新米神様、世界を創る

黒蓬

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37.魂に刻まれた記憶

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『記憶の共鳴』という新たな力を得たセイルは、リーネに注意された点に気を付けつつも、力に慣れる為に気になる行動をしている生物などにその力を使い、記憶から何故そのような行動に至ったのかなどを調べていた。
ある日、彼はふと一匹の小さな鳥に注目した。その鳥は、一見平凡な渡り鳥だったが、何故か海面すれすれを飛んでいたのだ。気になったセイルが記憶の共鳴の力を使うと、予想外の光景が広がった。

「なんだ、これ……?」

セイルの目の前に映し出されたのは、明らかに鳥の視点ではなかった。広大な海を泳ぎ回り、群れを率いている記憶。まるで魚――いや、明らかにリヴァイアサンのような巨大な生物の記憶だった。

「この鳥、リヴァイアサンだった……わけじゃないよな?」

疑問を抱えたセイルは、水晶球から顔を上げ、すぐにリーネを呼んだ。休んでいたところを突然起こされたリーネは多少不機嫌そうにしながらもセイルのもとにやってきた。

「そんなに慌ててどうしたのよ?」

「いや、それが……この鳥の記憶を見てみたんだが、どう見てもリヴァイアサンの記憶が混ざってたんだ。これってどういうことだと思う?」

リーネは眉をひそめながら少し考え込んだ。

「恐らくだけど、それは魂に刻まれた情報が原因でしょうね。」

「魂に刻まれた情報?」

リーネはセイルの問いに淡々と答える。

「魂は、生物の最も深い部分。記憶よりも本質に近いものよ。そして本来、死を迎えた生物の魂は、転生管理者の下に送られて浄化されてからまっさらの状態で、生まれ変わるものなの。ただ、ごく稀に魂が過去に宿った生物の記憶が消えきらず、新しい体の脳がそれを“今の記憶”と誤認することがあるわ。いわゆる“前世の記憶”と呼ばれるものね。」

「つまり、この鳥の前世はリヴァイアサンだったってことか?」

「その可能性が高いわね。きっと何らかのきっかけで魂と体が特別な繋がりを持ってしまったために、脳がその記憶を読み取ってしまったのでしょうね。」

セイルはその答えに驚きつつも、さらに疑問が湧いてきた。

(俺も元は人間だった。そうすると、もしかして――)

「なあ、もし魂が別の生物になれるんだったら……神も同じだったりするのか?」

リーネはその質問に驚いた様子を見せたが、そのあと笑みを浮かべながら答えた。

「よく気づいたわね。えぇ、神も例外じゃないわ。ただし、神は普通の生物みたいに寿命があるわけじゃない。死ぬことは基本的にないわ。」

「……基本的に?」

セイルは少し不安そうに尋ねる。

「まあ、“死ぬ”って言い方は正確じゃないけれど、神として一定の役割を果たしたと認められると、望めば別の生物として転生することはできる。ただし、その場合は神としての力や記憶は完全に失う。その生物として、まっさらな状態で転生することになるの。」

「それじゃあ、いままでに転生した神っているのか?」

「それなりに…ね。神の役割って、思った以上に孤独だし、無限に続く責任を負い続けるのは楽じゃないから。」

「……そうなのか。」

セイルは目の前の水晶球を見つめ直した。そこに映る世界は、生物たちが懸命に生きる姿で溢れていた。鳥、魚、幻想種、それぞれが互いに影響しながら成長している。自分がこの世界の創造主であることを誇りに思う反面、「自分がいつか、この役目を終えるときが来るのだろうか」とも考えた。

「神としての役割を終えたら、俺もいつか転生を選ぶことがあるのかな……」

そう呟くセイルに、リーネは肩をすくめて答えた。

「それはあなた次第ね。ただ、この世界を愛してる限りは、転生なんて考えないでしょうけど。」

セイルはリーネの言葉に僅かに笑みを浮かべた。

「まあ、そうかもな。でも……もし転生したら、どんな生物になれるんだろうな……。」

ふと呟いた言葉に、リーネがすかさず答える。

「セイルが転生したら、きっと最初の頃みたいにドジな動物になりそうね。」

「ドジってなんだよ!」

セイルは笑いながら抗議したが、リーネの冗談の奥にある優しさを感じ取っていた。

その日の夜、セイルは静かに空を見上げながら考えていた。自分が生み出した世界で、魂がこうして循環し、新たな生命へと繋がっていくこと。それは神としての役割を超えて、何かもっと深い意味を持っている気がした。そして、いつか自分が神としての役割を終える時には、純粋な生命としてこの世界に生まれ変わりたいと、そんな思いを抱いていた。

そんな風に物思いに耽るセイルを、リーネは静かに見守っていた。
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