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ある神様の話 2
しおりを挟むきっかけはほんの些細な事だった。
どうということの無い、そのうち収束されるはずの小さな衝突と諍いだった。
それが気が付けば大事になっていた、なんて近代となってはよくある話だろうか。
それがただの人間ならばどうということはなかったのだろうか、例えをあげればキリがない。
ただ彼女を大切に想っていた。
僕にはないものばかり持っている彼女が好きだった。
暖かい日差しのような笑顔も、春風のように優しげなその声も何もかも全部。
けれど彼女は優しすぎるが故に悪意には酷く鈍感だった。
彼女を取り巻く悪意から彼女を守ろうとして結果的に自らが利用されてしまった。
それをきっかけに彼女との決別になろうとは行動し始めた頃は思いもしていなかった。
甘かったのは自分も同じなのだと、後に後悔する羽目になるとは。
だからこそ私は、僕は、世界を呪う。
君は創造神で、主神で、そして、
───────裏切り者だ。
知っている。君は何も悪くない事。
けれど私は神話の歪みに置かれて書き換えられて君に刃を向ける。
どう転がっても悪役になるように歪められた私は敢えて悪役になった。
復讐に囚われ、報復を虎視眈々と狙う魔神、魔王だなんて言い伝えられても。
そんな最期がろくでもない事も知っていたくせに。
何度繰り返そうと、私は宿命を変えられない。
彼女を手に入れる事は彼女を殺す事も同義になった今、永遠にあの笑顔もあの日々も戻らない事を意味した。
ただ、絶望に噎ぶ悪の権化と化した私ではもう彼女に触れることも叶わない。
幾度と嫌なくせして気が遠くなる程、彼女達と戦ってきた。
精神は疲れ果て、諦観しているくせに尚も諦め切れないまま、何度も憑代を代えては何度も、何度も。
独り残った傍観者は私に呆れながら助言を投げてきた。
『キミがキミである限り宿命は変わらないよ。本当に変えたいのなら、いい加減キミもキミを棄てないとね』
分かっていたことを言われたところで何の助言にもならない。
本当は分かっていた、憑代を介する私ではこのねじ曲がって歪んだ神話はもう変えようがないことも。
そして神話はもう終わってしまっていることだと。
最期に残った願いをのせて大きな賭けに出よう、今更そんなことしたって叶える事は難しいだろう。
でも、足掻いた証さえ残れば、それだけで疲れ果てた私には充分だ。
もう一度だけ、あの頃みたいな幸福を体現したような優しい笑顔を僕に見せて欲しい。
賭けに出たって歪み切っていた僕にはもう、真っ当な方法なんて思い出せないけれどきっと───────
彼女を手に入れてみせよう、『僕』がこの宿命を背負って生まれてきてしまったのだから。
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