異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬

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第41話 収穫祭の日

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朝焼けがまだ残る空の下、白石牧場は早くから活気に満ちていた。悠真は大きなワゴンの荷台に最後の準備品を積み込みながら、今日一日の流れを頭の中で整理していた。

「よし、これで大丈夫だな」

彼が呟いた時、リーフィアが両手に籠を持って納屋から出てきた。昨日エリナたちと作ったカラフルなリボンと鈴が入っている。

「悠真さん、動物たちの飾りはこちらです」

「ありがとう。じゃあ、そろそろ出発の準備をしよう」

リーフィアは優しく微笑み、籠をワゴンに載せた。彼女の銀髪が朝の光に包まれ、幻想的な輝きを放っていた。

「今日はとても楽しい一日になりそうですね」

悠真はリーフィアの明るい表情に安心しながら、頷いた。

「ああ。少し緊張はするけど……」

リーフィアは首を傾げ、悠真を見つめた。

「悠真さんが緊張されるなんて珍しいですね」

「そんなことはないさ。人混みは得意じゃないし」

そう言いながらも、悠真の表情には温かな期待が浮かんでいた。グリーンヘイブン村の人々とともに過ごす祭りは、新たな経験になるはずだ。

――――――

村の広場に着くと、すでに多くの村人たちが準備に追われていた。色とりどりの飾り付けがされ、屋台が並び始めている。空気には甘い香りが漂い、お祭りの雰囲気が高まっていた。

「悠真さーん!リーフィアさーん!」

振り返ると、エリナとミリアムが笑顔で駆けてきた。二人とも華やかな民族衣装に身を包み、頭には花冠を載せている。

「おはよう、二人とも。その衣装、去年も見たけど、やっぱり似合ってるな」

悠真の言葉に、ミリアムは嬉しそうに回転してみせた。

「ありがとう!私もこの衣装お気に入りなんです!」

エリナも恥ずかしそうに微笑んだ。

「リーフィアさんにも用意してあります。もしよろしければ」

彼女が差し出したのは、淡い緑と白を基調とした、銀色の刺繍が施された美しい衣装だった。リーフィアは目を輝かせ、それを手に取った。

「これを着てもいいのですか?とても素敵ですね」

「もちろん!リーフィアさんにぴったりだと思います」

ミリアムは悠真の方も見て、にっこり笑った。

「悠真さんにも衣装がありますよ。男性用は少しシンプルですけどね」

悠真は少し驚いたが、断る理由も見つからず、頷いた。

「なら、お言葉に甘えるよ」

村人たちの温かさに触れ、徐々に緊張が解けていくのを感じた。

――――――

着替えを終えた悠真とリーフィアが広場に戻ると、ミリアムが動物たちの所へ案内してくれた。ベルとサクラはすでにカラフルなリボンで飾られ、テラは額の赤い宝石が朝日に輝いていた。ウィンドは銀色の翼を広げ、多くの子供たちの注目を集めていた。

「ベルちゃんもサクラちゃんも可愛い!」
「ウィンドかっこいいー!」
「テラちゃん好き~!」
「あれ?新しい子が増えてる~」

子供たちの歓声に、テラは「ミュウ!」と応えた。ルミも好奇心旺盛に、子供たちの周りをぴょんぴょんと跳ねまわっている。ステラだけは少し離れたところで警戒していたが、リーフィアがそっと近づき、耳を優しく撫でると落ち着いた様子を見せた。

そこへ村長のグリーンフィールドが白い髭をなびかせながら近づいてきた。温かな笑顔で悠真に手を差し出す。

「ようこそ、白石さん。今年もわしらの小さな祭りへ来てくれて嬉しい限りじゃ」

悠真は丁寧に握手を返した。

「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます」

「それにしても、また新しい子達が増えておるようじゃな」

村長は感嘆の眼差しでウィンドを見上げた。

「午後からの出し物、楽しみにしておるぞ」

悠真は少し照れながらも頷いた。

「はい、できる限りのことはします」

村長は満足げに頷き、他の準備を見るために立ち去った。その後ろ姿を見送りながら、悠真は改めて村の温かさを感じていた。

――――――

午前中は村人たちとの交流を楽しんだ。様々な屋台で地元の料理を味わい、手作りの工芸品を見て回る。ミリアムの案内で、リーフィアは薬草茶の淹れ方を村の年配の女性たちから教わり、悠真は村の農夫たちと作物の育て方について意見を交換した。

「白石さんの牧場の野菜は本当に美味しいですよ」

年配の農夫が言うと、周りの人々も頷いた。

「アスターリーズ商会を通して買ったことがありますが、甘みが違います」

「ありがとうございます。土壌の調整に気を使ってるんです」

会話は弾み、悠真も次第にリラックスしていった。

昼食時、村の中央に大きなテーブルが並べられ、皆で食事を共にした。地元で採れた野菜や果物、肉を使った料理が所狭しと並ぶ。

「悠真さん、これを試してみてください」

リーフィアが差し出したのは、黄金色に輝くパイだった。一口食べると、甘酸っぱいリンゴの風味が広がった。

「うまいな!これは何だ?」

「アップルハニーパイというそうです。エリナさんのおばあさまのレシピだとか」

エリナが恥ずかしそうに微笑んだ。

「祖母の自慢の品なんです。蜂蜜は特別なもので、森の奥で採れるものなんですよ」

食事の後、広場の中央に設けられたステージでは、村人たちによる出し物が始まった。民族舞踊や歌が披露され、会場は笑いと拍手に包まれた。

ミリアムも花の精霊を模した踊りを披露し、観客から大きな拍手を受けた。リーフィアも誘われて舞台に上がり、即興で歌を歌うと、その透き通るような美しい声に皆が聞き入った。

「リーフィアさんの歌、とても素敵ですね」

エリナが感動した様子で言った。

「ありがとうございます。私の村でも、こんな風に収穫を祝う歌があったことを思い出しました」

リーフィアの言葉に、悠真は彼女の記憶が少しずつ戻っていることを嬉しく思った。

――――――

午後、ついに白石牧場の動物たちの出番が来た。村長が満面の笑みで紹介する。

「さあ、お待ちかね!白石牧場の不思議な動物たちの特別ショーです!」

子供たちが歓声を上げる中、悠真とリーフィアは動物たちを連れてステージに上がった。

「みなさん、こんにちは。白石牧場の悠真です」

悠真は緊張しながらも、落ち着いた声で挨拶した。

「今日は牧場の仲間たちを紹介します。まずは……」

一匹ずつ動物たちを紹介していく。ベルの雷は危険なので控えめに、羊毛が静電気を帯びる程度の小さな放電を見せた。ウィンドは広場の上を優雅に飛行し、銀色の翼が太陽の光を反射して輝いた。

テラとサクラによる、即興で可愛らしい花を咲かせるデモンストレーションにも、子供たちは歓声を上げた。

ルミとステラも月の光を浴びると体に模様が浮かぶことを説明すると、夜の部でぜひ見たいという声が上がった。

最後に、悠真は少し照れながらも言葉を続けた。

「動物たちはそれぞれに特別な力を持っていますが、何より大切なのは、彼らの心の優しさです。人と動物が共に生きていく中で、お互いを理解し、尊重することの大切さを教えてくれています」

その言葉に、会場から温かな拍手が沸き起こった。村長も目を細めて頷いていた。

ショーの後、子供たちが動物たちと触れ合う時間が設けられた。テラは子供たちの手のひらの上で回転して見せ、ルミは耳を長く伸ばして跳ねまわり、歓声を浴びていた。

「悠真さん」

振り返ると、村長が穏やかな表情で立っていた。

「素晴らしいショーでした。あなたの牧場は、まさに奇跡の場所ですな」

「そんな大げさな……ただ、動物たちが自然と集まってくるだけで」

村長は静かに首を振った。

「いや、それこそが特別なことじゃ。彼らはあなたの心を見抜いたのでしょう」

悠真は言葉に詰まったが、心の中で村長の言葉を噛みしめていた。

――――――

夕暮れ時、祭りは最高潮を迎えた。夜空には花火が打ち上げられ、色とりどりの光が広がる。その下で村人たちは踊り、歌い、祝宴を楽しんでいた。

悠真とリーフィアも輪の中に加わり、伝統的な踊りを教わる。最初は戸惑っていた悠真も、次第にリズムを掴み、楽しく踊れるようになった。

「悠真さん、踊るの上手いですね」

リーフィアの声に、悠真は照れくさそうに笑った。

「いや、全然だよ。リーフィアこそ、まるで昔から知ってるみたいに踊れてるじゃないか」

「不思議なことに、体が覚えているんです。きっと私の村でも似たような踊りがあったのかもしれません」

月が高く昇り、その光がルミとステラの体に当たると、淡く青白い紋様が浮かび上がった。子供たちが歓声を上げて集まり、その美しさに見入っていた。

「まるで星空みたいだね!」
「綺麗……!お母さん、見て!」

ステラはいつもの警戒心を忘れたかのように、穏やかに子供たちの前に座り、その姿を見せていた。ルミは相変わらず元気に跳ね回りながらも、時々立ち止まって、自分の体の模様を誇らしげに見せているかのようだった。

夜も更け、祭りは終わりに近づいていた。広場の中央に大きな焚き火が焚かれ、村人たちはその周りに集まった。

村長が静かに話し始める。

「今年も豊かな実りを与えてくれた大地に感謝し、来年もまた恵みがあることを祈ろう」

皆が黙祷を捧げた後、一人ずつ藁で作られた小さな飾りを火の中に投げ入れていく。それは「心配事を焼き捨て、希望だけを残す」という儀式だ。

悠真とリーフィアも飾りを受け取り、静かに火の中へ投げ入れた。炎が一瞬高く燃え上がり、夜空へと消えていく。

「何か願い事はしましたか?」

帰り道、リーフィアが悠真に尋ねた。

「ああ。牧場と村の皆が平和に暮らせますようにってね」

悠真は空を見上げながら答えた。満天の星が二人を見守っているようだった。

「私も同じです」

リーフィアの声は静かだったが、確かな決意が込められていた。

「私たちの家族が、これからも幸せでありますように」

牧場に戻ると、留守番をしていた動物たちが出迎えてくれた。ルナが「ニャー」と鳴きながら悠真の足元に擦り寄り、アクアはリーフィアの肩に飛び乗った。フレアは尻尾を振りながら二人の周りをぐるりと回った。

「ただいま」

悠真が皆に語りかけると、動物たちは思い思いの声で応えた。牧場全体が温かな空気に包まれている。

月明かりの下、白石牧場は静かな夜を迎えていた。祭りの余韻に浸りながら、悠真は星空を見上げた。

「明日からも、頑張ろうな」

彼の言葉に、リーフィアは優しく微笑んだ。

「はい。これからも一緒に」

小さな牧場からの新しい物語は、今日もまた一歩進んでいくのだった。
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