37 / 51
37.魂に刻まれた記憶
しおりを挟む
『記憶の共鳴』という新たな力を得たセイルは、リーネに注意された点に気を付けつつも、力に慣れる為に気になる行動をしている生物などにその力を使い、記憶から何故そのような行動に至ったのかなどを調べていた。
ある日、彼はふと一匹の小さな鳥に注目した。その鳥は、一見平凡な渡り鳥だったが、何故か海面すれすれを飛んでいたのだ。気になったセイルが記憶の共鳴の力を使うと、予想外の光景が広がった。
「なんだ、これ……?」
セイルの目の前に映し出されたのは、明らかに鳥の視点ではなかった。広大な海を泳ぎ回り、群れを率いている記憶。まるで魚――いや、明らかにリヴァイアサンのような巨大な生物の記憶だった。
「この鳥、リヴァイアサンだった……わけじゃないよな?」
疑問を抱えたセイルは、水晶球から顔を上げ、すぐにリーネを呼んだ。休んでいたところを突然起こされたリーネは多少不機嫌そうにしながらもセイルのもとにやってきた。
「そんなに慌ててどうしたのよ?」
「いや、それが……この鳥の記憶を見てみたんだが、どう見てもリヴァイアサンの記憶が混ざってたんだ。これってどういうことだと思う?」
リーネは眉をひそめながら少し考え込んだ。
「恐らくだけど、それは魂に刻まれた情報が原因でしょうね。」
「魂に刻まれた情報?」
リーネはセイルの問いに淡々と答える。
「魂は、生物の最も深い部分。記憶よりも本質に近いものよ。そして本来、死を迎えた生物の魂は、転生管理者の下に送られて浄化されてからまっさらの状態で、生まれ変わるものなの。ただ、ごく稀に魂が過去に宿った生物の記憶が消えきらず、新しい体の脳がそれを“今の記憶”と誤認することがあるわ。いわゆる“前世の記憶”と呼ばれるものね。」
「つまり、この鳥の前世はリヴァイアサンだったってことか?」
「その可能性が高いわね。きっと何らかのきっかけで魂と体が特別な繋がりを持ってしまったために、脳がその記憶を読み取ってしまったのでしょうね。」
セイルはその答えに驚きつつも、さらに疑問が湧いてきた。
(俺も元は人間だった。そうすると、もしかして――)
「なあ、もし魂が別の生物になれるんだったら……神も同じだったりするのか?」
リーネはその質問に驚いた様子を見せたが、そのあと笑みを浮かべながら答えた。
「よく気づいたわね。えぇ、神も例外じゃないわ。ただし、神は普通の生物みたいに寿命があるわけじゃない。死ぬことは基本的にないわ。」
「……基本的に?」
セイルは少し不安そうに尋ねる。
「まあ、“死ぬ”って言い方は正確じゃないけれど、神として一定の役割を果たしたと認められると、望めば別の生物として転生することはできる。ただし、その場合は神としての力や記憶は完全に失う。その生物として、まっさらな状態で転生することになるの。」
「それじゃあ、いままでに転生した神っているのか?」
「それなりに…ね。神の役割って、思った以上に孤独だし、無限に続く責任を負い続けるのは楽じゃないから。」
「……そうなのか。」
セイルは目の前の水晶球を見つめ直した。そこに映る世界は、生物たちが懸命に生きる姿で溢れていた。鳥、魚、幻想種、それぞれが互いに影響しながら成長している。自分がこの世界の創造主であることを誇りに思う反面、「自分がいつか、この役目を終えるときが来るのだろうか」とも考えた。
「神としての役割を終えたら、俺もいつか転生を選ぶことがあるのかな……」
そう呟くセイルに、リーネは肩をすくめて答えた。
「それはあなた次第ね。ただ、この世界を愛してる限りは、転生なんて考えないでしょうけど。」
セイルはリーネの言葉に僅かに笑みを浮かべた。
「まあ、そうかもな。でも……もし転生したら、どんな生物になれるんだろうな……。」
ふと呟いた言葉に、リーネがすかさず答える。
「セイルが転生したら、きっと最初の頃みたいにドジな動物になりそうね。」
「ドジってなんだよ!」
セイルは笑いながら抗議したが、リーネの冗談の奥にある優しさを感じ取っていた。
その日の夜、セイルは静かに空を見上げながら考えていた。自分が生み出した世界で、魂がこうして循環し、新たな生命へと繋がっていくこと。それは神としての役割を超えて、何かもっと深い意味を持っている気がした。そして、いつか自分が神としての役割を終える時には、純粋な生命としてこの世界に生まれ変わりたいと、そんな思いを抱いていた。
そんな風に物思いに耽るセイルを、リーネは静かに見守っていた。
ある日、彼はふと一匹の小さな鳥に注目した。その鳥は、一見平凡な渡り鳥だったが、何故か海面すれすれを飛んでいたのだ。気になったセイルが記憶の共鳴の力を使うと、予想外の光景が広がった。
「なんだ、これ……?」
セイルの目の前に映し出されたのは、明らかに鳥の視点ではなかった。広大な海を泳ぎ回り、群れを率いている記憶。まるで魚――いや、明らかにリヴァイアサンのような巨大な生物の記憶だった。
「この鳥、リヴァイアサンだった……わけじゃないよな?」
疑問を抱えたセイルは、水晶球から顔を上げ、すぐにリーネを呼んだ。休んでいたところを突然起こされたリーネは多少不機嫌そうにしながらもセイルのもとにやってきた。
「そんなに慌ててどうしたのよ?」
「いや、それが……この鳥の記憶を見てみたんだが、どう見てもリヴァイアサンの記憶が混ざってたんだ。これってどういうことだと思う?」
リーネは眉をひそめながら少し考え込んだ。
「恐らくだけど、それは魂に刻まれた情報が原因でしょうね。」
「魂に刻まれた情報?」
リーネはセイルの問いに淡々と答える。
「魂は、生物の最も深い部分。記憶よりも本質に近いものよ。そして本来、死を迎えた生物の魂は、転生管理者の下に送られて浄化されてからまっさらの状態で、生まれ変わるものなの。ただ、ごく稀に魂が過去に宿った生物の記憶が消えきらず、新しい体の脳がそれを“今の記憶”と誤認することがあるわ。いわゆる“前世の記憶”と呼ばれるものね。」
「つまり、この鳥の前世はリヴァイアサンだったってことか?」
「その可能性が高いわね。きっと何らかのきっかけで魂と体が特別な繋がりを持ってしまったために、脳がその記憶を読み取ってしまったのでしょうね。」
セイルはその答えに驚きつつも、さらに疑問が湧いてきた。
(俺も元は人間だった。そうすると、もしかして――)
「なあ、もし魂が別の生物になれるんだったら……神も同じだったりするのか?」
リーネはその質問に驚いた様子を見せたが、そのあと笑みを浮かべながら答えた。
「よく気づいたわね。えぇ、神も例外じゃないわ。ただし、神は普通の生物みたいに寿命があるわけじゃない。死ぬことは基本的にないわ。」
「……基本的に?」
セイルは少し不安そうに尋ねる。
「まあ、“死ぬ”って言い方は正確じゃないけれど、神として一定の役割を果たしたと認められると、望めば別の生物として転生することはできる。ただし、その場合は神としての力や記憶は完全に失う。その生物として、まっさらな状態で転生することになるの。」
「それじゃあ、いままでに転生した神っているのか?」
「それなりに…ね。神の役割って、思った以上に孤独だし、無限に続く責任を負い続けるのは楽じゃないから。」
「……そうなのか。」
セイルは目の前の水晶球を見つめ直した。そこに映る世界は、生物たちが懸命に生きる姿で溢れていた。鳥、魚、幻想種、それぞれが互いに影響しながら成長している。自分がこの世界の創造主であることを誇りに思う反面、「自分がいつか、この役目を終えるときが来るのだろうか」とも考えた。
「神としての役割を終えたら、俺もいつか転生を選ぶことがあるのかな……」
そう呟くセイルに、リーネは肩をすくめて答えた。
「それはあなた次第ね。ただ、この世界を愛してる限りは、転生なんて考えないでしょうけど。」
セイルはリーネの言葉に僅かに笑みを浮かべた。
「まあ、そうかもな。でも……もし転生したら、どんな生物になれるんだろうな……。」
ふと呟いた言葉に、リーネがすかさず答える。
「セイルが転生したら、きっと最初の頃みたいにドジな動物になりそうね。」
「ドジってなんだよ!」
セイルは笑いながら抗議したが、リーネの冗談の奥にある優しさを感じ取っていた。
その日の夜、セイルは静かに空を見上げながら考えていた。自分が生み出した世界で、魂がこうして循環し、新たな生命へと繋がっていくこと。それは神としての役割を超えて、何かもっと深い意味を持っている気がした。そして、いつか自分が神としての役割を終える時には、純粋な生命としてこの世界に生まれ変わりたいと、そんな思いを抱いていた。
そんな風に物思いに耽るセイルを、リーネは静かに見守っていた。
0
あなたにおすすめの小説
構造理解で始めるゼロからの文明開拓
TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。
適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。
だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――!
――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる