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出会い(翔太郎目線)
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やっちまった。今日は大事な打ち合わせだと言うのに。今から向かっても遅刻確定だ。携帯を見るとマネージャーからの鬼電だし。
とりあえずベッドから飛び降りて起き上がる。寝グセのまま外に飛び出す訳には行かない。そのような姿を人には見せてはならないからだ。
朝飯は論外。洗顔して着替える。髪を整えているとマネージャーがやって来た。
「楸翔太郎君。なにしてるんの!!局に行ったらまだ来てないし!」
鬼の形相だ。前日、マネージャーの迎えを断ってこのありさまだ。この形相も無理からぬことである。
「申し訳ありません」
とりあえず謝るほかない。
「とりあえず、下にタクシー待たせてるんで行くよ!」
叱られてオレはすぐに部屋を出た。髪が整わないのはキャップで誤魔化した。オレはマネージャーに促されるようにしてタクシーに乗った。本当に大失敗だ。
「兵頭さん、今日は本当にすみません」
タクシーの中でもオレはマネージャーに謝った。これは自分の過失100%だ。兵頭マネージャーは少しだけ表情を和らげたようだったがすぐに苦い顔色に戻した。根が優しい兵頭さんは多分、もうあまり怒っていない。しかしそれでオレが緊張を解いてはならないので怖い顔色に戻したのだ。局の会議室でキチンと皆さんに謝罪するまでは緊張状態を維持しておれ!と、その表情は物語っていた。
遅刻したお陰で大きな渋滞には巻き込まれずにすんだ。マネージャーは事務所に連絡をして今、向っていることも伝えた。
折り返し事務所から連絡が兵頭さんに入った。
「翔太郎君、君の叔母さんが交通事故で昨晩、大怪我をされたことにした。病院に駆けつけて、今、仙台から大急ぎで戻ってることにしてるから。聞かれたらそう答えて。聞かれなかったわざわざ言う必要はない」
嘘は出来るだけつかない方がいい。嘘は次に聞かれたら嘘を重ねないと行けないし、そうすると何処かで綻びを見せるものだ。
「解りました。フォロー、ありがとうございます」
オレは素直に頭を下げた。事務所の皆んながオレを守ってくれている。感謝しないはずもない。
会議室ではすでに議論が白熱していた。
「遅れて申し訳ありません。主演のオファーを頂きました新人の楸(ひさぎ)翔太郎です」
監督の鈴本が翔太郎を一瞥して、そして言葉を繋いだ
「叔母さんの容態はどうだった?」
と。翔太郎は事前に聞いておいて良かったと思った。何のことです?なんて言ってしまえば万事休すだ。
「はい。何とか峠は越した模様で………。皆さまにはご迷惑とご心配をお掛けしました」
表情を作るのはプロだから。まずは最初少し明るく、その後、申し訳なさげな顔色を見せた。でもその辺りは大丈夫。後でただの寝坊だとオレが伝えたら京太郎さんはびっくりしてた。
「皆さん、楸翔太郎君です」
鈴本が全員に紹介した。翔太郎はもう一度、深々と頭を下げた。
「翔太郎君は何処か空いてる席に座って」
鈴本が言い、オレは京太郎さんの隣に座った。
「ここ大丈夫ですか?」
尋ねると。
「うん。エエよ」
と笑ってくれた。可愛い人だ。共演者か?オレが座ろうとしてると多くの共演者を輩出しているプロダクションの松尾が挙手して発言を求めた。
「松尾社長、どうされましたか?」
鈴本が発言を求めた。
「君の遅刻で如月先生と私の間で少しバトルが発生した。もちろん、私の勘違いが原因なんだが、元は君の遅刻からだ。如月先生にもよしなにお詫びしておきなさい」
松尾プロダクションの松尾は芸能界で知らぬ者はいないほどの大物だ。気分を害したのならキチンと頭を下げないと行けない。嫌われたままだと何かと今後のためにもならないはずだ。
「松尾社長、まずはご指摘、ありがとうございます。そして、今回、松尾社長にも不愉快な想いをお掛けしましたことをお詫び申し上げます」
と、キチンと頭を下げた。これは本心からである。そして、
「えっと、如月京太郎先生はどちらにいらっしゃいます?」
有名な人気作家だが顔面の露出は少なくて解らない。
「ああ、俺だよ」
隣の席からトントンとオレの腕を軽く叩いて合図してくれた。
「えっ!先生の隣に座ってましたか?挨拶もできずに………」
オレは本当に驚いた。まさかこんな若くて可愛い人が人気作家だなんて想像もつかなかった。
「何やらご迷惑をお掛けしたようで申し訳ありません。今度は気をつけますので………」
京太郎さんは、
「大丈夫だから、もう座ろう」
と、言ってくれた。
議事はその後、滞りなく終わった。局からお弁当が出た。
「終了時間が読めなくてお店を予約できませんでした。どうぞお召し上がり下さい」
かなり上等なお弁当だ。ロケ弁とかとは全然違う。作家さんや他の協力者も出席している会議は違うもんだ。
お弁当を頂き、皆、ボチボチと退出していく。京太郎さんも編集者と一緒に鈴本監督に声を掛けて退出していった。オレはもう一度、お詫びした。
「いいよ、いいよ」
京太郎さんは笑ってくれた。良かった。根には持って無かったようだ。マネージャーが京太郎さんを追いかけてひと言、ふた言話していた。
後刻、マネージャーから松尾さんと京太郎さんのバトルを教えて貰った。松尾さんがオレと京太郎さんを間違えて叱りつけたらしい。それを聞いた時、申し訳なさより笑ってしまったのだった。松尾さんがいくら新人とは言えオレの容貌を知らないのは少しショックだったが、それより京太郎さんの容姿と全然違うじゃん。オレはあんなに可愛い顔してねぇもん。でも、あの人、人気作家なのにイケメンだったよなぁ。オレはそう思うと1人思い出し笑いしていた。
とりあえずベッドから飛び降りて起き上がる。寝グセのまま外に飛び出す訳には行かない。そのような姿を人には見せてはならないからだ。
朝飯は論外。洗顔して着替える。髪を整えているとマネージャーがやって来た。
「楸翔太郎君。なにしてるんの!!局に行ったらまだ来てないし!」
鬼の形相だ。前日、マネージャーの迎えを断ってこのありさまだ。この形相も無理からぬことである。
「申し訳ありません」
とりあえず謝るほかない。
「とりあえず、下にタクシー待たせてるんで行くよ!」
叱られてオレはすぐに部屋を出た。髪が整わないのはキャップで誤魔化した。オレはマネージャーに促されるようにしてタクシーに乗った。本当に大失敗だ。
「兵頭さん、今日は本当にすみません」
タクシーの中でもオレはマネージャーに謝った。これは自分の過失100%だ。兵頭マネージャーは少しだけ表情を和らげたようだったがすぐに苦い顔色に戻した。根が優しい兵頭さんは多分、もうあまり怒っていない。しかしそれでオレが緊張を解いてはならないので怖い顔色に戻したのだ。局の会議室でキチンと皆さんに謝罪するまでは緊張状態を維持しておれ!と、その表情は物語っていた。
遅刻したお陰で大きな渋滞には巻き込まれずにすんだ。マネージャーは事務所に連絡をして今、向っていることも伝えた。
折り返し事務所から連絡が兵頭さんに入った。
「翔太郎君、君の叔母さんが交通事故で昨晩、大怪我をされたことにした。病院に駆けつけて、今、仙台から大急ぎで戻ってることにしてるから。聞かれたらそう答えて。聞かれなかったわざわざ言う必要はない」
嘘は出来るだけつかない方がいい。嘘は次に聞かれたら嘘を重ねないと行けないし、そうすると何処かで綻びを見せるものだ。
「解りました。フォロー、ありがとうございます」
オレは素直に頭を下げた。事務所の皆んながオレを守ってくれている。感謝しないはずもない。
会議室ではすでに議論が白熱していた。
「遅れて申し訳ありません。主演のオファーを頂きました新人の楸(ひさぎ)翔太郎です」
監督の鈴本が翔太郎を一瞥して、そして言葉を繋いだ
「叔母さんの容態はどうだった?」
と。翔太郎は事前に聞いておいて良かったと思った。何のことです?なんて言ってしまえば万事休すだ。
「はい。何とか峠は越した模様で………。皆さまにはご迷惑とご心配をお掛けしました」
表情を作るのはプロだから。まずは最初少し明るく、その後、申し訳なさげな顔色を見せた。でもその辺りは大丈夫。後でただの寝坊だとオレが伝えたら京太郎さんはびっくりしてた。
「皆さん、楸翔太郎君です」
鈴本が全員に紹介した。翔太郎はもう一度、深々と頭を下げた。
「翔太郎君は何処か空いてる席に座って」
鈴本が言い、オレは京太郎さんの隣に座った。
「ここ大丈夫ですか?」
尋ねると。
「うん。エエよ」
と笑ってくれた。可愛い人だ。共演者か?オレが座ろうとしてると多くの共演者を輩出しているプロダクションの松尾が挙手して発言を求めた。
「松尾社長、どうされましたか?」
鈴本が発言を求めた。
「君の遅刻で如月先生と私の間で少しバトルが発生した。もちろん、私の勘違いが原因なんだが、元は君の遅刻からだ。如月先生にもよしなにお詫びしておきなさい」
松尾プロダクションの松尾は芸能界で知らぬ者はいないほどの大物だ。気分を害したのならキチンと頭を下げないと行けない。嫌われたままだと何かと今後のためにもならないはずだ。
「松尾社長、まずはご指摘、ありがとうございます。そして、今回、松尾社長にも不愉快な想いをお掛けしましたことをお詫び申し上げます」
と、キチンと頭を下げた。これは本心からである。そして、
「えっと、如月京太郎先生はどちらにいらっしゃいます?」
有名な人気作家だが顔面の露出は少なくて解らない。
「ああ、俺だよ」
隣の席からトントンとオレの腕を軽く叩いて合図してくれた。
「えっ!先生の隣に座ってましたか?挨拶もできずに………」
オレは本当に驚いた。まさかこんな若くて可愛い人が人気作家だなんて想像もつかなかった。
「何やらご迷惑をお掛けしたようで申し訳ありません。今度は気をつけますので………」
京太郎さんは、
「大丈夫だから、もう座ろう」
と、言ってくれた。
議事はその後、滞りなく終わった。局からお弁当が出た。
「終了時間が読めなくてお店を予約できませんでした。どうぞお召し上がり下さい」
かなり上等なお弁当だ。ロケ弁とかとは全然違う。作家さんや他の協力者も出席している会議は違うもんだ。
お弁当を頂き、皆、ボチボチと退出していく。京太郎さんも編集者と一緒に鈴本監督に声を掛けて退出していった。オレはもう一度、お詫びした。
「いいよ、いいよ」
京太郎さんは笑ってくれた。良かった。根には持って無かったようだ。マネージャーが京太郎さんを追いかけてひと言、ふた言話していた。
後刻、マネージャーから松尾さんと京太郎さんのバトルを教えて貰った。松尾さんがオレと京太郎さんを間違えて叱りつけたらしい。それを聞いた時、申し訳なさより笑ってしまったのだった。松尾さんがいくら新人とは言えオレの容貌を知らないのは少しショックだったが、それより京太郎さんの容姿と全然違うじゃん。オレはあんなに可愛い顔してねぇもん。でも、あの人、人気作家なのにイケメンだったよなぁ。オレはそう思うと1人思い出し笑いしていた。
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