツルツルタイヤで濡れた路面など考えたくない。
「アナタはここで待ってて、この先、生物にはすごく危険だから」
「大丈夫なのか? ここで棒立ちしてても」
「うん」
大きな横穴、破口である、地面にたくさんの足跡がある。どっからどう見ても例のビーストで、サイズは20mに届くかもしれない。他にも体毛やら爪痕やら痕跡だらけ、ここは巣穴なのだろう。放射線もあるし彼を同行させる訳にはいかない、さりとて1人にしてもそれはそれで危ない、この雨では退避もできない。
そこでこれだ。
「危なくなったら無闇に動かないで、実のところあんまり賢くないから、戦闘機動に巻き込まれて踏み潰されるかも」
「おおぉ……」
まず4脚鏡餅、人類側からはグリムリーパーと呼ばれる機体が現れ、横穴の前に立ち塞がった。続けてバトルドール複数、グリムリーパーの周りで防御姿勢を取る。ハンドレールガンも持たせてあるし、巨大化したクマ程度なら追い払えるだろう。できればもう少し欲しかったが、現時点で製造を終えたのはこれだけだ。
「スコードロン1先行、スクアッド1後方警戒、スクアッド2待機」
彼から目を離し、ポケットに入れていたドローンを放る。その横をワンコが4匹追い抜いていき、もう4匹がアステルを囲んで、後方にグリムリーパーの子分がつく。エコーロケーションとナイトビジョンを併用しつつゆっくり奥へ進み、動体反応が無いのを確認してから速度を上げた。
行き先は大丈夫だ、放射線の濃い方へ進めばいい。といっても内部は線路が敷かれた一本道のトンネルである、迷いたくても迷えない。
「……そういえば、名前」
音波を出すのと足を動かす以外にCPUを使う動作が無いので、アステルを護衛するワンコに目を向けてみる。形式番号はuM21であるが、人類側のコードネームみたいなのを付けてもいいかもしれない。暇つぶしにはいいだろう、必要かどうかは別として。
「…………あの、鈴蘭?」
『あ…すてる……?』
名前決めようと思い立ってから他者に助けを求めるまでこの間1秒、このボディの演算能力は優秀だ。通信を繋げた鈴蘭はなんか疲れきっていたものの、理由はたぶん知っている、とてもくだらない話だろう、いや当人達には死活問題なのだろうが。
「今、話せる?」
『大丈夫ですよ……たまに吐き気催すかもしれないけど……』
味はいいんじゃなかったのか、いったい何を食べたんだ。
「犬の名前が欲しいんだけど」
『いぬ?』
「特定の1匹じゃなくて、同じ種別の総称を決めなきゃいけなくて」
『しば』
やっぱり早い。
「え?」
『柴』
「シヴァ?」
『そう、柴犬の柴、気に入りません?』
「シヴァ犬……強そう……」
『?』
とにかく自分でひねり出すよりはマシだろう、このワンコはシヴァと呼ぼう。なんか勘違いがあるようなないような気もするけど、まぁいい。
「もう一個いい?」
『もちろん』
「えっと……大きな虫…?」
『む、うぷぅ……!!』
虫か、虫食べたのか。
『メルぅ……』
『どした?』
『虫の名前……』
『ヨロイモグ』
『それ以外で!!!!』
とかなんとか、タイミングが悪かったようで、今回ばかりは即答しなかった。向こうで相談している間にこちらは駅のホームまで辿り着いてしまい、発電室の案内標識があるのを見てよじ登る。
『ビルマニクス』
「ん、良さそう、ごめんね」
『いえ、これくらいならいくらでも』
よし、決定だ、グリムリーパーの子分はビルマニクス、異論は無い。急いで発電機を直そう、通路の状態からしてそう劣化はしていないだろうし。
『……アステル、エビのクリームソテー食べ』
「それエビじゃないんだよね????」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
独身おじさんの異世界おひとりさまライフ〜金や評価は要りません。コーヒーとタバコ、そして本があれば最高です〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で身も心もすり減らした相馬蓮司(42歳)。
過労死の果てに辿り着いたのは、剣と魔法の異世界だった。
神様から「万能スキル」を押し付けられたものの、蓮司が選んだのは──戦いでも冒険でもない。
静かな辺境の村外れで、珈琲と煙草の店を開く。
作り出す珈琲は、病も呪いも吹き飛ばし、煙草は吸っただけで魔力上限を突破。
伝説級アイテム扱いされ、貴族も英雄も列をなすが──本人は、そんな騒ぎに興味なし。
「……うまい珈琲と煙草があれば、それでいい」
誰かと群れる気も、誰かに媚びる気もない。
ただ、自分のためだけに、今日も一杯と一服を楽しむ。
誰にも縛られず、誰にも迎合しない孤高のおっさんによる、異世界マイペースライフ、ここに開店!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる