京の男(ひと) 東京の男(ひと)

KEYちゃん

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出会い(京太郎目線)

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 とにかく忙しい。仕事場の我が家は廃虚のようだ。資料があちこちに散らばり、コーヒーを飲み終わったマグカップが幾つも並んでいた。真正面にはノートパソコン。オレの仕事の相棒だ。遅れている。このペースでは締切りに間に合わない。
 携帯が着信を告げる。
「はい如月です」
仕事用の携帯ゆえペンネームで応じた。
「如月先生、順調に進んでますか?編集の担当者だ。デビューして約5年。新人の頃からずっと支えてくれた頼もしい若者だ。
「それがなぁ~。ちょっとスランプでねぇ…」
今までスランプとは無縁だったのにパソコンを前にしてもキーボードが動かない。頭も指先もフリーズしているのだ。
「ちょっとだけ息抜きしませんか?先生」
編集の東尾が言う。野球観戦ぐらいしか趣味がない。昔は史跡巡りが好きだったが、仕事と直結している今、そんなことしたら仕事を思い出して余計に焦る。そして冬の今、野球はしていない。作家活動を始めてから移り住んだ京都から贔屓のチームを応援しに甲子園球場に行くこともない。
「そう言われてもなぁ~」
行くあてが見つからない。
 とりあえず、映画を観に行った。四条河原町に行けばあちこちで上映している。
    良い気晴らしになった。チケットを買い、ファーストフードで腹を満たし、コーラーとキャラメル味のポップコーンを持ちも込む。デビュー前に彼女と良く来たなぁ~。就職して上京してから付き合った彼女。今はどうしてることやら
    編集が言った通り、気晴らしすると見事なまで筆が進んだ。大坂築城の大工頭の想いがどうも描写できずにウダウダしていたのだが、ここに来て、堰に詰まった異物が流れ落ちたように一気に進んだ。スランプが嘘のようだ
    しかし何て言ったか?主演の俳優さん、いい演技していたなぁ~。イケメンだった。

    無事に締切り前に原稿を送信して今回も何とかなった。編集担当者に礼を言っておいた。
    次の連載分もスムーズな筆運びだ。その後………。
作品のドラマ化のため放送局に呼ばれた。新幹線で東京に行くと担当者が待ってくれている。
「大学卒業して数年、東京にいたから大丈夫だよ」
と、言ったが担当者は許さない。
「存じております。京都に移られるまでたまにご一緒してましたから」
知った上で迎えに来ると言う。まぁ楽だし甘えることにしよう。
    編集担当者がテレビ局まで社用車で送ってくれた。ありがたいものだ。
    会議室に到着するとすでに会議は始まっていた。軽く監督さんらしき人にお辞儀して末席に腰掛けた。すると、
「今どきの若いヤツは遅れてきてこの態度か! えっ~?」
並ぶ席の真ん中辺りからだ。少し驚いた。一瞬、詫びよう思ったが良く考えると今日の予定はすでに知らせてある。何時の京都駅の新幹線に乗る。到着は何時ごろだと。予定時間までまだ少し前だ。そして先に会議は進めておいて欲しいとも伝えてある。少しムカついた。
「あれ、何者や?」
オレは聞こえよがしに隣の編集に言ってやった。そいつは顔を真っ赤にして怒っている。激怒ってヤツだ。
「真っ赤やしこれ貸したれ」
と、言ってポーチから京扇子を出して編集に手渡した。
「君、無礼と言う言葉は知らんのか?」
などと言ってくる。負けていない。
「あんたより日本語は解ってるつもりやで。それで飯喰ってんやからな」
奈良出身のオレははんなりとした京都弁より少し崩れた関西弁だ。
「お前、何言ってやがる。出ていけ!」
コイツにそんな権限があるとは思えない。しかし売り言葉に買い言葉だ。
「おお、ええで。まだドラマ化の契約もしてないし。じゃ、今回のプロジェクトは中止ってことやな。帰るわ」
言ってるうちにヒートアップしてきた。マジの京都人なら穏やかな回りくどい嫌味で応戦するのだろうが………。このアホも少しびっくりした様子だ。
    放送局の人間はあたふたしているのが滑稽だ。
「まぁ、先生、ここは穏便にお願い致します。大江さんも」
監督の松尾が止めに入った。いきなりの開戦に入るタイミングが遅れたらしい。
「先生、こちらヒロインの坂根ひかりさんと助演の生野淳一君の事務所の社長、松尾さんです」
「そうなん」
熱くなったところに冷水を掛けられた格好のオレは黙って少し頭を下げた。
「解りました」
カリスマな芸能プロの社長らしいが聞いたことない。オレは元から芸能のことに弱い。
「そして松尾さん。こちらが本作品の原作者如月京太郎先生です。今日は京都から起こしで1時間ほど遅れる旨、お伺いしております」
「失礼しました。松尾です。まさかこんなお若い方が原作の先生とは思わず申し訳ありませんでした」
丁寧に詫びてきたのでもちろん、オレも許した。
「こちらこそ年配の方に敬意も見せず失礼しました」
と深々と頭を下げた。

    そこへ………。血相変えてやって来たのが今作品の主演、楸(ひさぎ)翔太郎である。
「申し訳ありません。遅刻しました。本当に申し訳ありません」
慌てて会議室に飛び込んで来たののであろう。額には汗が滲み、髪も乱れていた。何処かで見たぞ!!オレはその青年を見上げて思った。さて、何処でであろう。これほどのイケメンなら忘れるはずはないのだが……。
うーん………?
   しばらくして青年が声を掛けた。一旦、深呼吸したようだ。そして口を開いた。
「この度、主演のオファーを頂いた楸翔太郎です。よろしくお願い致します」
と、言って頭を下げた。
オレはああ先日の映画に出てた俳優さんか………?
    これが翔太郎とオレの出会いだった
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