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とある少女の話

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「うーん、やっぱり自分がっていうのはなんかなぁ…」



目の前の綺麗な人達を見ていても何も心が踊らない。



あの時は確かに目の前が明るくなったかのように輝いていたのに。




あの時と今、何が違うのか。





どうしたって何がが足りていない。






例えば────そう。






刺すように冷たい菖蒲色しょうぶいろのあの






どうしたらもっと面白くなるだろう?






「ふふっ、そうだわ。なら王子に近付いてみるのはどうかしら」






手始めにローズ祭なんていいと思う、きっと大きく流れが変わる事だろう。








そのまま奪ってしまうのもありかもしれないな。






どんなに面白い表情を見せてくれるだろう?









「ねぇ、ディム。一つ提案があるの、聞いてくれるかしら────」





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